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放課後鈍色タイム

放課後、遙に腕をがっちりと押さえられ町内を徘徊する。

貴重な放課後を潰されなければならないのかと嘆くが、よく考えると帰ってもクリアしたゲームを周回する事以外なかった。なので、こっちの方が楽しいのかもしれないとプラスに考える事にした。

遙と一緒にいると飽きる事はない。これは単に馬が合うという事もあるのだろうが、滅多に外に出ないので、これはこれで新鮮味があって楽しいのかもしれない。しれない?

警官に職務質問さえ受けなければ、街中での深夜徘徊も普段とは違った街並みが見れて、結構楽しかった・・・気がする。勘弁してほしいのものだ。

遙の気の向くまま付き添う事になった。


「それで、結局どこに行くんだよ」


僕の脇をがっちりと押さえる遙に尋ねる。

ついでに腕を引き離そうとするが、離れられない。やはり筋力ではかなわないようだ。

遙は未知なる冒険に胸をときめかせる少年の様な瞳をこちらに向ける。


「聞きたいか?」


「その顔を見て聞きたくなくなった」

遙が不服そうに顔を近づける。


「そんな事言って気になるくせに」


「いや、失せた」


「またまた・・・」


「本当だよ」


「と言いながらも?」


「違う」


「かーらーの?」


「分かった、分かった。気になる。どこに行くかすごい気になるから、肘で脇を小突くのやめろ」


遙が組んだ腕の肘で脇を小突いてくる。力加減ができないらしく、肋骨にゴリゴリと当たって痛い。後、ウザイ。


「ソレデ、ドコニ、イクンデスカ」


抵抗に棒読みで尋ねる。

遙は鼻を大きく膨らませ答える。


「ゴミ屋敷」


「ゴミ、屋敷?」


「そう、ゴミ屋敷」


「俺は何か聞き間違いをしているようだ。お前がゴミ屋敷に行くと言ったとしか聞えない」


「え、そうだよ。ゴミ屋敷に行くんだよ」


遙はお前何言ってんのと言わんばかりにポカンとした顔をしている。何言ってんのと言いたいのはこちらの方だ。


「お前ゴミ屋敷行って何すんの」


「え、見学すんの」


またもや何言ってんのお前といった顔を向ける遙。思わず殴ってしまいそう。


「お前馬鹿なの」


「馬鹿って言う奴が馬鹿なんだって。馬鹿」


しまいには小学生みたいな事を言いだす始末。頭痛が痛い。


「お前はそんな所に行って、楽しいのか」


「うん、楽しい」


「そうか、うん。なら一人で行ってくれ」


とそそくさと帰ろうとすると、遙にがっちりとスリーパーホールドをかけられる。


「そんな事言うなよ。ゴミ屋敷なんて早々見れるもんじゃないぜ。もうすぐでつくし、行こうぜ。」


と言って僕の首を締め上げたまま、無理やり歩き出す。


「おい、やめろ、ますます締まる。苦しい、死ぬ、離せ」


「んじゃ、行くか?」


「ああ、行くさ。行ってやるさ、だから離せ」


とあっさり負けて、嫌々ゴミ屋敷に行くことになる。

その前に、この馬鹿にいらん情報を教えた、さらなる馬鹿について知りたい。

「お前にゴミ屋敷とかいういらん情報を教えてたやつはどこのどいつだよ」


「え、どいつもこいつもクラスの奴らが話しているのを盗み聞きしただけだけど」


「はぁ」


「いや、そんなお前何言ってんのって顔されても。クラスの奴らが話してるの聞いただけだけど」


「そのゴミ屋敷の情報は本当か?」


「知らん」


溜息が漏れる。

クラスメイトの話を盗み聞きで、貴重な放課後を無理やり付き合わされるのか。


「そう心配すんなって、きっといい経験になるさ」


笑いながら力加減なぞ考えてない力で背中をバシリと叩かれる。


家に帰ってゲームを周回プレイするのと、遙に付き合ってゴミ屋敷につき合わせる事、二つを頭の中でどちらが不毛か秤にかける。

数秒考える前に、ゴミ屋敷の重さで天秤に乗せた周回プレイの虚無感が遙彼方に消し飛んで行った。


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