トロピカルフラッシュ これが私の素敵な1日 モモ編
昨日は、お見苦しい所を見せてしまった、失礼。
だが、レディの日常生活を覗くのもあまり関心出来た事ではない。ぷんすか。
とか言いながらも私はこれを誰に向けて言っているのか。まぁ、些末な事か。
嵐のような夜を押し入れの中で耐え過ごし朝が来た、いや来たのか?私は押し入れの中で寝てしまったから今が朝なのか分からない。
慎重に押し入れを開けると押し入れに光が入り込んできて、目がぁ、目がぁ、という冗談は捨て置いて、どうやら朝のようだ。私が寝過ごして昼という事も考えられるが、車の音すらしないこの朝独特の静けさを考えればきっと朝だろう。
のそのそと住処の穴倉から肉食動物に怯え周囲を確認しながら出てくる草食動物のように押し入れから出る私。
私の部屋は酔った父親にカーテンを壊されて以来カーテンがない為、朝が来れば自然に太陽の光が入り込む素敵なお部屋だ。
押し入れから出てきた私はとりあえず小豆色の学校指定のジャージから学校に行く為に制服に着替える。
制服に着替えて、できるだけ慎重に物音を立てないように居間のある一階へ降りる。
居間に行くとモノが散乱はしているものの至って静か。まるで、台風が過ぎ去った後のように。
昨日は何時までやっていたのだろうか。実の所、自分がいつ寝たのさえ分からない。ただひたすら耳を塞ぎ、目を瞑っていたら寝ていたのだ。
一階を慎重に見て回り、母親の姿を探す。
父親は昨日暴れていた居間で仰向けに寝ていた。
唐突に昨日の事を思い出し、視界がぐらりと歪む。父親の暴力、頭の中を巡る母親の叫び。脳が揺れ、鈍い痛みがぶり返す。すこし壁に手をついて息を整える。
忍び足で居間から出る。微かに足が震えている。
一階を見て回ったが昨日私をかばってくれた母親の姿はない。どうやら、朝のパートに出かけてしまったみたいだ。昨日は手ひどくやられていたが、大丈夫だろうか。
私は母親の心配をしつつ、朝食をとるためにキッチンへと向かう。
キッチンの冷蔵庫を開いて中身を確認するが、すぐに食べられそうなものはない。普段なら母親が朝食を作っておいてくれているのだが今日はない。
仕方がないので今日は朝食なしで済まそう。父親のいる居間におつまみがありそうだが、空腹と天秤にかけても行く気にはならない。
ちなみに、朝食を自分で作るという考えはおきない。自分が作れる料理は目玉焼きぐらいで、冷蔵庫に卵がなかったので作れない。
という訳で朝のエネルギー不摂取のまま学校の支度を始める。朝食は一日の活力だといつかのCMでは言っていたが、私は朝食を食べようが食べまいが普段から活力がないので大丈夫だろう。
再び二階に戻り、今日の授業の教科書を鞄に詰め込む。鞄に詰め込んで他にないかと考えたが制服も着替えたし特にする事もないので一階に降りる。
学校に行く前に朝風呂でも入ろうかという思考は起きる前に消える。朝風呂なんてこの家では危険だ、ましてや昨日の今日だ。お風呂に入っている途中に父親に襲われたら抵抗の仕様がない。というか朝風呂だけじゃなく日常的に入るお風呂だって父親を恐れて入れない。お風呂に最後に入ったのはいつだろうか。一週間以内には確実に入ったと思うが、女子としてこれは如何なものだろうか。
私に朝の女の子の身支度なんて縁遠いものだ。髪はボサボサで伸びきったまま。一応手で直すがそれも慰め程度。
玄関まで音を立てないように忍び足、靴を履いて玄関を出る。只今朝の七時。
自転車で三十分程度の学校に行くには早すぎる時間帯。
深呼吸をして、朝の爽やかな空気を取り入れる。家の中に蔓延するタバコと酒の強い臭いとは違う、朝の爽やかな空気。
まぁ、そんな爽やかな空気吐き気がするほど嫌いなのだが。