選者は勇者5
またも、驚愕と恐怖で言葉を失う私は、気が付いた。
周りには青年たちを除いて誰もいなくなり、
それどころか、教室も消え失せていたのだ。
辺りは真っ白な異空間ともいうべき場所で、どこからか甘い匂い…
金木犀の香りだろうか。植物のような芳香が漂っている。
「貴女が暁楓…もとい、山茶花の君でしょうか。」
唐突に話しかけてきたのは、真っ白なスーツを着た色白の青年。。
「あ…あの、暁楓というのは確かに私ですが……。
さざんか…?というのは…………、私ではないと思います。」
「ほらな、やっぱり、こんなガキが選ばれし伝説の勇者なわけないだろ。」
青いが光によって七色にも見えるような美しい着物を着た青年が言った。
それをたしなめるように一睨みしたのは、
こちらも美しい着物(だが赤色)を着ている、女性。
「貴女は、確かに暁楓なのですよね。」「そ…そうです。」
やはり、とばかりに頷くのは、大柄で筋肉質な男性。
なぜか迷彩柄のタンクトップ姿だ。
「申し遅れましたが、我々は貴女様を迎えに参りました、」
「麒麟と申します」白スーツの青年が胸に手を当てて言った。
「青龍」青い着物の青年はぞんざいに一礼した。
「朱雀です」赤い着物の女性は優雅に微笑んで礼をする。
「玄武だ」タンクトップの彼は、気のよさそうな笑みをした。
「む…迎えに来たって?…どういうことで?」
動揺のあまり丁稚のような言葉遣いになった私に、
麒麟と名乗った青年は(彼がリーダー格らしい。)微笑んだ。
「貴女から感じる太陽神の守護力…………確かに貴女が山茶花の君だ。」