針の穴くらいの小さな違和感
俺は戦いで移動した3人の後をおった。
思ってたよりも近くに3人の姿が見える。
行くと、既に3人は睨み合いながら何か会話していた。
3人の会話が風にのって聞こえてくる。
「もう終わりね。力の差は歴然、あなた達は私には勝てない」
「その態度、気にくわない」
かなめがふらふらっと立ちながら凛を睨む。
響也は意識はあるが、立ち上がれていない。
かなめをかばいダメージを幾分か肩代わりしたのだろう。
「まだ戦うつもりなの?今、ギブアップしたら見逃してあげるわよ?」
そんな視線などお構いなしに凛は挑発みたいな降伏勧告をする。
「ふざけるな!」
凛の挑発ともとれる降伏勧告にかなめは叫ぶ。
俺はその会話を聞きながら少し違うことに気をとられていた。
どこか、凛の様子がどこかおかしい。
俺が決闘が始まる前の睨みあいの時に凛に感じた違和感だ。
決闘が始まってからは気のせいかと思うくらい凛の動きは良かった。
しかし、凛の動きは良すぎた。
かなめと響也の攻撃を綺麗に躱していた踊るようなステップ。
あの時、躱さなくても凛のレベルなら一瞬で懐に飛び込み勝負を決めれたはずだ。
俺は、戦いを思い出しながら、針の穴くらいの小さな疑問を積み重ねる。
実際その後に、3匹のキュクロプスを倒し2人とも森の中へ吹き飛ばした。
そしていまも優位に立っている。
他人から見ると何も疑問に持つような事ではないかもしれない。
なのに、なんでなんだ?
なんでこんなにモヤモヤとするんだ?
あの時、確かに凛の攻撃はかなめに直撃した。
その力の差が今の状態だろ?
今、凛は確実に双子の力を勝っている。
それは、最初のにらみ合いの時点でわかっていたことだ。
最初から圧倒的に凛のほうが力が勝っていたから…
圧倒的に?
俺はそこまで考えると、もう一度状況を把握する。
響也は片膝をつき、かなめも立っているがあと少しで限界は来るだろう。
それに対し凛は少しも息を乱していない。
…この状況はどこかおかしい。
その事を認識した瞬間、針の穴程度だった違和感が、全身を雷のように駆け抜けた。
違和感を形にするため俺は状況をもう一度だけ把握する。
…そして気付いた。
なぜ、直撃を食らったはずのかなめと響也がまだ意識があるんだ?
まだ会ってから少ししかみてないがわかる。
あいつは魔法の使い方、威力の調節の仕方がとてもうまい。
それはあの5人の先輩を倒した時にすぐ気付いた。
傷も無く意識のみを刈り取っていた。
そんな芸当、並大抵のマナのコントロールではできない。
それを凛は触れずに純粋なマナのコントロールだけでしていた。
今回は打撃それも直撃だ。
当然威力は上がる。
いくら強いと言っても凛からしたら双子なんて、虎と猫位の差がある。
凛は強さの差が歴然だと言った。
実際にはそのとおりだ。
少し傷つけても意識を刈り取る事は容易にできたはず。
だが、かなめと響也は立っている。
それは、他の奴なら威力が足りなかったとかあるかもしれない。
だが、相手はあの凛だ。
だからこそ2人が立っている事がありえない。
更にキュクロプスを倒され反動で動けない響也までも意識を失っていない。
動けなくなるような反動のダメージを持ったまま攻撃をうけたのにもかかわらずだ。
何度も言うが、凛は双子よりも強い、それも圧倒的に。
だからこそ、かなめと響也の意識が保たれる程度のダメージしか与えられていない、そんなミスを凛がおかすはずがない。
そういうことか。
つまり、凛は手加減をした…ってことだな。
俺の感じた違和感が明確な形となって現れる。
それと同時に1つの疑問が生まれた。
なんで凛は手加減をしたんだ?
「ここまでやられといてまだ負けを認めないの?」
ぎりっ…!
かなめが凛に向かって強烈な怨嗟の視線とともに歯ぎしりをした。
言い返さないのは実際にやられているのをわかっているからだろう
「実力がないくせに強がって無謀に挑む、だからあなた達は兄に…1番の敵に振り向いてさえもらえないのよ」
俺は、いまの台詞を言った時の凛の表情の変化を見逃さなかった。
そして、そんな表情をする理由も…
その表情の理由に気づけたのは、俺が同じ思いをしたことが数えきれないくらいあったからだ。
それは、大切な何かを思い出す為に過去を振り返る時に見せる、儚げで哀しい表情だったから…
次回は過去編に突入しそうな雰囲気ですが、しませんよ?
これからどんどん文字数を増やしていきます!
投稿が毎日できるかわかりませんがよろしくお願いします
次回はこの決闘で起こる最後のバトルです。
では、また次回も見ていただければ幸いです!