星が輝く帰り道
周りは真っ暗で足元はおぼろげにしか確認できない。だけど、空を見上げれば星が光輝いている。
私達はプロレスの後、私がライブ会場に拉致されたワゴン車に乗って喫茶店へと帰ってきた。
喫茶店に戻る頃にはすで太陽は完全に沈んでいた。
後は喫茶店を適当に掃除をして帰るだけだと思っていた。
だが、茜が
「あっ、冷蔵庫の中空っぽだわ」
の一言で私たちはそこまで近所でもないスーパー『オリンピック』にお使いに行かされた。
別に今日くらいコンビニ弁当でも良いと思うのだが、誠達のライブの打ち上げも兼ねて、皆で晩御飯だそうなので、致し方なく遙と悠里のボンクラ二人を連れていく事にした。
今、私たちはそのお使いの帰り道。
遙と悠里は私の少し前を歩いて、私が一歩下がってついていく。
手にはスーパーの買い物袋。前の二人が時折ふざけ合って、スーパーの袋を叩きつけ合っている。卵は私が持っているからいいとして、遙の袋の中にはパックに入った魚が入っているので、あまり暴れない方がいいのだが、怒られるのは遙なので黙っておく。
そんな二人の本当に他愛のない会話を聞きながら、夜空を眺める。
夜空を眺めると今日の出来事を思い出す。怖くて大変で、でも、それでも、認めるのはとても癪だが楽しかった思い出を。
スーパーの袋を持った私の手を眺める。今日私は遙と、悠里と、誠と、拓真と、信二はどうだろうか、ともかく私は大暴れした挙句、彼らを殴ってしまった。
何があったにせよ、人を殴ったという事実は私の中で深い後悔として渦巻いている。自分も父親と同じ最低野郎なのではないかという恐怖すらある。いや、事実最低野郎なのだろう。
でも、彼らは私に近づけて嬉しいと言ってくれた。
出合って間もない私を。
問題だらけの私を。
口を開けば悪態ばかりの私を。
それでも嬉しいと言ってくれたのだ。
私が忘れた優しい言葉を、優しい気持ちを真正面から言ってくれたのだ。
今までだって彼らは不器用なりに私に優しくしてくれた。その気がないふりしながら。
それに対して不器用に無愛想に応えてきた私に、空回りし続けた私を受け入れてくれた。
なら、私も彼らの優しさに答えを出さなくては
「ねえ」
前を歩く二人がこちらを立ち止まって振り返る。
二人が不思議そうに私を見るが、その目はどこか優しげで、今まで他人に向けられてきた攻撃的な目ではない。
「あっ、えっ、と・・・・その」
自分の気持ちを素直に言葉にできない。何せ慣れてないから。
それでも私は自分の気持ちを言葉にしようと試みる。
「あの、ね・・・二人は私に近づけて嬉しいって言ってくれた・・・じゃない」
「?」
二人が不思議そうにこちらを見ている。
「だからね、私もちゃんとあなた達に応えたいの」
次の言葉を言う前に目を瞑って大きく深呼吸。
・・・・・・ゆっくりと目を開く。私の視界に移るのは星が瞬く夜空と私の言葉を待つ二人の姿。
「私に近づけて嬉しいって言われた時私嬉しかった。凄く凄く嬉しかった。でも、私はこんなだし、二人にいつも迷惑ばかりだし・・・だから言われた時嬉しかった訳で・・・えっと、そうじゃなくてね。だからその・・・・・・・つまりね。」
私は何を言っているのだ。一言で済むのにその言葉がなかなか出せない。
今から言う事を二人に否定されるのが怖いのだろうか。今更、あの二人そんな事する訳ないと分かっているのに。
あんなに無視したのに遙は私を友達だと言ってくれた。悠里は遙の後ろに隠れながらもちゃんと私を支え続けてくれた。
私の意気地なし。スーパーの袋を一旦地面に置き、私の頬を両手でパシリと叩いて気合を入れる。
つまり私が言いたいことは
「私は二人の友達なんですか。こんな私でも友達になってくれますか」
はっきりと包み欠かさず言い切る。
自分の思いを、二人に向かって思いを真っ直ぐに。
恥ずかしさで顔が火照る。二人の顔をまともに見れない。
しばらくの沈黙。
反応が全くなくて心配になってちらっと二人を見る。
二人はぽかんと顔を見合わせている。
やがてどちらが最初だったか、二人が大声で笑い出した。
「えっ?えっ、ええ、えええっ」
私の反応を見て、さらに笑い出す。
そしてゆっくりと遙が近づいてきて乱暴に私の肩を叩く。
「いや、悪い、悪い、ぷくく。だって、お前がそんな事言い出すなんてな。なぁ、悠里。」
「そうだね。ちょっと意外すぎてびっくりしたよ」
堪えきれないらしく私から顔を逸らして悠里が笑いだす。
人がせっかく勇気を出して言ったのにその反応は如何なものか。
私は少し不機嫌になってぶっきらぼうに尋ねる。
「それでどうなのよ。本当に私達は友達なの」
遙は笑ってはいけないと一応分かっているのか必死に呼吸を整えて真剣な表情で私を見つめる、が三秒で崩れる。
「いやぁ・・・・だめだわ。なんかそんなに熱く友達だとか言われも、ちょっと、暑苦しいというか。だめだ。笑いが止まらねぇ。なんか熱すぎて逆に寒いわ」
「はぁ?なによそれ。あんただって、さっき私に向かって散々くさいセリフ吐きまくったくせにそれはないんじゃない。てか、ちょっと笑うのよしなさいよ。ほら、悠里も後ろ向いていたって笑っているの、もろバレなんだから」
遙の襟首を掴んでガタガタ揺らす。恥ずかしさで顔から火が出そうだ。
「いやぁ、本当に悪いと思うんだけどさ。友達とか面と向かって喋られるとなんか白けるわー。なんか寒い、めっちゃ、寒い。おい、悠里、お前の上着寄越せ」
「ちょっと、お前が寒いとか言うか。せっかく奥沢さんが勇気の要る事頑張って言ったのに。まぁ、でも奥沢さんの今までのキャラ的に。ふふ、ぷくく。ごめん、笑っちゃって」
人の気持ちを知らずに二人が狂ったように笑い転げる。
本当にいらつく二人だがこれで良かったのかもしれないと納得する。
あそこで大真面目に返されても私は照れたまま二人の顔を見る事ができなかっただろう。そうさ、私が二人に気を許せたのも、締まる所で締まれない。真逆の事をいいながら優しくしてくれる二人の不器用さがあったからこそ。
そんな二人に私は怒りをぶつけるようにスーパーの袋を叩きつける。中に卵が入っていることも忘れて。
すいません。確認していなかった自分が悪いのですが、もしかしたら修正前の内容を投稿しているかもしれません。内容に大きく変更はありませんが、変な所があれば教えていただければ。




