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そして再び

私はどうしてあの時、家に帰ると言ってしまったのか、今でも不思議に思う。

ただの惰性だったのか。それとも父親が泣きながら土下座をする姿に何か感じるものがあったのか。今でも、それはよく分からない。

ただ、あの時喫茶店の皆の事はしっかりと覚えている。

真剣に私の事を心配して、自分のことの様に怒る遙

その後ろで遙をどう宥めようかとあたふたしながらも心配そうな視線を向ける悠里。

 普段の何を考えているのかよく分からない笑顔を引っ込めて、不安そうな顔を見せる誠。

怖い見た目の割に、一番寂しそうな拓真。

影も関わりも薄いが、一応心配してくれる信二。

しわくちゃな手で私の両手を優しく掴み、温かい笑顔を向けてくれた玄さん。

 終始、いつもの澄ました顔だったが、別れ際、「お前みたいなただ働きしてくれる奴は貴重だ。いつでも戻ってこい」と耳打ちをして私が最初に着たゴスロリ服を渡してくれた茜。

 彼らに思う事は色々あるけれど彼らは本当に彼らである事。ぶっきらぼうだったり、素直じゃなかったり、横暴だったり、色々酷いところはあるけれど、根はやさしくて、いつも私を心配してくれた彼ら。

 本当は家になんか戻りたくはない。

 あの時、私は喫茶店に残る、と、私の帰る場所はここだ、と言いたい気持ちもあった。

でも言い出せなかった。それだと、彼らに頼りっぱなしになるから。

それは彼らにとても申し訳ないし、彼らの事だから絶対に否定されるわけないのに、心のどこかで否定されたらどうしようなんて気持ちがあったからかもしれない。

 結局、私は臆病で彼らに歩み寄り切れなかっただけなのかもしれない。 

 そんな後悔が私の中で渦巻くが、それでも彼らとの過ごした時間を無駄にしない様に、ただ父親の暴力に怯える自分から一歩一歩成長していきたいと思った。


だから、ただ怖い存在であった父親と会話しようと努めたり、修復が効かない学校の人間関係の中で極力、自分なりに明るい雰囲気を出そうと試みたりした。

 私は変れる。

 そう信じて私はあの家に戻る事を決意したんだと自分で納得する。


事実、父親も最近着実に更正してきた。

喫茶店で土下座をしながら言ったことは本当の様で、父親は定職を探すのをやめ、アルバイトを始めた。

周りの同世代は定職に勤め管理職を勤め始める中で、自分はコンビニのレジ打ち。仕事の具合をふとしたきっかけで聞くと、ミスをするたびに高校生の男の子に怒られ、呆れられているようだ。きっと父親にとってとても惨めなものだったのだろう。辛くのないのかと一度尋ねたら、どんなに自分が惨めでもお前たちがおいしいご飯を食べられればそれで良いと言ってにっこり微笑んだ。

私は少しだけ父親を立派だと思った。あの飲んだくれのDV野郎からよく更正したと思った。

このまま壊れた家庭が上手く治っていくんじゃないかと思った。

また、ちゃんとした親子に戻れるんじゃないかと思った。


でも、それは長くは続かなかった


父親は仕事場のストレスから、また酒に逃げたのだ。

自分を見失って、再び暴力を振わない様に酒は控えめにすると最初は言っていた。

しかし、日が進むごと、ストレスがたまるごとに酒の量は増えていった。



そして、結局あの暴力が始まった。




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