【第3話】絶対記憶能力って大変じゃね?
前回のあらすじ
マサルはエリカと一緒に行動することになり、噂の大図書館がある町へ共に出発する。道を歩いている途中彼は呪いについて色々聞き出したが、予想外の内容に終始驚きを隠せなかった。
ここは知識溢れる町、中央には大図書館が目立つように建っている。大図書館は直径200メートル、高さが400メートルの円柱状で全体が本棚の形になっている。
「着いたね、思ってたより割と早く着いたんじゃない?」
「…そうだな」
彼女のことを考えていても仕方ない、今は元の世界に戻ることが先だと考え気分を改めた。
「お腹空いた〜」
「でも俺達お金持ってないしなぁ」
「そこの君たち」
唐突に呼ばれた2人、その先には野獣の姿をした体格のいい男性が現れた。獣族だった。
「君たちは腹ペコなんだな、近くに美味いラーメン屋の屋台があるんだけど、良ければ奢ってやるよ」
「え?良いんですか?」
「マジ?」
「構わないさ、俺は困ってるやつは放っておけないんでな」
そして2人は近くのラーメン屋でラーメン1杯ずつ奢ってもらい、お腹は満たされた。あの獣族の男性は体格だけでなく心も広いんだなと2人は実感した。そして少し歩いてやっと噂の大図書館に着いた。
「やっと着いたー」
「へぇー結構中も広いんだな」
中は広々としていて、外から日が差し込んで落ち着いた環境となっている。それでも本はたくさん置いてあり、数えるだけでも一生かかりそうなほどの量だ。その中から目当ての本を探すとなるとかなりの時間がかかる。
「どうするの?このままじゃ全然見つからないよ」
「そうだな、フロントにいる人に聞いてみるか」
彼らはフロントまで行き、そこにいた受付娘に尋ねた。
「あの、この世界についての本とかってあるのか?」
「ええ、君たちもしかして訪問者?」
「そうなんだよ、だから元の世界に戻るためにここに来たんだ」
「そうですか、なら案内しましょう」
彼らはその案内娘について行った。その先には立ち入り禁止と書かれた地下への階段があった。案内娘は気にすることなく彼らをその先へ連れていった。その先には一つの部屋があった。そこには椅子に座って本を読んでいる女性がいた。人類だ。
「ソフィア様、訪問者を連れて来ました」
「えぇ、ご苦労様」
「私はこれで失礼します」
そして受付娘はいなくなりこの部屋には3人だけという状態になった。
「あのー君は?」
「私はこの大図書館の管理者のソフィアと申します」
「管理者なのか、俺はマ…」
「マサル様、そして隣にいるのがエリカ様ですよね」
「なんで知ってるんだよ」
気になったマサルに対してソフィアは手に持っていた本を見せた。
「この本にはこの世界の全ての情報が書かれてるの、それにこの本はちょっと特殊で、1時間周期でどんどん情報が更新していくの」
「てかお前はそんな大量の情報を全部覚えていられるのか?」
「えぇ、私は絶対記憶能力を持っているので一度見たものは忘れることはありません」
「ヘぇ〜だから私たちの顔見ただけで名前が分かったのね」
ソフィアの能力について気になったエリカ。このときマサルはとんでもないことを暴露されるとは思いもしなかった。
「ねぇねぇ、君は私たちの情報ってどのくらいまで詳しく知ってるの?」
「えっとですね、まずマサル様、」
「え?俺がどうかした?」
「…昨日、シましたよね」
「え?」
突然困惑するマサル、しかしソフィアは無慈悲にもさらに説明を加えていった。
「昨日の夜中、あなたはトイレで何してたのかな?」
ソフィアのSっ気が垣間見えるなか、エリカは昨日のことを思い出す。
〈昨日〉
「マサル、どこいくの?あー眠」
「トイレだよ」
「ふ〜ん」
▽ ▽ ▽
「あっ確かに、でもなんで、まさか」
「そのまさかよ、彼はどうやら欲求不満みたいだね、トイレで何かをゴソゴソしてたんじゃない?何かは言わないけど」
「まぁ男の子だしね、そんな時期もありますよ、プッ」
マサル絶望した。禁断のプライベートが知られてることについて、そして目の前で女の子達がド下ネタで盛り上がってる件についてだ。一刻も早くこの状況を切り抜けないとだめな気がした。
「お前とこの本が素晴らしいのはよく分かった、だからこの話はやめにしないか?」
「あら、恥ずかしがっちゃって、ちなみに君は昨日で100回目だよ、3桁達成だね」
「全然嬉しくねーよ、てーかなんで回数まで知ってるんだよ」
こんな話がしばらく続いた。彼にとっては地獄だった。しかしそんな話もようやく収まってきた。
「てーか本当にどーでもいいことも覚えてるんだな」
「えぇ、絶対記憶能力はどんな些細なことも記憶しますわ」
「あれ?」
エリカはふとその絶対記憶能力について疑問を抱いた。
「絶対記憶能力って大変じゃね?情報を沢山蓄えてるわけだから脳がパンクしたりしないのかな?」
「それについては俺が説明しよう、人間の脳は約140年分の記憶が可能なのだ、そして記憶の種類によって使う部位も異なる、だから全ての種類が限界を達するまで脳は決してパンクすることはない」
「へぇー結構詳しいんだね」
「もちろん(とある小説の知識がこんなところで役に立つとはな…)」
「ところであなた達、ここにきた本来の目的忘れてません?」
『あっ』
2人とも話に夢中で本来の目的をすっかり忘れていた。
「でしょうね、あなた達を元の世界に戻す方法なんだけど…」
『ゴクリ』
「……」
「私とゲームして勝ったら教えてあげる!」
『ゑ?』