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ローレシア  作者: 鴇天ユキ
苟且の境界線
15/21

古き者15

「!?」


 その行動には流石のスティルも目を見開き驚いた。


 後ろに飛ぶスティルに合わせて、知ってましたと言わんばかりに同時にスティルを追う。


 殆ど体が密着しそうな程の近距離。正に零距離の位置にアルトは居る。


 咄嗟にスティルは剣を構えようとする。だがスティルはパニックになりそうになる気を抑え、冷静になる。


 この距離では近すぎて剣が振れない。いや、仮に振れたとしてそんな半端な剣では簡単に避けられ、次の瞬間には勝負が決するだろう。


(なら……)


 スティルは地に足が着いた瞬間、ナイフを振りかぶっていたアルトへと肩を突き出して突進する。


 だがそれすら読んでアルトも同時に後ろへと飛び退く。


 が、それを読んでいたのスティルも同じ。スティルは肩で飛び込みながらも、腰の高さに構えていた剣を振り抜きにかかる。


 先程と違い、その一撃はスティル渾身の一撃。


 その鍛え抜き、積み重ねて来た一撃は音とほぼ同速でアルトへと襲いかかる。


 如何にアルトの読みが鋭かろうと、魔術の強化も無い人間にその一撃を避ける事は不可能だ。


 だが、剣を振り抜く瞬間スティルは自分の視界にある物を捉える。それは……


(!!)


 再びスティルは目を見開く。いつの間にか投げたアルトのナイフがスティルの顔面目掛けて向かう。


 スティルはギリギリで体制を崩して体を反らす。


 アルトのナイフはスティルの頬を掠める。


そして、


「ぐっ!」


 次の瞬間スティルは片膝を着き、剣を一文字に構えてアルトのナイフを防ぐ。


 スティルはアルトを押し返そうとするが、身長差30cmはあるその体格差にも関わらず、アルトの力はそれを容易に許さない。


 そしてアルトは空いたもう片方の腕を振り、ナイフを取り出してスティルへと襲いかかる。


「ふんっ!」


 だが流石のアルトも体重差はどうにもならず、スティルに剣で押し返され、吹き飛ばされる。


「はぁ……」


 スティルは一つ息を吐く。それは漸く体制を戻せた安堵と、仕切り直しの気合いを入れる為の一息だ。


(何だコイツの戦い方は……)


 スティルは今まで幾多の試合を経て来た。


 だがこんな決死の戦い方をする相手とは戦うのは初めてだった。


 言うなればそれはまるで……。


(捨て身……。いや、まるで自分の命を試しているようだ)


 こんな戦い方、一歩間違えば相手も自分も死ぬだろう。


(なるほど……)


 チラッとスティルはラウドを見る。


 だからこそラウドという男は自分に相手をさせようと思ったのだろう、とスティルは察した。

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