男の子である僕と女の子である僕
あの男子達は何者なのか。
そう考えていたら、ある一年女子の声が耳に入ってきた。
「ねえ…あれって…」
「絶対そうよ。間違いないわ。」
「ち、ちょっと!」
「わっ、た、高城先輩!?」
「僕にも教えてくれないかな?あいつら、一体何なの?」
一年生は顔を見合わせて、
「噂ですけど…」
「別にいいよ、どんなのでも」
「わかりました…じゃあ、えっと」
一人の女子が話し始めた。
「噂では、神無月グループのご子息が編入してくるとか。」
「なっ…!嘘だろ!?あの神無月グループか!?」
神無月グループ。有名な企業だ。まさか、その社長の息子が、ここに…
「一番右の方は長男の洸様で、大学部です。その次の、そっぽを向いてる方は次男の渚羽様。同じく大学部です。ピンをしている方は、三男の一波様。高等部です。四男、五男は双子で、まず、無表情の方が四男の慧雅様。そして双子の弟である、五男の稜雅様。不敵に笑っている方は六男の颯樹様。そして最後に、七男の心様です。」
「…そう。ありがとう」
「いえ!お役に立てたなら良かったです」
…一年生は校舎に戻ってしまった。
「あっ…まだ聞きたいことあったのに…。」
僕は、兄弟達に目をやった。すると、三男と目があった。彼は笑いながらこちらに向かって来る。
「君、男子?この学校、男子いたんだ!」
「えっと…」
「僕てっきり、男子が僕達だけなんじゃないかって思ってたよ〜!」
「あの、そのっ…」
焦っていると、
「こら!一波!初対面の方に、その態度は失礼ですよ。」
…と、長男が来た。
「そうだよ。一波兄さんはフレンドリーすぎるんだよ。」
七男まで!?
「べ、別に僕は気にしてませ…」
「お前が気にしていなかったとしてもオレ達は気にする。」
「…渚羽兄も、なかなか失礼だぞ。」
次男と五男も来た。
「眠い…。早く行こう。」
四男も続き、
「慶雅、そればっかだな。」
六男も…。
「…ん?」
「え!?」
六男が、急に顔を近づけてくる。上から下まで見回してきた。
「お前…おん」
「わぁあぁああぁーーーーーーーーー!!!!」
僕は咄嗟に、大きい声で叫んだ。そして、六男の手を掴む。
「ちょっとこっち来い!」
そのまま引きずって校舎裏まで来た。
「いってぇ!いてぇっつの!!」
「うるさい!黙れ!」
僕は六男の手を離し、足を止めた。
「言っておくけど、僕は男だよ。確かに中性的な顔してるし、背も低い方だけど、女じゃない。」
「……。」
六男は僕をじっと見つめてくる。
「あのさ…まだ疑って」
「そういうことか。」
「!?」
声がして、振り返ると、次男がいた。
「お前、女なのか。」
「なっ、ちがっ…!」
「違わないよね?」
今度は三男が来た。続いて、長男、四男、五男、七男が来る。
「僕、君のこと間近で見たけど、可愛い顔してると思うけど?」
「確かに、あなたは、中性的で可愛らしい顔をされていますね。」
「まあ、男に見えなくもないから、最初は分かんねーけど…」
「…稜雅、失礼。」
「慧雅もかわんねーだろ…。」
「…別に何でもいいけどさ…こいつ、女なんだろ?なら女でいいだろ、めんどくさい」
「それは僕の台詞…てか、女じゃないし。」
僕は皆の言葉を否定した。
「……」
「な、なんだよ」
「……」
六男が近づいてくる。何も言わずに、ジリジリと。
「だからっ…何…!?」
六男が僕の髪に、指を通し、すっとすいていく。
「…!」
僕は、驚いて固まった。少しずつ、顔が紅潮していくのがわかる。…初めて、男子にこんなことされた…。どんどん恥ずかしくなってきて、僕はつい…
「…っ…私…は…っ」
「!」
「あっ…!」
どうしよ…バレた…!!
「やっぱ女じゃねーか。こんくらいで顔真っ赤にするなんて、可愛いじゃねーか!しかもお前、ちゃんと『私』って言ったな?」
「…っ…!」
さすがに言い訳が出来なくなった。そして同時に、可愛いと言われたことに恥ずかしさを覚える。
「…そのへんにしてやれよ、颯樹。こいつ、今にも倒れそうな顔してる…。」
「け、慧雅…だってよ、こいつ面白ぇんだもん!くくっ…はははっ!つい、からかいたくなっちまうんだよ!」
そう言うと、僕に向き直って、指を指してきた。
「お前、オレのことは、颯樹…名前で呼べ!」
「…は!?」