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ローレシア  作者: 鴇天ユキ
苟且の境界線
11/21

古き者10

 剣と剣がぶつかり合い、火花を散らす。


 しかし、流石に生徒が教官に力で勝てる筈も無く、ディオは教官の攻撃に打ち負けて後ろに下がる。


「来いよ」


 ラウドに挑発されるも、ディオは冷静さを失わずに剣を構え、ラウドを中心に摺り足で右に弧を描く。


 するとラウドもディオに向かって攻める事は無く、剣を前に構えたままディオと向き合い回り込ませない。


 ラウドはディオに隙を見せなかった。


 が、この戦い方はディオが得意とするものだ。拮抗状態を維持し、ジリジリと相手を精神的に追い詰める。そして狡猾に相手の攻撃を待ち、勝ち筋を見出だす。


 だがそれを知っていようとも、ラウドは気にせず動き出し、ディオへと剣を振り下ろす。


 対するディオはラウドの踏み込みに合わせて半歩下がり、剣を横に構えて振り上げた。


 するとラウドの踏み込みは僅かに浅くなり、結果ラウドの剣は剣先でディオの剣の腹に当たる。


 ディオはラウドの剣閃を自ら持つ剣の切先の方へと受け流し、そのまま剣を背中に回す様な形で剣を構えた。が、


「甘い!」


 ラウドが剣を振り終えた形のまま、更にディオへと肩での突進を試みる。


 だがその言葉に僅かに笑みを漏らしながら、ディオは更に半歩下がる。


 ラウドの突進は不発に終わる。更に、


「“我命ずる!”」


 詠唱。ディオは構えていた剣を振り下ろしながら詠唱を開始した。


 ラウドは剣を構えて寸前の所でディオの一撃を防ぎつつ、すぐさま飛び退く。そして……


「“我は形無き刃……”」


 ラウドも遅れて詠唱する。だがもう遅い。


「“紫電よ来たれ!”」


 ディオは飛び出し、剣を構える。


 そして次の瞬間、パチンッと音がしたと思えば、辺りが強烈な光に包まれた。


 それを見ていた皆が、視界を白く塗り替えられ、強い衝撃波に目を瞑る。


 衝撃波が通り過ぎると、辺りが静まり返った。


 少し焦げた様な臭いを気にしつつ、アルトは目を開いた。


 そこには…


「うお、目がちかちかすんな……」


 何事も無く、ラウドが立っていた。


 周りの生徒もだが、誰よりディオが一番驚いた表情をしていた。


 ディオの剣はラウドに到達する前に、何か見えない壁にぶつかったかの様に停止していた。


「何だその顔は?俺に黒焦げになって欲しかったのか?」


何事も無くラウドがディオにそう言い放つ。


するとディオは、少し表情を緩め、いいえ、と一言言って剣を引いた。


「それにしてもよくやった。状況の把握に冷静な判断力。剣術はまだ荒削りな所もあるが、現状を考えれば十二分に技量が足りてる。満点だ」


そうラウドに言われると、ディオは一気に表情を明るくした。


「試験終了、お疲れさん。戻って良いぞ」


そう言われたディオは、ありがとうございます!と大きな声を出して頭を下げ、闘技場から出て行った。

[解説]詠唱


 魔術を発動する際に必ず必要になるもの。これなくして魔術は発動しない。基本的に詠唱は幾つかの単語を繋ぎ会わせたもので、その詠唱を最後まで完全に唱える事を完全詠唱という。また完全詠唱の長さは、強化型、顕現型、召喚型の3種ある魔術の種類で大きく異なり、また個人差も大きい。


 魔術のコントロールに精通している者はこの詠唱を完全に唱えずとも魔術を発動する事が出来る。が、詠唱を短くするとその分魔術の規模も下がる。ローレシアの近代魔術戦闘ではいかに早く魔術を発動するかが勝敗を握っているため、魔術のコントロール精度に長けた者程強力と言える。

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