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Pandemic!*  作者: グレーミー
エンデミック編
3/9

目覚めたそこは隔離世界*

虚ろな視界。定まらない足場。死後の世界とでも言うのだろうか。

目が覚めた場所は再びベットの上だった。

そこには死後直前に立っていたあの人影もいて、今度はしっかりと形を捉えその姿を見ることができた。

それがあの人影の正体であるかは不鮮明だが、久しぶりの人との対面であることに間違いはなかった。


「──い」


……。

………。


「──?、───かな?」


…………。


「──俺のあの死後直前の達成感を返せェェェェッ!!!!」

「ェェェェ!!………って。あれ」



「……」



向けられる視線。

明らかに不審者に寄せられるザ・変質者のレッテルと憐みの表情が、ベットから突如飛び起きた自分に目覚まし代わりと浴びせられる。

あれ、何、死んだの?俺……それとも生き返ったとか?でも死んだとしたらいきなりのこの状況は『つよくてニューゲーム』の道のりだろう。何この醜態(しゅうたい)

何も最後にどうせと言わんばかりに腹に込めた思いの丈を、遺言代わりに叫んでみるとあら不思議。

声が出たよ。死後も喋れんのかよ畜生。


人がいる場所でプライドを捨てた雄叫びはもれなく聞かれた。いや、聞いたから硬直してんだろうけど。

ここまで無残と化した空気をどうすればいいのか、潔白を証明するかのような病室の壁の白さが羨ましいし妬ましい。いっそそいつで(くる)んで燃やしてくれ、恥ず過ぎる。


「あのー……気分の方は大丈夫ですか……?汗、すごいです」

「あ、あぁ……ははは、ぜ、絶好調だよ。夢の中で運動でもしすぎたかな」


なんてフォローだ、素晴らしいの一言。

行き場を失った俺の精神はまだ、生ける。


「ティーさーん、目が覚めたようですよー」


ティー?

そんな医者いたっけか……。

感謝と親密な関係ができるほど、ここの人間に信頼を置いていたわけでもなく、それに伴い記憶も散漫だ。

治る見込みのないものに時間をかけている。いつしかそんな風に思えてしまった医者の印象と自分の気持ちに、うんざりしていた。


「調子はどうだい、病人君」


「ぁ…………は?」病室の扉が珍しく開き、目で追う物体が異常と感知するまでは一瞬だった。

計一人の入室を目で追ったはずだが、入室時のセリフと性別にまず異常を感じる。

髪は藍色よりも少し明るめ、上下黒い制服で短めのスカートからは真逆の白い肌が目を惹く。全体的にほっそりとしているというかスリムというか……くそ、青春時代の経験が少なすぎて説明できねぇ……。

ちなみに、先ほど救いの手を差し伸べてくれた子はとにかく、背が小さい。これが第一印象だろうか。

髪はアイボリーというのだろうか、クリーム色に近い。目が片方髪で隠れてなんかイイ。……これは俺の個人的意見だ。


……問題は。

藍色の子の後ろから姿を現した、おそらく先ほどの声主でもあるであろう、よくわからない物体だ。


「ははっ、ようやく目が覚めたようだね」


ははっ、誰だよお前……本当によくわからない。俺だけ見えてるわけでもないよな。

その姿は人ではなく、空中に浮いた小さな生き物と称していいだろう。

こいつが喋ってるのか……?


「やあ、初めまして。新たな世界へようこそ」


すげえ…聞こえる、というより頭に響く。そんな感覚。夢の中で言葉を聞いているようだが、はっきりと聞き取り理解できる。


「お前、喋ってんだよな……?」

「もちろんとも、僕はU+273B TEARDROP-SPOKED ASTERISK。一応正式名なんだけど、どうも定着が悪くてね。略して『ティア』なんて呼ばれているんだ」

「あ、ちなみに神様と呼んでも差し支えはない、気軽に呼んでくれよ」


「…………」



大きく深呼吸。



──すげえ。

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