【第2話】ドジっ子魔術師、語りますっ!
前回のあらすじ
魔術師に会った。
少年マサルは不機嫌だった。魔術師エリカとしばらく過ごすことになったからだ。彼女の呪いにより、しばらくの間彼女の半径5mから外に出ることは出来なく、出ようとしても見えない壁に阻まれる。
「どうしてこうなった」
「まだ怒ってるの?良かったじゃない、そのおかげであなたもこの宿に泊まることが出来たんだし」
彼らは色々事情があり、とある宿で過ごしていた。十分なスペースがあり居心地は良い方だ。
○ ○ ○
〜50分前〜
「もういい、さっさと図書館行くぞ」
「えー疲れたよー」
「っておい」
今日は色々なことが起きた。マサルもエリカも精神的に疲れていた。
「しょうがない、図書館は明日行くか」
「そうね、でもどこで泊まるの?」
「あちらの宿はどうでしょうか」
案内人がその方向に指を指す。見た感じはごく普通ではあったが、特に悪くもなさそうだった。
「ちょうど1部屋分空いているみたいだし今日はここで泊まることをお勧めします」
「でも俺お金持ってないんだよな」
「私も」
さっきこの世界に来たわけだ。当然この世界専用の通貨など持っているわけがない。
「それについては問題ありません。今日に限っては私が払ってあげます」
「本当か、それは有難いな、でもオマケも付いてくるのか」
「オマケって誰のことかしら?」
○ ○ ○
「そういえばもうすぐこの変な呪いとやらも消えるのか」
「そうだね、もうすぐ消えるんじゃないかな」
出来るならこの呪いが解けたら今すぐにでもここから立ち去りたいとマサルは思っていた。しかしこの問題児を放置するのはそれはそれで心配でもあった。
「お前エリカだっけか」
「そうよ、どうかした?まさか呪い解けたらここから逃げるわけじゃないよね?」
「ちげーよ」
「そう、ならいいけど」
「…日が明るくなり次第出発するから明日寝坊するなよ、一緒に行くんだろ?」
エリカはなんだか認められたような気がして嬉しかった。呪い魔術師っていっても所詮は純粋な女の子だ。
そして彼らは就寝し、明日を迎えた。
「おい、起きろ」
「ん〜もうちょっと待って…」
エリカはまだ寝ていた。それを起こすマサルも大変だった。
「おいエリカ、置いてくぞ」
エリカは枕を抱いてゴロゴロしていた。全然起きない彼女に対してマサルは一か八かの賭けに出た。
「おい起きろこの…貧乳巫女」
その瞬間彼女の動きは止まった。マサルは嫌な予感がした。
「え、エリカさん?悪い夢でも見たのかな?そりゃ大変だったな〜」
必死に誤魔化すマサル、しかし彼の視線の先には藁人形に釘を打ち付けようとしてる彼女の姿が見える。
「なんでそんな物騒なもの持ってるんですかねぇ?今すぐそれを離して出発しま…」
釘の打ち付けられる音が鳴り響いた。
「だ、大丈夫ですか?」
案内人が心配そうに宿から出てきたマサルに声をかける。
「だ、大丈夫です。今のところは」
「そうですか?でも…」
「でも?」
「…チャック開いてますよ」
その瞬間マサルは絶望した。同時にどんな呪いかも把握した。チャックを閉め忘れる呪いだった。彼は慌てながらチャックを閉めた。そのおかげかエリカはすっかり機嫌を取り戻した。不幸中の幸いだった。
「それじゃあ図書館に行ってきます、色々お世話になりました」
「気をつけてね」
「チャック…ぷっ」
「いつまで笑ってるんだよ」
そしてこの町を離れ、次の町に向かうため歩いて行った。
「確かこの道を進めば噂の大図書館のある町に着くはずだ」
ふとマサルは呪いのことを思い出だした。
「なぁエリカ」
「なぁにマサト?」
「呪いについて色々知りたいんだけど、あと俺はマサルな」
「いいよ」
あっさり受け入れてくれた。
「あれって何回でも出来るもんなのか?」
「そういうわけにもいかないよ、呪いは結構魔力を使うからそう何回も出来るわけではないの」
「でも結構やってることは地味だよな、人に直接的な危害はないし」
呪いについて色々知りたかったマサル、しかし彼の予想外の言葉が返ってきた。
「頑張れば人を殺す事も出来るよ」
「マジかよ」
「呪いには様々な段階ってのがあるんだよ、さっきあなたにかけた呪いは悪戯って言うみたいなの」
マサルは呪いについて更に興味深くなっていった。
「危害はないけどちょっと現実離れしてる呪いが奇跡、他人に危害を加えるレベルの呪いは悪魔って言われてるの、これを使うと自分の体にも結構負担がかかるの」
「へぇ、色々なレベルがあるわけか、ちなみに人を殺すってのはステージ3とやらなのかな?」
「いや、悪魔でも軽傷を与える程度だよ、あれは呪詛だよ、この呪いは成功した瞬間術者は死んでしまうわ」
「そんな大きいもの抱えてたのか」
「もしかして心配してくれてるの?」
「別に」
そんな話をしているうちにあっと言う間に例の大図書館の町に着いた。