序列戦の日
「ではルールを説明します」
舞台の上でソレーユ校長は序列戦のルールを話し始める。
これからの事は俺の復讐に関わることだ。
他のみんなも目的は違えどこれからに関わることだと聞き逃ししないようにしっかり耳を傾けている。
「皆さんには今から配るバッチを身につけてもらいます」
ソレーユ校長がそう言うと端で待機していた先生たちが生徒にバッチを配り始める。
五芒星の形をしていて、中に奇妙な文字が描かれた赤色のバッチだ。
しかし、後ろに止めるところが無い。
貼り付けるタイプだ。
薄さも5ミリくらいだろうか?
少し柔らかい素材でできている。腕や少し曲がった所にでもつけれるようにとの配慮だろう。
「身につける場所は服の下などに隠れていなければどこでもいいです。10分以内につけてくださいね」
校長がそういうと、どこにつけるかという話で体育館がざわめき出す。
俺はどこでもいいならと左胸、心臓の上につける。
「ただし、1度付けた場所からは変えることはできないので注意してくださいね」
と校長は笑顔で言うが、少し遅かったようだ。
一部から驚きや悲鳴らしき声が聞こえてくる。
お試し感覚で変なところにつけてしまったんだろう。
…すぐに説明するんじゃなくてちょっと間を置いたのはこれが見たかったからか?
校長は相変わらず笑顔だ。
しかし、よく見ると少し顔がほとってる。
ドSだなあの人…
10分がたち、生徒の反応を眺めて満足したであろう校長は説明の続きを話し始めた。
「皆さんには、これからそのバッチを割りあってもらいます」
「ちなみに、今つけてもらったバッチには発信機が付いており割れるとこちらで分かる仕組みになっています」
「割られると第一次試験失格です」
その言葉に生徒たちが再びざわめきだした。
これは序列戦じゃないのか?
こんなんで順番が決まるの?
割られたらって厳しくない?
などと所々から疑問の声が聞こえてくる。
実際俺も少し戸惑いを覚えていた。
序列戦なのに、順番を決めるのに必要とはあまり思えなさそうなさそうなやり方。
それにいま第一次試験って言ったか?
序列戦っていうのは試験なのだろうか?
後ろを見ると凛は腕を組んでジッと校長をみている。
表情からは何も読み取れない。
が、凛には何かわかっているのだろうか?
と思っていると再び校長が説明を始める。
聞き逃さないとざわめきも自然と止む。
「皆さんには色々な疑問があると思います。それをこれから説明します」
「今から皆さんにはこの学園の中全範囲でバトルサバイバルをしてもらいます。そしてここで失格、つまりバッチを割られた人は一次試験から脱落することになります」
そこまで説明すると生徒の1人が手を挙げる。
丸眼鏡をかけた委員長の模範みたいな男子生徒だ。
校長は首をわざとらしく傾げて男子生徒を当てる。
「はい、なんでしょう?」
「今から行われるのは序列戦だと聞いてたんですがそれに一次試験とかあるんですか?」
「それは今から説明しますね」
校長は待ってましたとばかりに意地の悪そうな笑みを浮かべた。
「このバトルサバイバルは簡単に言えばふるい落としです」
「ふるい落とし?」
「はい、このバトルサバイバルはある人数になれば終了します」
その言葉に生徒たちの場をピリッとした緊張感が支配する。
その人数というのがなんとなくわかったのだろう。
実際俺もなんとなくそれを聞いて予想はついていた。
恐らくは…
「その人数は何人ですか?」
その緊張感の中で恐る恐る手を挙げた女子生徒が校長に聞く。
予想はつくがまだ明確には言われてない。
あまり信じたくはないのだろう。
「もちろん、100人です」
そう言う校長の笑みはさっきまでの楽しむような笑みではなく何処か残虐な冷たい笑みに変わっているのは俺の見間違いではないだろう。
その言葉を聞いて、体育館を支配する緊張感が一層増した。
周りを少し見渡すと目をギラギラしてる奴や拳を打ち付けて戦いを楽しそうにしてる奴や反対に顔が青ざめていたりする奴もいる。
そして圧倒的に多いのは不安が多かれ少なかれ見え隠れしている奴だ。
それもそうだろう。
ここでバッチを割られるということは下位200名。
つまり半年間の決闘禁止を決定されることだ。
この学園に来ている奴は目的は違えどその手段は1つ。
決闘で序列を上げること。
上級生を入れると700人にも昇る。
その中での序列戦の決闘は熾烈を極めるだろう。
その序列戦の決闘の空気に慣れることは重要だ。
決闘できる100人と決闘できない200人ではこの先の決闘の結果は全然違ってくるだろう。
俺にとっても下位200人に落ちるのは困る。
「他に質問はありませんか?」
という校長の言葉に手を挙げるものはいなかった。
周りを見渡し、質問する者がいないのを確認した校長は元気よく右手を伸ばした。
「では行ってみよ〜!」
校長がそう言うとみんなのバッチに描かれた奇妙な文字と足元の床が光りだした。
その光が繋がり大きな光となりみんなを包み込む。
俺は眩しさに目を閉じる。
次の瞬間、身体に温い空気と心地よい風を感じそろりそろりと目を開けた。
そこに見える景色は体育館の中ではなかった。
周りを見渡すと、折れた木やえぐれた地面がそこら中にある。
この場所は見覚えがある。
「ここは、昨日凛と滝兄妹が決闘した場所か…?」
少しこげたような土や何かの球のようなものに撃ち抜かれたような痕。
そこから見える学園の位置も同じだった。
恐らくは間違いではないだろう。
バッチに描かれた文字を見る。
「これは移動の魔術式の文字だったのか」
魔術式とはマナを通すことで発動する魔法だ。
魔法と違ってマナを使うことで誰が使っても同じ結果になる。
簡単に言えばリモコンのスイッチみたいなものだ。
ボタンを押すことでテレビがつくようにマナを流すことで相応の結果になる。
これは起こしにくい結果になればなるほど時間や魔術式の複雑化、マナの量を必要とする。
体育館の床が光ったのも魔術式だろう。
勿論バッチの文字だけで移動なんていうのはできない。
その補助とこれを使った生徒自身の移動を防ぐためだろう。
「用意周到なこった」
用意の良さに思わず苦笑してしまう。
まあ人生が決まるかもしれないんだ。
これくらいはして普通か。
すると生徒手帳タブレットが鳴る。
取り出して画面を開くとそこに雫さんが写っていた。
「みんな、状況は把握したか?」
みんなということは全員にかかってきているのだろう。
「お前たちは今、学園の敷地内にランダムに移動した。行うのは校長が言ってたようにバトルサバイバルだ」
「100人になるとアナウンスが流れる。残り人数はタブレットに表示される」
雫さんは淡々と話していく。
本当に昔から変わってないな…
と、画面を見ながら思っていると
「…だまし討ち、協力、罠なんでもありだ。本当に叶えたい願い、目的があるなら生き残ってみせろ」
少し雫さんの声音が変わった気がした。
そして、最後の「生き残ってみせろ」はなぜか俺に言ってるように聞こえた。
「では、軽く身体をほぐしておけ。5分後バトルサバイバル開始だ」
そう言うと通話がとぎれる。
もう一度周りを見渡す。
春にふさわしい気温と心地よい風。
まるで無限に続きそうな広さの学校。
遭難だってありえるだろう。
その中の今俺がいる森。
森特有の匂いに静かでどこか安心させるような雰囲気。
そして、今から始まるこれからを決めるであろう序列戦。
ゆっくり目を閉じて身体の力を抜く。
さっきまでの少し緩んだ気持ちを5分で戦いの気持ちへと変えていく。
木々達がざわめき出す。
そして5分が過ぎようとした時アナウンスが流れた。
「準備はいいか?始めるぞ」
久しぶりに再会した雫さんの声。
気持ちは完全に戦いのモードだ。
今この敷地内には凛や茜も戦いに向けて闘志をみなぎらせているだろう。
俺は閉じていた目を開いた。
それと同時に開始の合図が鳴り響く。
「それでは…バトルサバイバルスタート!」




