古き者13
「遅いぞ。何してたんだ」
「……すみません」
「全く……」と少し怒った様子を見せたラウドだったが、口元ではニヤついていた。
さっきから何なんだ、この不気味な笑みは…
「喜べアルト。今回はお前の為にスペシャルゲストを呼んでるんだぞ?」
「は?」
と首を傾げるアルト。
対するラウドは闘技場の入り口の方を向き、お~い、と気の抜けた声を掛けた。
すると、入口の暗がりから身長190cm程はある巨躯の生徒が入って来る。その光りの元に晒された生徒の目付きは鋭く、そして茶髪の髪をオールバックにしたその容姿はその巨躯も加わって威圧感に満ち溢れている。
「随分待たせてくれましたね。そこに居るのが俺の相手で良いんでよね?」
見た目の予想通り獣の唸り後のような低い声を発する生徒だが、それなりに礼儀正しい事を意外に思うアルト。だがそれより……
(相手……?)
アルトは怪訝な表情を浮かべた。
と、その時
「……おいあれって」
その生徒の登場からその威圧感に気圧されていた観客席の生徒達だったが、ふと一人が口にしたのをアルトは聞き逃さない。
「……あれって、“スティル・フィルハート”だよな?」
スティル・フィルハート。その名をディオから聞いた事がある。いや、ディオから聞かずともその名はアルトでさえも耳にした事がある。
スティルはこの学園に居る生徒の中で、最強の魔術師の一人に数えられている。しかもフィルハートとは隣国の王家であり、彼はその長子で第一王子という肩書きまである。