古き者2
「相変わらず素直じゃないな」
「悪かったな……」
そうこう2人で話している内に学生寮に着いた。
この寮は非常に大きく、生徒一人に一部屋用意されている。
「に、しても。模擬戦が生徒対抗じゃなくて良かったよ」
寮に入ると、先ほどの話の続きをディオが始めた。
「………………」
だが部屋ももうすぐ近くだし、何より面倒そうだったので無視しようとした。
「お前、そこは普通何でだよ?って聞く所だぞ?」
「……何でだよ?」
面倒だと思う態度を隠す事無く、アルトは尋ねた。
「そりゃ、お前と対戦しなくて済むからだ」
まるで自らの自慢話をするかの様に、ディオはそう言った。
「……はっ」
吐き捨てるようにアルトは鼻で笑って返す。
ディオは俗に言う優等生である。
魔術の知識も深く、剣術の腕にも長けて戦い慣れていて、それでいて頭が回る。
もしディオと戦う事があれば、苦戦は必至である。
あわよくば勝てたとしても、無傷での完勝など無理であろう。
それを承知でそんな事を言って来るのは嫌味か何かか? とアルトは考えてしまう。
「いや、そう言う意味じゃなくて、俺はお前が強いって話をしてるんだぞ?」
と、心を読み透かしたかの様にディオは告げた。
「……そうか?」
「そうさ!もし模擬戦でお前とやる様な事があれば、俺は真っ先に逃げる!」
(ああそうかい……)
そんな事はないだろうにとアルトは胸の内で呟く。
この手の冗談は好きになれそうに無い。なんせそんな軽口を叩かれてしまう程に、自分の力が無いのだから。
もっと強くなりたい……。
アルトはずっとそう強く願い続けていた。
強くなりたい……。
誰の手助けも不要な程の力が欲しい……。
「アルト?」
アルトはハッとした。
考え込み過ぎて周りの事が見えていなかった。
気付いてみれば、そこは自分の部屋の前だった。
「じゃあなアルト?明日の模擬戦、お前のテスト楽しみにしてるからな?」
「……ああ」
アルトは相槌を打つと、自分の部屋のドアを開いた。