-いきなり射ってくるアイヌさん-
コシャマインについて
当時のアイヌは製鉄技術を持っていないため道南に移住した和人からヤジリや小刀を買ってたのですが、
ある時に品質と値段で口論になった鍛冶屋がアイヌの少年を刺し殺しました。
このため、和人との間に新たな軋轢が生まれ戦へと発展したのです。
コシャマインを盟主としたアイヌ連合は道南十二館のうち十の館を落としたが、父子ともに矢で殺されやがて戦は和人の勝利に終わり、新たな軋轢から以後百年に渡るアイヌと和人との戦いが始まったというわけです。
コシャマインの館へ向かう道中、仕掛け弓矢が無数にある。
全部毒矢だ。
アマッポというらしいが、仕組みはボウガンの自動発射装置で本来は狩りに使うらしい。
「アマッポは戦の道具になってしまったよ、悲しいかぎりだ。以前来たときは、ここまでの数は仕掛けられていなかった。コシャマインは和人を相当警戒しているようだ」
キサラが暗い顔をしながら、罠のない場所を慎重に見極めた。
アイヌってこの時代の日本人より、進んだ武器もってんだな。
戦国時代にボウガンは確かなかったよな。
「キサラ、和人はこんな武器知らないと思う。和人なんて簡単に倒せるんじゃないのか?」
キサラは鼻で笑った。
「和人の刀、ヤジリ、いずれも鉄だ。俺たちに作れない。鉄の丈夫さ、刀の切れ味はすごいものだ。できることなら和人から教わりたいくらいだ」
そっか、鉄が怖いのか。
キサラが振り向いてさらに続ける。
「和人の弓矢は遠くのアイヌに深く刺さり殺す。アイヌの矢は遠く飛ぶが、鉄のヤジリが手に入らなくなれば毒矢じゃないと勝負にならない。隠れて近くに潜めば勝機はある。だから森を使えば守ることは容易いが敵を攻めるには姿を見せねばならない。倭人の館はよくできてるから攻めれば必ず死ぬとさえ言うやつらも多い」
「なるほど、要は鉄か」
「そうだ、鉄だ。誰だって勇気だ勇者だって言っても無駄に死ぬのはごめんだからな」
アイヌの鉄への恐れは、和人の文明に対する劣等感といっていいのかもしれない。
和人は良質な武器を生産できるが、アイヌにはそれがない。毒矢とボウガンしかない。
でも、それってかなり強い武器じゃ・・・
しかし、和人は毒矢を使わないんだな。
でも、そのうち使ってくんじゃねぇの?
こっちが使ってんだからさ。
『止まれ』
「コシャマインに会いにきた!」
いつの間に囲まれている。
先頭にいるキサラに毒矢が無数に向けられている。
『後ろの和人はだれだ』
声の主は見えない。
不思議な声だ。
叫ぶのでもなく、地の底から響くような太くはっきりとしたまるで鬼火があちこちに見えるような不気味ともいえるトーンの声が足を動かすことを自然に忘れさせる。
「カムイだ!人の形をしたカムイだ!」
キサラ…なに言い出すの?
「矢でも死なず、毒でも死なぬ!川の神だ!俺たちの味方としてカムイがこの戦に加わるのだ!」
言った!!!
言いやがった!!!
これは、俺、弓矢で射されるフラグだ!!!
『その男に矢も毒もきかぬというのか』
「そうだ!矢も毒もきかぬ!」
3秒間、3秒間たってから前後左右から数えるの面倒なレベルで矢が襲ってきた。
「痛い、、、普通に痛い、、、」
怪我は治るけどさ、普通に痛いんだよね。
本当にやめてよぉ、こういうの人権侵害じゃないの???
矢が抜けるのを見届けた『いきなり射ってくるアイヌさん』達はやっぱり驚いた。
「わかったか!コシャマイン!この男は川の神だ!」