人生の再開とアレやコレ*
──ピーン、ポーン。
───ピンポーン。ピポーン。
あ……。
無意識からの復帰。
眠りから呼び起こすかのような一定規則の音階に体が反応し、自然と向いた先の窓から差し込む光に目をくらます。カーテンの閉め忘れとは、丸見えじゃないか。
まぶ……なんだ……?
重い体を起こして玄関の方を見るが、静けさを保っている。まさかの幻聴か?
「……ったくなんだよ」
──ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポン!!!!
「がァァァァ!!」いったん間を空けての再来、近所迷惑も甚だしいので足早に玄関へ。
「あぁ、もう…」万が一を考え、玄関を開くワンテンポ前で社会に向けてもよい顔を用意しておく。人違いで人間関係を悪化なんてさせたくない。と、言っても大体予想がつきそうなのも、連続呼び鈴への反応が遅れた一つの原因でもある。
チェーンロックはかけたまま扉を開けると、心地よい朝の空気が流れ込みまとわりつく眠気を掻っ攫ってくれる。
「やぁ!」
「うわっ!?」
覗き込んで見えていた範囲外からいきなり影ができたかと思うと、目の前には青い物体が急襲し挨拶をかます。分かっていても、あらぬ方向からの襲来に態勢はない。
昨日のあれだ……何だっけ。えーと。
「バ神か」
「違う!全然違うね?」
あぁ、そうだ奇妙な生物だった。ティア……だったか。
「朝からなんだよ、オモチャみたいに連打をするな」
「HAHAHA!起きないのが悪いじゃぁないかー」
「この……」
完全にナメられてる。これは人類の危機だ。宇宙局にでも突き出してやりたい。
口も無いくせにペチャクチャと喋るし、ついでにこの性格でタチが悪いことこの上ない。
「まぁ、冗談はこの辺にして。さ、学校だぞ」
「え、あ……」
一時思考停止、そして昨日の出来事を入念に思い出す。
そうだ…今になって気づいたけど、そうだよ学校。
いや、でもそれだって手続きとかあるだろ……まさか詳しくは明日って学校で、ってことだったのか!?
「君は行くだけで結構だよ、手順は済ませてあるからさ」
「……やっぱりかよ」
恐らくあれもこれもコイツの言う裏方さんとやらのお陰なのだろう。
ぜひ記憶に留めておき、人間であればきっちりお礼をしようと思った。
「学校か……」
「ん?もしかして行きたくないとか?」
「いや、実感が湧かないっていうか、なんて言うか。……俺、学校ろくに行ってなかったからさ」
「ヘェ~」
「へーって、知らないのかよ」
「え?知るわけないじゃん。僕はきみがベットに寝ているところからしか知らないよ」
何だと。
じゃあ、あの時の横にいた影……あれは誰なんだ。
記憶が薄い。いや、薄くなってきている。思い出そうとすればするほど正確性が欠けていき、昨日見た夢を思い出そうとしているように遠のく。
夢ではないことは確か、なはず。
「むしろこっちからいろいろ聞きたいくらいなんだけどね~」
「え?」
「君こそどっから来たのさ?それこそいつの時代から来たんだい?」
「まさか……タイムトラベルじゃあるまいし、ただ……俺だって分かんないんだよ。そして今ので頼みの綱が切れた」
「僕が最後の砦かい?そりゃ見た目こんなんだけど、外見だけで判断するってのもねぇ」
「おいおい、『神』じゃなかったのかよ」
「神だって生き物さ」
駄目だこいつ。
早く何とかしないと。
……。
ネタを振りまいている場合ではない。
記憶も不確か、出所不明、裏で働く謎の手続き。
このままでは、警察保護も夢ではない。
「ってか、お前よく人前なんかに出られるな」
「ええ?だって、見えてないんだもの。人には見られないのさ」
「は?」
「まぁ、後程ノチノチーついでに到着だ」
昨日紹介をされた学校。
考え事にふけながら奇妙生物の後を続くと、あこがれの光景だった学校を目の前にし、これは夢ではないと思いたい。どこまでが夢なのか。
これから決まるのか決めなきゃいけないのか、はしゃぐ奇妙なモノと登校を果たす俺だった。