これから一緒に…
名前で呼ぶ!?何故、そんなことになる!?
「オレの言うことは絶対だからな!で、お前の名前は?」
「…た、高城一希。」
「一希、か。いい名前だな。」
六男は勝手に話を進めていく。
「いいか、よく聞け。今日からお前はオレ達と行動を共にしろ。絶対に、な。」
ニヤリとしながら、そう言った六男。…理解に苦しむ。
「何でだよ!?」
「そんなの、オレの勘だ。何が悪い?」
「悪いも何も…!」
「えー、いーんじゃない?僕、賛成!」
三男がそう言った。
(何…だと!?)
「僕も賛成…かな?」
「…どうでもいい!」
長男に次男。
「あー…オレは賛成。」
「別にいーんじゃね?」
双子。
「僕も賛成。」
…七男。満場一致!?
「決まり!じゃ、よろしくな?一希くん?」
「ちょっと!僕は納得してな…。」
ダンッ!!と、思いっきり壁に突きつけられ、
「うるさい…もう決まったことだろうが…つべこべ言わずにオレ達と一緒にいろ!じゃないと…全校生徒に女ってことバラすぞ。」
次男怖ぇぇぇ!!
「おい!暴力は許さないぞ、渚羽!」
「暴力じゃない、脅しだ。」
「まあ、渚羽は暴力はしません。大丈夫ですよ、颯樹。」
「で?どうするんだ?」
…僕は…
「わかったよ!!わかったから!バラすのだけは勘弁してくれ…」
「決まりだな!」
六男は笑みを浮かべた。するとその時、
「一希〜!?」
「碧璃!?」
息を切らしながら、碧璃が走ってきた。
「一体っ…どうしたって、いうのっ…!?」
「あっ、えっと、ごめん!!無理に追いかけて来なくても良かったのに…本当にごめん。僕のせいで。体力ないのに…」
「そんなことより!…この状況、何?」
碧璃は七人兄弟達をちらりと見る。兄弟達は顔を見合わせた。
「えーっと…」
僕は今まであったことを話した。一緒に行動すること。女だということがバレてしまったこと。話し終えると、彼女ほ深いため息をついた。
「はあ…まさか、よりによって男子に…。」
「ごめんなさい…反省してます。」
「過ぎたことは仕方ないわ。でも…」
碧璃は悲しげな顔を浮かべる。僕が離れることが悲しいのか、それとも――――…。
「なあ一希。そいつ誰だ?」
六男が聞いてきた。
「あ…同じクラスで、親友の北川碧璃。」
「どうも。」
彼女はぺこっと頭を下げる。普通なら少し動揺するだろう。だが、彼女は冷静だった。けど少し…悲しそう?ううん、辛そう…。
「ふーん…。」
「な、何ですか…?」
彼女は、スカートの前で手を組んでいたが、さらにそれに力を込める。口はきゅっも一線に結び、大きな瞳を揺らす。そんな彼女は、とても『女の子』らしい。少し羨ましかった。自分は、あんな態度…。そう思うと、思考が止まらなくて、切なくなる自分がいる。僕はどうしたいのかな。
六男は僕をちらりと見た。そして、また彼女へと視線を移す。大きな瞳がまばたきをして揺れる睫毛。六男はそれを見据えているようにも見えた。
「…よし、お前もオレ達と一緒にいろ。」
「え!?」
碧璃は目を見開く。
「ど…どうして」
「ん?そんなの、オレがそうしたかったからだ。それだけ。ていうか、理由なんているのか?」
六男はニッと笑う。碧璃は、
「…いりません。」
と言った。困ったように笑いながら、でも、嬉しそう。
「もう一人加わったの?」
三男が、目を輝かせながら言う。
「賑やかになるね〜!よろしくね、えっと」
「碧璃、でいいです…!」
「そっか。じゃ、碧璃ちゃん!よろしく!」
「よろしくお願いしますね、北川さん。」
「…よろしくな。」
「これから、よろしく!」
「…まあ、よろしく…。」
「これからよろしく頼むぜ、碧璃!」
「よろしくお願いしますね、北川先輩。」
皆の挨拶に、彼女ははにかみながらも応えていた。
「…だが、オレ達はお互いに名前で呼び合うぞ!」
「え、颯樹兄さん、なんで?」
七男が言った。
「決まってる。仲間で、友達だからだ。お互い信じあってると思える証、だ。」
「…。」
次男の視線が鋭くなる。これは…もしかすると…。
「呼び方は自由だ。あだ名はダメだぞ、変なのつける奴が絶対いる!」
…変なあだ名の時期、あったんだな…。
「おい。」
「なんだよ、渚羽」
「オレは呼ばないぞ。」
「オレが決めたことに逆らうんじゃねー…」
「年下で弟のくせにオレ様気取りか?…いい身分だな。いいか、オレが上だ。お前こそオレが決めたことに口出しするな。わかったな」
「はいすんませんでした」
六男がすぐに謝った。
「…ま、まあ、渚羽以外の奴はちゃんとやれよ?いいな?」
『はーい。』
次男以外は、返事をしていた。すると…
『キャーッ!!』
「えっ!?」
一斉に後ろを振り返る。…たくさんの女子がいた。
「神無月先輩と高城先輩が!?」
「え、嘘!?一希くんもいるの!?」
「高城くんが!?」
「本当だわ!!」
「…お前、モテんのな」
「う、うっさいよ。」
六男と小声で話す。
「イケメンが八人も!」
「それぞれタイプが違う…」
「これは…」
『イケメン8だ〜!!』
女子達の大きな声。耳がキンキンした。
「イ、イケメンエイト!?」
「何それ!?」
六男と三男が驚く。
『イケメン8〜!!』
くそっ、女子共め!!某アイドルのアイツらみたいに言うな!
「ったく!某アイドルのアイツらみてーに言うんじゃねーよ!?」
六男、アンタは僕と同じツッコミすんな!つまんない!てか、同じこと考えてたのかよ!?あーっ、もう女子がうっさい!多すぎ…暑苦しい!
「高城くーん!!」
「かっこいい〜!」
女子達が周りを囲む。僕は、
「…っ…またこのパターンかよ!?」
…何度目になるだろうか…数え切れないこのパターン。僕は大きな声で、心の叫びを口にしたのであった…。