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8歳のおっさん伝説  作者: 壬生たえお
第一章 少年期
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第六話 ココの決意

前回までのお話


エドガーはギーギと別れ、森を出ました。

リアンに連れられて行商人の元へ向かいます。

 今日は新しい人が来るかもしれない。ううん、きっと来る。

 だって隊長のラト姉が断るわけないもん。


 昨日、ラト姉は、ここテウルの町で新しい馬車を買った。

 新しい馬車は大きくて、今までよりも沢山の物が詰めるみたい。

 でもそうなると、人手が足りなくなるみたいで、

「ココ、お前にもこれまで以上にたっぷり働いて貰うからな」

 なんて、ちょっと怖い顔で笑ってた。頑張るからいーもん。


 一年くらい前、ユーゴさんが入る前かな。あの時は、一人辞めちゃったから三人しかいなくて。大変だったから、奴隷を買えばいいのにって言ったら「あんな風に目が腐った連中に金を払うなんて無駄だ」ってラト姉は言ったの。


 でも多分、それは嘘なんだと私は思うの。

 だって、拾われた時の私も、目が腐っていたんだと思うから。

 あの頃、とても家に居られなくて、連れてって下さいってお願いしたら黙って馬車に乗せてくれたみたいに、きっとどこかで困っている人を見つけた時、迷わず助けられるようにラト姉はわざと雇わないの。そうじゃなきゃあちこちの町で人手が足りないなんて口癖のように言わないもの。



 それなのに、強そうな人を簡単に断ったりもする。

 私にはよく分からないけど、ラト姉は居場所が無い人に、作ってあげるのかも知れない。私もそうだったし、ユーゴさんとジュールさんだってそう。



 今日の朝、この町で自警団をやっているリアンさんが来て、ラト姉とお話をしてた。こっそりと聞き耳を立てていたんだけど、ちょっと深刻そうな声で「森で八歳の子供を保護しまして……」とかなんとか。

 その後に二人で何処かへ行ったんだけど、きっとその子に会いに行ったんだと思うの。

 もしその子が、嫌われるような子でも、ちょっと気持ち悪くても、本当に困っていたらラト姉は隊商に入れると思う。だって私なんて――なのに。



 それにしても、八歳だって。年下なんて初めてでドキドキする。

 男の子かな、女の子かな。

 今まで色んな人が入ってきたり出ていったりしたけど、いつでも私が一番年下だった。

 ラト姉が私にそうしてくれたように、今度は私がその子の面倒を見てあげるんだ。


 乱暴な子じゃないといいな。ううん、きっと初めのうちは、辛くて、苦しくて、暗い気持ちでいるはずだから、乱暴だと思うの。みんなそうだったもん。

 でもここは大丈夫だよ、ってゆっくり時間をかけて教えてあげるの。きっとそれが私の、お姉ちゃんになる私のやることなんだと思うの。

 大丈夫、もう私も十一歳だもの。大人のほーよーりょくってのを見せつけてあげるわ。

 男の子だったら、それでめろめろにしてお金を貢がせるの。女の子だったら、私の言う事は何でも聞くようにしつけないとね。

 ――なんて、嘘。

 仲良く出来たら嬉しいな。

 だって、ずっとみんな大人だったから。

 ひょっとしたら私が入る前には子供も居たのかも。でもそんな話は聞かないし、多分これからもしないと思うの。


 昔の話をするとラト姉はちょっと怒る。

 あ、このことも新しい子には教えてあげないとね。

 昔の話になると、「大切なのはこれからだ」ってムスッとした顔で言うの。多分なんだけど、みんなそれぞれに辛い過去とかがあるんだと思うの。それをほじくり返すのが嫌なんじゃないかな。私も、色々と聞かれたら、苦しいし、きっと泣いちゃうから。


 あと、これも教えておいた方が良いかな。

 ラト姉は、いつでも自分でちゃんと考えて行動しろって言うの。

 初めて言われた時はよく分からなかったんだけど、新しい子が入ってくるっていう今ならなんとなく分かる、つもり。

 私はこの隊商が、みんなが大好き。

 でもそれは、ラト姉だけじゃなくて、ユーゴさんもジュールさんもみんなこの隊商が好きで、みんなに好きになって貰えるように努力してるからなんだと思うの。

 私が新しい子にも隊商が好きになって欲しいから、私は新しい子に沢山優しくして、沢山この隊商を好きになって貰うの。それでみんなが嬉しくて、幸せなの。

 ラト姉はきっと私に新しい子のお世話をしろって言うと思うの。

 でもそれは、言われたからじゃなくて、私がちゃんと考えて、やること。

 私はもう、この家族の、お姉ちゃんになるんだから。


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