古き者9
「ぐあっ!」
闘技場内に砂塵が舞う。
ラウド教官の魔術により、十五番目の生徒が吹き飛ばされる。
「く……」
立ち上がろうとする生徒だが、倒れた所に、ラウド教官が剣の切っ先を向ける。
「終了。立ち回りがまだまだ甘い、もっと相手との距離を意識して戦え。実戦なら魔術を使われた時点で負けなんだ、慎重になり過ぎるな」
そう言い、ラウド教官は剣を降ろす。
生徒は吹き飛ばされた際に手放してしまった剣を拾いに行くと、ありがとうございました、と一礼して闘技場を出て行った。
この試験は五段評価で採点され、一番優秀なのが5、平均的なのが4と3、それ以下が2、1となっている。
稀に評価0という言葉を聞くが、それは試験を受けなかった場合以外まず有り得ない。
と、気付いたのは最近の事だったが……。
「次、ディオ・ルーバニア」
名前を呼ばれ、闘技場の入り口からディオが出て来る。
クラスで一、二を争う優等生だけあり、周りの生徒達も皆が雑談を止め、2人を見た。
「さて、どれくらい成長したか楽しみだ」
そう言いながら、ラウド教官はディオの方を向く。
慎とした闘技場内に、ラウド教官の声が響く。
「本気出さないでくださいよ教官?」
ディオもラウド教官の方を向き、腰に差した剣を抜く。
学校側から支給されるあの剣は、刀身が長く、刀身と柄の部分を細い鉄で接続しているのが特徴のロングソードである。
「お前の成長次第だ……」
ラウド教官がそれきり押し黙る……。
ディオも同様で、闘技場内に不穏な空気が流れた……。
いつ、どちらが動き出してもおかしくない。
まだ開始の号令が掛かっていないにも関わらず、2人は今にも戦い出しそうだった。
そして……
「試験開始!」
教官の一言で、2人は動き出す。
[解説]触媒
魔術を発動する際、転換したマナを仲介する為の道具。ローレシア魔法戦技学園では肉弾戦の兼ね合いもあり、基本的に剣の触媒が推奨されている。
しかし魔術の発動や出力のコントロールなどは専用の杖など、小さい物程一度に放出するマナの密度、魔術の威力を上げやすい。逆に触媒が大きくなる程魔術を発現しづらく、威力が低下する。