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第一話

「なぁ、僕って今、女の子なんだよな?」 


 ちゃぽんと水音が響く中、僕は不思議に思っていた疑問を問いかけた。


「んー?そうなんじゃない?」


 我が親友はまるでどうでも言いことかのように適当に頷いたが、違う、違うんだ。


「だったらどうして!僕とお前が一緒に風呂に入ってるんだ!」

「それはお前が一人で入るのが怖いとか言ったせいだろ!」

「うっ!そ、それはそうだけどぉ……」

 僕は何も言い返せずに口ごもるが、それでも!


「で、でも!タオルなしで入ることはないだろぉ!?」

「だってなぁ、アニメやマンガじゃあるまいし、タオルもって家の風呂に入るやつがいるか?」

「い、今の僕は女の子なんだぞ!少しぐらいは気を使ってくれよ!」


 僕は思わずそう口にした。だ、だいたいこいつには、昔からデリカシーというやつがないんだ! 僕がそのせいで、どれだけ迷惑を被ってきたか!


「そうはいうがなぁ、昔からよく一緒に入ってきたのに、気を使うもくそもないんじゃないか?」


 そ、それを言われると確かに……もともと男同士だったわけで、何も考える必要なんかないのでは?


「確かに……それもそうだな!僕とお前の仲だもんな!」


 そうだ、なにを恥ずかしがっていたのだろう。今更、この親友と僕の間に恥ずかしいことなどないではないか。


(いやぁ、こいつは女になってもあほの子でかわいいなぁ……)


 そう、僕とこいつは親友なのだから。



 **********************************************


 20xx年、僕たちの住んでいる地球に、ある日突然一つの奇病が流行りだしたのだ。


「突発性性転換病」


 その病気は、瞬く間に地球全土に広まっていった。突然彼女が男に、または夫が女に、そんな報告が相次いだ。しかし、科学者たちがいくら調べようとも、『未知の病原菌』ということしかわからなかった。

この事態を解決すべく、各国政府も動いた。が、何一つとして解決に向かうことはなく、時間だけが無為に過ぎていった。

 僕が生まれたのはそんな奇病が発生してから数十年後の世界。奇病はいまだに解決法が見つかっていないが、人々が受け入れ、急な性転換があたりまえとされる時代だ。


「とはいっても、奇病に罹る人間は1万人に1人の割合だけどね」


僕は、先ほどの歴史の授業を思い出しながらそうつぶやいた。


「案外わからないぜ?明日、淡がいきなり女になってたりして!」


そんなばかなことを言ってきたのは、僕の親友、中田 なかたあく皆からはアックと呼ばれている。


「はぁ……そんなわけないだろ?だいたい性転換する人の特徴として20歳以上がほとんどなんだぞ?今、高校生の僕がなるはずないじゃないか」 


そう返すのは、僕、家二夜 けにやあわいだ。


「だってさぁ、淡はもうすでに性転換したみたいに女っぽいじゃん」

「それは言うな!」


そうなのだ、僕の昔からのコンプレックス。顔は女の子によく間違われるし、体もいつも体育ではビリを良く取っているほど運動神経がない。それに比べて……我が親友は、顔はイケメンだし、体育でもいつもトップクラスだ。女の子からもよく告白されている。毎回断っているらしいが……どうしてだろうか。


「だいたい!僕が性転換したら、女子たちからどんな目で見られると思ってるんだ!ただでさえそっち系じゃないかって思われてるのに!」 


そうなのだ。なぜか、いつもくっついてくるのはこいつのくせに、僕のほうに容疑がかけられるのだ。


(まぁ、そう思われてるのは俺のほうなんだがな……こいつが、俺への女子からの告白と思っているのは、淡のことが好きなのかと聞かれてるだけだし、違うって言ったのが毎回断っているように見えるらしい。やっぱあほの子だわ、こいつは)

 

「まぁそんなとこが可愛いんだが……」

「ん?なにか言った?」

「いーや。別に。何も言ってないさ」


 何か聞こえた気がするが、それは別にどうでもいいのだ。僕はふと、思い出していた。突発性性転換病にかかってしまった人の話を……昔は性転換してしまったら、周囲の人たちから奇異の目で見られ通常の社会生活には戻れず、引きこもってしまうのが一般的だった。今ではしっかりと、性転換してしまった人たちへの支援や、意識改革なども行われていて昔よりもうんと暮らしやすい世の中になっていったのだという。

 まぁ、それに関してはどうでもいい。問題は性転換してしまった人は元の性別の意識から性転換した後の性別の意識になっていくらしい。要は女が好きだったとしても性転換したら男が好きになってしまうということだ。そして、もうひとつ……性転換者は惚れやすい。性転換し気が落ち込んでいるなか、助けられるせいか、惚れやすいというのだ。


「どうかしたのか?そんなに考え込んで」

「い、いや!別に何でもないよ?それより今日も家で何して遊ぶ?」

 

 そうだ、こんなこといくら考えたって、結局なりはしないのだから無駄な時間だった……無駄なはずだったんだ。でも、でも


「これはなんなんだぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


昨日、あいつと夜まで遊んで、ご飯を一緒に食べて、あいつが帰った後、しっかりと寝たはずなのに!なのに!なんで!


「どうして女の子になってるんだぁぁぁぁぁぁぁぁ!」













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