表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/21

「「「こ、この能力(スキル)は!?」」」

 俺はクルルのお世話になり一月がすぎた。正直あのままだと生き残れる気が全くしなかったからだ。

 あの後クルルの主城『暁の館』に連れていかれ、メイドのアリアを紹介してもらった。直後にアリアに風呂へと連行された。あの時のことは思い出したくない、彼女から放たれるピンク色の障気が怖かったとだけ言っておく。

 その後はアリアの時間が空いているときは文字を教えてもらい、それ以外の時はクルルの軍の演習を観察したり、こっそり一人で剣や槍の素振りをして過ごしていた。演習に参加しろ? 無理無理無理、だってヤベェもん。手足が千切れるのは日常茶飯事、酷いときなんてクルルとその幹部達を除くと五体満足なやつはいなかったりする。

 クルルの軍は魔皇軍において最強の『個』を自負している。数は5000と少ないが兵は皆、文字通りの一騎当千。まぁ、最近は兵の募集もかけてるようだしそうではない人もちらほらいるけど。

 ちなみに幹部達の最近の悩みは新兵の脱走。自信満々にやってきた悪漢達がその日の晩に夜逃げする。強面だろうが死ぬのは怖い。

 一握りの残れる人達は「味方の攻撃に巻き込まれると確実に死ぬが敵の攻撃なら致命傷は避けれる。そうだ、敵に突っ込めばいいんだ!」とおかしな考えに走り、おかしな戦闘集団を形成している。幹部のベア(名前の通りでっかい熊。もふもふで気持ちいいが少し獣臭い)曰く「暫くすると逃げるのに邪魔だから敵を薙ぎ払うようになり、ある日気が付くと一騎当千となっている。」らしい。

 俺はおかしな娘じゃないのでそんな演習には参加しない。この日は一人で剣を振っていた。基礎が大切、「死ぬ気でやればなんとかなる!」はなんとかなった人だから言うだけ。死んだ人は「止めとけ!」なんて言ってくれない。だって死んでるもん。




「第一回! クルル先生の、能力(スキル)講座ー!」

 クルルは白衣と眼鏡を身に付けている。ちゃんと指揮棒も装備済み。


ここは暁の館の会議室。普段はクルルと幹部達が大事な話に使っている。


「講師はボク、クルルと、」

「補佐を勤めさせて頂きます、メイドのアリアです。どうぞよろしく。」

 アリアはいつものゴシックなメイド服ではなくスーツのような格好をしている。教師というより秘書っぽい。


 どうしてこんなことになったかと言いますと。


 秘密の特訓中、可愛そうなものを見てしまったみたいな目をしたクルルに見つかった。

 ↓

 連れてこられた。

 ↓

 なんか始まった。(←いまここ)


 …どうしてこうなった?

 あれ? 俺今回はなにも変なことしてないよね?


「こほん、マリエル君聞いてますか?」

 すみませんクルル先生、聞いていません。

 なお、『観察』されたときややこしいので俺は結局『マリエル』と名乗ることになった。ただクルルは二人きりの時は『ユキ』と呼んでくれる。


「ちゃんと聞きましょう、大事な話ですよ?」

 すみませんクルル先生、大事な話なら真面目にやってください。


「『能力』とはこの世界に生きるすべての生き物が世界から与えられた力のことだよ。『能力』によってこの世界の生き物は皆、出来ることが決まって自分が何をするか決めていくよ。」

「例えば、『能力:裁縫』を取得しているものは仕立屋になり、『能力:料理』を取得しているものが料理人になる、といったたところです。」

「クルル先生、自分の才能がわかると言うことでいいのか?」

 状況はよくわからないが話はためになるので乗っておく。郷に入っては郷に従えってやつだ。

「ボクが、先生…にへっ」

 あっ嬉しそう。でもクルル先生、働いてください。そしてアリア先生、クルル見てピンク色の障気を出さないでください。

「えっあっこほん、「才能がわかる」じゃなくて「出来ることがわかる」だよ。」

「いまいち意味がわからないんだが、どう言うことだ?」

「『能力』のあることは出来る、『能力』の無いことは出来ない、ということです。先程の例で言いますと、『能力:裁縫』のない者が繕いをすれば針が折れ、『能力:料理』のない者が調理をすればゴミしか出来ない、ということになります。」

 ピンク色の障気からアリア先生が帰ってきた。本当この人、仕事は出来るんだよな。

「マリエルみたいな『異邦人』によくあることらしいんだけど、『能力』のないことを頑張っちゃうと、えっと、」

 クルルがいいよどむ。大丈夫、言わんとすることはなんとなくわかる。

「完全に無駄、ということになります。」

 アリア先生、はっきり言わないで!

「ごめんね、少し忙しかったから言葉が読めるようになった時に能力表(スキルリスト)渡してその時の説明して決めてもらおうと思ってたから。」

 …むしろ無駄な時間が一月ですんでよかったと思おう。頭が痛くなるほど必死で『観察』してみたり、最初は腹筋すら出来ない身体で筋トレはじめてみたり、素振りしようとしたら剣を持ち上げるところから始まったり。

「って待て。俺はこの一月、演習を観察して『観察:Lv3』にしたし、筋トレをして『身体強化:Lv1』に、ひたすら素振りをして『剣技:Lv2』と『槍技:Lv2』にしたぞ?」

 俺地味に頑張ったもん!

「おかわいそうにマリエル様、心を壊してしまわれるなんて。」

 うぉい! アリアひでぇ。

「えっと、キミはその、能力を取得したときに何か聞いたりした?」

「ああ、頭のなかに《能力『なになに:Lvいくつ』を取得しました。》ってのを聞いてる。」

「うーん…とりあえず見てみよう。アリア、観察晶(クリスタラ)持ってきて。」

 かしこまりました、と頭を下げてアリアがさがる。

「クリスタラ?」

「うん、『付呪』っていって道具に特殊効果をつける能力で『観察』効果を付けた水晶のことだよ。」

 へー。『付呪』ねぇ、便利そう。

「ただいま戻りました。」

 アリアはやっ。

「クルル様にご満足いただけるよう並の冒険者以上にはレベルを上げておりますので。」

 そ、そうですか。

「キミ、悪いけどこれに手を当ててくれるかな。」

 クルルに促され水晶に触れる。


 青白い光の文字が水晶に浮かぶ。


「「「こ、この能力は!?」」」



名前:マリエル

称号:無し

種族:魔族(原生種)

職業:無し

装備:上質な服

魔法:火:Lv1

能力:観察:Lv3、暗視:Lv1、鑑定:Lv1、下位魔法:Lv1、格闘技:Lv1、治癒術:Lv1、身体強化:Lv1、剣技:Lv2、槍技:Lv2、学習:Lv1、変態:Lv1



 …変態?

ダンジョンの中でレベル上げすることが諦めました。自力でダンジョン出るのも諦めました。すみません、何度脳内シミュレーションしても詰みます。どうやってこのダンジョンから、もしくはダンジョンでと考えていた方が居られましたら本当に申し訳ありません。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ