表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/15

- コシャマイン-

おお、やばい!また命中!

やばい、ヤバくない俺、弓って始めてやるんだけど!8頭目だよ!

鹿狩りを昨日のリーダー角の男と一緒に楽しんでいる。

キサラって名前はさっき教えてもらった。


「キサラ、俺さ、今日初めてなんだけどさ、狩りってすっごい簡単なんだね」

「……鹿は多い。毎日でも狩れるさ」

(なんてやつだ、弓の名人の素質もあるのか)


キサラと一緒に付いてきた若者は全部で4人。


5頭分は血抜きして、解体することにした。

縄で結び5頭分の鹿肉(ジビエ)を4人に担がせて俺とキサラは解体(ばら)してない3頭を血抜きして担ぐことになった。内臓も食べたいんだとさ、味が気になるところだ。


雄鹿2頭を重ねて縄で巻きつけ、自分の首にも鹿の前足を巻くように縛ってもらい、腹のあたりにきた鹿の後ろ足を首の前足と結ぶとまるでリュックのような形状になる。

背負えるのかと、皆は不安がっていたがやってみればできるもんで意外になんとかなった。



しかしマジで狩りって肉をスーパーで買うより楽しいよなぁ。

集落までせいぜい20分くらいだから多少重くても平気っしょ。


「カムイペトルン、お前はなぜ死なない」

鹿を担ぎながら山道を歩いてるときキサラがこちらを見ずに尋ねてきた。


「いやさ、俺も死ぬらしいよ。100年以内に天下統一しないと死んじゃうみたい」

「そうか、天下というのはよくわからん。和人の国の話か?」

「うん、今はまだ本格的に始まっていないんだけど、後十年もしたらさ、京都で戦争が起こるんだよ。応仁の乱ってやつなんだけど、それで自分勝手な戦争が日本中ではじまっちゃうんだよ」


「おまえの話では、まだ和人達は争っていないことになっている。その戦を止めればいいのではないのか」

ん、それもそうか、応仁の乱をうまく止めれば戦国時代は始まらないんじゃないか?

キサラって頭良い奴なのか。


応仁の乱が起こらないと戦国時代が始まらない。

ってことは、それで条件クリアになるんじゃ?


--残念だけど、不安定な世情が爆発するきっかけに過ぎないからね。この時代は限界点なのよ--

-応仁の乱が起きなくても、違う原因で戦国時代になるってこと?-

--そういうこと、トップが腐ってて弱いくせに偉そうに搾取するなら革命が起こるのは当然でしょ?--


なるほどね。

そういうもんか。

さすが長生きしてるだけのことはある。


--おい、聞こえてんぞコラッ--

-あ、いや、ごめん褒めたつもりで-


「キサラ、それが起きても起きなくても和人の国はバラバラになっちゃうんだってさ。カムイにきいてみた」

「お前、カムイと話せるのか。お前もカムイなのか?やはり川の神か?」

「ん、う~ん。(川の神ってなんだ)まぁ、そうだね。多分、カムイになるんじゃないかぁ」

やっべぇ、適当なこと言ったよ……


「カムイペトルン、俺たちは和人と戦っている。お前は自分のことを倭人と言った。そしてカムイともいう。どちらが本当だ」

あぁ、やばい。適当なこと言うもんじゃないな。

「和人は和人でも、この時代の倭人じゃないし、アイヌの神かどうかは知らないけど、色々教えてくれる人が頭に直接答えをくれるんだよ」

「そうか、納得した」


え、納得するんかい。


「カムイペトルン、お前はどちらの味方だ。安東か我々の盟主コシャマインのどちらに味方してくれる?」

「えっ、それはまた…突然な話だな。コシャマインって誰さ?戦に手を貸せってこと?」

いやまぁ、天下統一なんて戦しないとできないだろうけどさ、アイヌは日本を統一する戦いで味方になるのかなぁ。

展開早ぁ…


キサラの説明によると、コシャマインはアイヌ軍のボス。ボス中のボスってわけなぁ。


「コシャマインは日本の統一に力を貸してくれるかなぁ」

「どういう意味だ?」

「俺さ、日本を統一しないと、死んじゃうんだよね。だから、戦争するにしてもコシャマインが後で敵になったら困るなぁって。倭人の国を統一するのに力を貸してくれるかなぁ」


キサラが笑いだした。それに釣られたのか後ろの人たちも、不意に笑い出した。

「カムイペトルン!お前は本気で倭人の王になる気なのか!冗談ではなく、本気で、ハッハッハッ」

「そういわれると、恥ずかしいし、別に王になりたいってわけじゃ……」


「カムイペトルン!お前は選ばれたものだ!俺はそれを信じる。弓矢が通じない、毒も通じない、神に選ばれた弓の名手だ!」

「なんで急にそんなこと言い出すんだよ、からかってんのか?」

キサラは笑顔の涙を手でぬぐいながら言った。


「お前と友達になりたいと思ったからだ。カムイの子よ」

「そう、なの?」

「大きいことを言う奴はいくらでもいるが、実のあるものは少ない。俺はお前に実があるかどうかはわからない。だがお前には神が付いている」

「いや、そんな、神なんて付いてないって」

「いいや、ついている。その細身の体で雄鹿を2頭担ぐお前を見て俺は自分の勘を信じることにした」


うん、なんていうか初めての感覚だ。。。これって、期待されてるっこと?


「俺達と一緒に戦ってくれ。カムイペトルン」

「う、うん。わかった。キサラと一緒に戦う」

釣られて返事をしてしまったけど、不思議と後悔はなかった。


不思議な気持ちだった。

心臓が熱くなって夕日が凄くキレイで体に染みてくるようだった。


まるで生涯最高の一日なのかと思ったんだ。




解体した鹿肉(ジビエ)は大体一匹20kg

雄鹿は50kgから100kg


僕には担げそうにありません…




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ