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ローレシア  作者: 鴇天ユキ
苟且の境界線
16/21

古き者16

(とはいえ、本気でやらなければ勝てないか……)


 正直、初手で負けなかったのは運によるものが大きかったとスティルは感じていた。


 侮った訳ではない、予想が想像より上を行っただけだ。


 だがここからは違う。


 スティルは本気で戦う覚悟を決めた。


(ここからが本番だ……!)


 スッとスティルは短く息を吸い、そして。


「我が身は--」


 詠唱。


 それを耳にした瞬間アルトが動き出す。


 アルトは両手のナイフを僅かにタイミングをずらして投げる。更に……


「アインス!」


 詠唱。だがそれを耳にしてスティルは気付く。


 知っている者は今は少ないが、それは数百年前の普及型魔術。


 しかしそれは問題が多く、実戦運用には難があって今は使われていない。


 が、不意を突いて使われた魔術は阻止出来ない。


 アルトの足が光を帯び、次の瞬間スティルの目の前からアルトが消える。


 だがスティルは焦らず、冷静なまま状況を整理する。


 目の前には投げられたナイフ二本。そして旧式強化魔術を使ったアルトは、恐らくナイフを避けたその背後から来る。


 詠唱はまだ間に合わない。


(ならば……!)


 スティルは覚悟を決めてナイフに背を向けて振り返りながら剣を振り上げる。


 するとスティルの目の前にはナイフを構えて飛び込んで来るアルトの姿があった。


 流石のアルトもそれは予想出来ず、焦って止まろうとするが間に合わないといった様子だ。


(終わりだ!)


 タイミングを合わせて、スティルは剣を振り下ろす。


 だが振り下ろしてからスティルは気づく。アルトは避けられない。しかも、スティルの振り下ろした剣はもう止められない。


 アルトの強化魔術は一瞬しか効果が無い。しかも効果が仮に残っていたにしても、アルトの強化魔術に防御力を強化する効果は無い。


(しまった!)


 そうスティルが胸の内で叫んだ瞬間だった。


 アルトにスティルの剣が当たる前に、アルトは振り下ろされる剣の側面を手の甲で弾いて外に反らす。


 スティルの剣はアルトか逸れ、地面に落ちた。


(惜しいな……お前は)


 スティルは口元に僅かな笑みを浮かべる。


「--鉄壁の城塞」


 そしてスティルの詠唱が終わると共に、再び高い鉄の音が会場にこだました。

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