選者は勇者6
「麒麟様が仰るなら…そうなんだろうな。」青龍さんは不満げに言う。
「やはりか…。俺はそうだと思ったよ。この子には力がある。」
玄武さんはうんうんとばかりに頷く。
「あの…」ずっと気になっていたことを訊こう。
「皆さんは何者で、さっきの黒い人たちは誰で、
そして、山茶花の君って、なんなんですか?」
朱雀さんが声を立てて笑った。…それにしても、綺麗な人だ。
「質問が多いわね…まず私たちについては、話せば長くなるし、後でね。
さっき貴女方を襲おうとしていたのは、私たちとは敵にあたる人たち。
いつでも真っ黒なので、烏の尾羽…ラフト(Raven-Feather-Of-Tail)
と呼んでいるわ。彼らは隠密かつ獰猛で名前を直に呼ぶことは禁忌。
そして………貴女を狙っている。」
「わ…私を…?」
「まあ、私たちに会えたからには心配することはないわ。
続けるわね。…えーっと、山茶花の君のことだけど、」
「ちょっと待て。仮にこいつが部外者だったらどうするんだ。
そんなに簡単に話していいのか?大体、こいつに自覚がないんだぞ?」
青龍さんが言った。…さっきからこの人、私のこと疑ってないか?
「その点は心配ない。」と麒麟さん、久しぶりの登場。
私、この人の存在、忘れてたかもしれない。
「彼女こそが山茶花の君に違いない。」
なんか私、何度も確認を取られています。
「だったらいいでしょ、疑い深い青龍くん?」
「ふんっ」
身内でやりとりされると、困ります。
というか、学校みたい……ん?学校?…学校!
「あの、学校はどこですか?そろそろ戻らないと」
「その点は平気。あっちの時間は止まってるから。」
「………あっちの…時間?じゃあ、ここはどこなんですか?」
「そうね、裏側の世界というべきかしら。」
「裏側の……世界?」
「貴女が住んでいた世界の裏側ってこと。」
「まあ、あんな世界なんかよりは数段進歩しているがな。
あっち側が裏側と言うべきだ。」と青龍さん。
…いちいち嫌味っぽいな、この人。