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その件につきましては大変申し訳なく思っております。

 いるんだろ?


 心のなかで声をかける。


 …


 いませんかー?


 …


 すみませーん、いたら返事してくださーい。


 …


 中野さーん、返事お願いしまーす。


ー…ナカノって誰よ。ー


 ようやく返事が聞こえた。


 お、いたいた。ちょっと話でもしようぜ、マリエルちゃん。


ーなによその呼び方、子供扱いしないで。ー


 あー、そういや20歳越えてたっけ。


 この身体だと信じられんが。


ー25よ。ー


 うわっ、意外。でも俺28だし年下だね、マリエルちゃん。


ー…間違えたわ、封印されていた時間があるから1万と25歳よ。ー


 どこの大相撲好きな悪魔閣下だよ、と思ったが言わないでおく。まぁ考えは筒抜けになっているかもだから意味はないんだが。


 じゃあ、マリエルって呼ばさせてもらうぞ。俺の名前は知ってるな? ユキアキって呼んでくれ。


ー好きに呼べばいいじゃない、ニシナ(・・・)さん。ー


 …好きに呼んでいいんだな。やっぱ中野って呼ばさせてもらうぞ。


ーそれはダメ。ー


 とりあえず距離を縮めようと軽口を叩いてみたが無駄だった。むぅ、けんもほろろ鳥つく島もない。


ー完全に逆効果よ、喧嘩を売ってるのかと思ったわ。ー


 うぉっ!


 びっくりした。今のはふと考えていただけで伝える気なんて全くなかった。


ー肉体の主導権はあなたが握っているけど精神面は私の方が上みたいね。ー


 うぇ、マジですか。俺の考えてることまじで全部筒抜けってこと?


ーそうね、だからこれからあなたが私にしようとしてることはやめてちょうだい。ー


 …なんのことだ?


ーあなた、私に謝ろうと考えているでしょ?ー


 っつ!


 本当に筒抜けになっているようだ。


ーユリウスのことだったら私はあなたに謝られたくなんかないわ。ー


 でも、


ー謝らないでと言っているの!ー


 …


ーユリウスはあなたなんかに倒された訳じゃない、ユリウスはあなたなんかに負けたりしない。ただ、…安心して成仏していっただけ…ー


 そうか。ユリウスは安心して逝けたのか。


 少しだけ心が軽くなった気がした。


ーまあ、あなたはそれ以外のことで私に謝るべきことがたくさんあるのだと思うけれど?ー


 なんのことだ?


 心当たりがなく正直さっぱり見当がつかない。


ーあら、私の身体をずいぶん好き勝手に弄んでくれたと思っていたのだけれど?ー


 …訂正。心当たり、一杯あります。


 …えー、その件につきましては大変申し訳なく思っております。


 もし目の前にマリエルがいたら間違いなく土下座をしている。


ー本当よ! 私の身体をいやらしくなで回したり。私の、その… 大切なところ、を凝視したり。ユリウスにだって触られたこととかなかったんだから!ー


 なるほど、ユリウスはYes ロリータ! No タッチ‼ を守れた紳士だったのか。すごいなぁー。


ーよくわからないけれどそこはかとなくユリウスをバカにされている気がするわ。ー


 ソンナコトナイデスヨー。ユリウスさん、マジスゲーっす。


 てか色々と語弊があるだろ? 俺は別にいやらしく触ったつもりはないはずだと思われるし。それにあの状況はその、男ならガン見しちゃうだろ! いろんな意味で‼


ーヘンタイ。ー


 うぐっ。


 幼女ヴォイスで言われると心にずしりと重いものと仄かに熱いものを感じる。


 …なるほどこれが男心か…


ーよくわからないのだけれど。世の男性の名誉のために「違う」とだけ言っておくわ。ー


 冷声を浴びせられ仄かに熱いものが鎮火する。


 ありがとう、危うく道を踏み外すところだった。


ーいえ、あなたは既に色々と踏み外しているわ。ー


 間髪いれずに響くマリエルの声。この娘本当に冷たい。


ーダメな男は甘やかすともっとダメになるから仕方がないじゃない。ー


 くっ、この真面目な好青年を捕まえてなんてことを!


ー高価で貴重なものだけれど一度辞書を買って『真面目』と『好青年』についてよく調べた方がいいと思うわ。ー


 毒舌が痛い。甘やかしてはいないがこれだと別のものに目覚める気がする。


 開いてしまえば楽になれそうだが この扉は開いてはいけないものだと思われる。

 マゾで露出狂の幼女とか救えない。


 …あれ? 露出狂のマゾって普通か?


ー残念なことにぜんぜん普通じゃないから早く戻ってらっしゃい。ー


 マリエルの声で我にかえる。


 すまない、危うくまた道を踏み外すところだった。


ーいや、だからもうとっくに踏み外してるわよ。ー


 そんなことない、よ?


 仮に踏み外しているとしてもそれはこの身体に能力(スキル)『変態』がついているせい。俺は悪くない。!


ー能力は身体ではなく魂につくものよ。ー


 え?


ーちなみに私とあなたの能力はちゃんと別になっているわ。ー


 ええ? てことは??


ーあくまで『変態』はあなたの能力よ。ー


 …マジですか?


ーええ、そうよ。でも、どういった能力かまでは知らないのだけれど。ー


 えー、使えなーい。


ーうるさいわね、私の生きていた時代はそこまで能力について調べられていなかったから仕方がないじゃない。ー


 仕方がないかー、今度アリアにでも聞いてみるか。


ーそうしたら。ー


ー…ー


 マリエルが突然静かになる。


 どうした?


ー…ユリウスのことありがとう。私じゃ、彼を成仏させることなんてできなかったわ。ー


 …あれはちゃんと考えてとった行動じゃない。ただ漠然とそうすべきに従っただけだ。礼を言われることじゃない。


ーでも、結果としてかもしれないのだけれどユリウスは救われたわ。だからありがとう。ー


 …デレ期?


ーうるさい、これはけじめよ。夜も遅いわ、もう寝なさい。ー




 この夜以降、マリエルと俺は少しずつ話すようになった。

そういえば未だ主人公がバドっていない事実にようやく気がつきました。

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