学校と俺と何か*
学校。
誰もが当然のように知識を蓄え、学ぶ場。
国によっては行くことができない世情があるなか、この国は幸運にも制度や法で固く守られている。政治事となるとやや堅苦しくなるが、何も知らない学生にとって、青春を謳歌するにはもってこいの時期と場なのだろう。
普通なら、な。
いつからか俺にとっては羨ましい、憧れの場となっていた学校は、同時に妬みのタネにもなっていたのが記憶にある。
まさか高校デビューを果たさずして終わるなど、病室に閉じ込められるまでは思ってもなかったからな。
──そして、いつの日からか諦めていた。
一瞬にして崩れたあの瞬間を忘れもしない。もう無理なんだと。さらっと言われたさ。
それでも中学まではちゃんと学んでいた。一応ね……。
まぁ……可もなく不可もない態度だったけど、あまり学びに積極性は正直なかった。
受験という大きな壁が一年ごとに迫りくるのが堪らなく嫌だった。
結果、何とかなるさの方式で放っておいたら、何ともならなくなったのを結構後悔している。
だからせめて、もし来世があるのなら出来るだけ後悔は少なくしたい。
そのためにも……。
「ちょっと待て」
まずは前方、あらぬ方向へと進む物体を静止させる。
「あい?」
腑抜けた返事を返す相手。裏も表も青色なので判別付けづらい。
名前ペンで裏表書いてやろうか。
自分は間違っていませんよーと言いたいような顔が思い浮かぶが、実際顔が無いのでこちらの勝手な予想ではあるが間違いではないだろう。
「おい、教室はここだが」
「え、そだけど?」
俺の目標、後悔しないためにも初っ端コケる訳にはいかない。
先にも言ったように、中学までは学校に行っていた。だから、一連の流れくらい明確に思い出さずとも分かる。
「なら、なぜ先を行く」
「ここじゃないからだけど……?」
「だから……」
登校したらとりあえず教室へ。
これが一番ベーシック、且つ正常な学校の始まりではないのか?
出鼻くじかれ俺が間違ってるのか?と、変な心配をしてしまうくらい滑らかに誘導されかけた。
その先は明らかに特別教室があるであろう流れの廊下、俺は16歳。青春通り越した脳みそでも順序的に高校一年生なんだから、「一年」と表記された教室に入るべきなんじゃないのか。
「え、授業とか受けるの?」
「は?」
初日にこんなコメントがあっていいのだろうか。いい訳ないだろ、立場変えて同じセリフ言ったら「え?働くの?ぐへへ」とさして変わらん。途中から学校行ってない俺が言うのもなんだけど……。
「へ~ふーん、んん……まあ、いっか」
「何だよ」
「じゃ、僕はここで!」
「ちょ!待……」
「消えた……」何でもありかよ、あの生物。
とにかく、あまり長居してウロウロなんてしたら明らかに怪しい。
あ、でも俺ってどのクラスに入ればいいんだ……?
「──君は、転入生か?」
「え、あ、はい?」
肝心なことに気づき焦る俺の後ろから、生徒にしては年をとった声。
振り返ると教師であり、俺の事情をすべて把握しているらしい。
いちいち説明することなく、そのまま一番近い教室へと案内され、転入生の紹介含めたホームルームが行われた。