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目標、ボケない

『Noooooooo‼』で書いた『竜人』を『リザードマン』に変更しました。

 夜の帳が降りた暁の館で俺はクルルを待っていた。


「姫様、一夜の情けに私に夜伽の時を下さりませんか?」

 通りかかったクルルにかしずいて声をかける。

「ぷっ、くくくくっ。どうしたのユキ、似合わないよ?」

 クルルは楽しそうに笑う。

 恥ずかしさを我慢し妙に芝居がけて言ってみたが失敗だったようだ。

「すまんな、こんな時間に女性に声をかけるのははじめてだからそれらしいことを言ってみたがつもりだが、…違ったか?」

「大分ね。」

「大分か。」

 俺達は連れだってバルコニーへ出ていった。



 月明かりの照らすバルコニー、俺達は手すりにもたれている。

 片手には甘い香りのカルヴァドス、先ほどアリアがナイトキャップとして持ってきてくれたものだ。

「今日行った畑で作らせたものだよ。」

 クルルはそういってグラスを唇につける。

 酒精に濡れた唇は艶やかな色気があり、俺は慌てて目をそらす。

「? 飲まないの?」

 クルルは既に少し酔ったのか頬を赤らませ潤んだ瞳で覗きこんでくる。

「っつ… いや、いただくよ。」

 酒をあおる。

 熱い液体が食道から胃に広がり、リンゴと樽木の香りが鼻に抜ける。

「…うまいな。」

「でしょー。」

 えへへへー。とクルルは笑う。

 間違いない、こいつもう酔ってる。偏見かも知れないが魔王って酒に強いイメージがあった。

 でも某第六天魔王も下戸だったらしいし案外そんなものなのかも知れない。

「あー、今日はごめんねー。」

「なにがだ?」

「ずっと元気なかったからさぁー。本当は美味しいものでも食べて元気になってもらおー、って思って連れて行ったんだけどさー…」

 忙しいクルルにずいぶんと気を使わせてしまっていたようだ。

「いや、ありがとう。今日は楽しかったぞ。」

「ほんとぉ?」

「本当だ。それより気を使わせてしまってみたいだな、すまない。」

「いいよぉ、別にー。何でかわからないけど元気になれたみたいでよかったよー。」

 そういってクルルは酒を口にする。グラスの中身は半分も減っていないが大丈夫だろうか?

「でー、ユキは何かボクに聞きたいことがあったんじゃないのー?」

「ああ、でも大丈夫か?」

 クルルは出来上がっているようにしか見えない。

「らいじょーぶだよー。舌は回ってないけど頭は回ってるからー。」

 あまり大丈夫では無さそうだ。

「でー、何が聞きたいのー?」

 こんな状況で聞くのはどうかと思った。しかし頭は回っているというのなら信じてみよう。

「ユリウスについてだ。」

「どうしてー?」

「俺がこの世界に来ることになったきっかけらしいからな。」

「なるほどー、でもボク知ってることなんてあまりないよー?」

「かまわない。」

「わかったー。」



☆☆☆



 神話の時代。

 人々は皆人間界で生活しており、人間界は『門』を通じて神々の住まう天界と繋がっていた。

 人間族、魔族。ドワーフ、エルフ、獣人族、リザードマンといった亜人族は皆等しく神の奴隷であり、上下はなく下でしかなかった。

 そんな時代にユリウスは人間族として生まれた。

 彼にはマリエルという5つ歳上の幼なじみがいた。彼女は魔族だった。魔族は成長が遅いのでユリウスが10歳になった頃には彼は彼女の成長を抜いた。

 その頃からだろうか? 二人は将来を誓い合い幸せな時を過ごしていた。

 しかし、そんな幸せは長くは続かなかった。

 マリエルが20歳になったとき、彼女は神の生け贄に捧げられることが決まった。

 ユリウスは悲しみ、怒り、そして神に挑むことを決めた。

 その後仲間と共にマリエルを救いだした彼は『門』守護する神龍を討ち果たし、『門』を破壊した。

 でも幸せな時は戻っては来なかった。

 神の支配から解き放たれた人々は種族ごとに別れ覇権を争った。

 まず、魔族が負けた。負けた魔族はマリエルの父につれられダンジョンの先、魔界へと落ち延びた。

 マリエルは逃げなかった。彼女はユリウスと共に種族を問わず弱き者達を守っていた。

 だが人間族の大軍勢に勝てず、彼らもダンジョンへと逃げ込んだ。

 弱き者達をつれた彼らは逃げ切れなかった。

 マリエルはダンジョン内で封印されユリウスは捕らえられた。そして彼らの守りたかった弱き者達は全て殺された。

 魔族の女に拐かされた英雄は残念なことに自らを取り戻すことが出来なかったので処刑される。

 夕陽で赤く染まる丘で磔にかかげられたユリウスは魔王を統べ魔皇となり、侵攻してきた義父の手で剥がされた。



☆☆☆



 俺のグラスはとうに空いており、月は少し傾きだした。

「でー、その後はずぅーっと、歴代魔皇を支えつつぅ、マリエルを探してたって話だよー。」

「1万年もか?」

 ずいぶんと気が遠くなる話だ。

「そだよー、あのダンジョンは『大迷宮』って呼ばれてて定期的に中が変わるんだよー。マリエルはずっとどことも繋がっていない空間にいたらしくー 見つからなかったんだってー。」

 とろんとした目でクルルは話すが若干視線があっていない。

「よく知ってるな。」

「ボクは先代魔皇の庶子だけど身分は平民だから後見になってくれていたんだー。それにイシュタリア攻略のときに『大迷宮』突破する必要があったから色々と聞いたんだー。」

「ああ、すまん。答えにくいことを聞いてしまっていたようだ。」

 庶子である平民。クルルは魔王だがその過程で多くの差別や嫌がらせを受けてきたことだろう。

「気にしてないからいいよー。」

 酔ってるせいか軽く流される。

「確かに平民出身の他の魔王からは魔皇の庶子ってことで嫌われてー、貴族からは平民ってことで嫌われてたけどー。ユリウスが後見ってことで何かできるやつなんていなかったからねー。」

「なんかすまん。」

 俺のせいでその大切な後見はいなくなってしまった。

「いいよー、別にボクの立場が変わる訳じゃないからー。」

 相変わらずクルルに気を使わせている気がする。頭が回っているのは本当のようだ。

「それよりさー、これ飲んでー。ボクもう飲めないよー。」

 クルルの差し出したグラスには酒が3分の1ほど残されている。

「ああ。」

 グラスを受け取りあおる。少し時間がたったせいか角がとれて丸みを帯びさらに美味しくなっていた。

 これが美少女との間接キスの力か。

 違いますね、はい。

「ありがとう、そろそろ寝た方がいいんじゃないか?」

「あれー、王子さまー。閨までエスコートしてくださらないのですかぁ?」

「っつ!」

 きっと俺のはじめの言葉の仕返しだと思うが、酔って少しだらしがない感じになったエロさにドキッとする。

「ぷっ、冗談だよー。」

 クルルはいたずらっぽく笑う。

 あー、冗談かー、ちくしょう!

「閨へのエスコートはもう少しユキが頼もしくなってからだねー。おやすみー。」

 そういって立ち去るクルルは耳まで真っ赤にしていることに俺は気が付かなかった。



 さて、いい加減もう一人のお姫様ともお話をしますか。

 目標、ボケない。


 おい、いるんだろ? そろそろお話をしようぜ、マリエルちゃん。

ユリウスの話はもっと早くにやるつもりでした。相変わらずの読みにくさで申し訳ありません。

能力の名前等をそろそろ直す必要が出てきました。ストーリーに関わるレベルでの修正ではありませんが変更際はご報告させていただきます。

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