Who is any boys?
碧璃の言葉は、意外にも僕の心に刺さる。
…運命、か。まあ、ないだろうね。だって男装だしさ?相手が女子でも男子でも、パッと見おかしいじゃんか。
「そういう碧璃はいるの?」
「んー?探し中!いるといいなー」
「…僕はまともな恋ができない気がする…」
「そう?一希、いい子じゃん。いつか、女子で良かった、女子に戻りたいって思える日がくるよ、きっと」
…そうだといいけど…嫌な予感しかしない。何でかな…。
「…碧璃も気をつけてね?」
「え?何に?」
「あんまり僕といるとさ、危険だよ。女子が…『一希くーーん!!』
言い終える前に、女子の大群の声にかきけされる。女子は、僕たちの方に走ってきた。
「…ほらね」
「……。」
碧璃は、苦笑いしながら女子を見ていた。
「あーっ!?碧璃!?なんで一希くんと!?」
「え?いや、それは…」
「そーよ。今日だけじゃないわ。なんであんたばっか一緒にいるのよ?」
女子達の言葉に、碧璃は少し身じろいだ。まずい、そう思った。
「…だからなんだっていうの?」
碧璃が強い口調で、でも、少し震えた声で、女子達に告げる。
「私は、一希とは中学が同じで、たまたま気があっただけ。皆が考えてるようなこと、何もないから……」
「…碧璃」
僕は彼女の方にポンと手を置き、ウインクした。女子達がざわつく。彼女は、ほっとしたように微笑んだ。
「そういうことだから。碧璃とは何もないし何かされるつもりもない。」
「…とか言って、実は影で付き合ってるんじゃないの」
「「ないから!!」」
碧璃と声が合って、顔を見合わせた。少し笑った。その様子を女子達は黙って見ていた。
「…じゃ、私行くね」
「え?」
碧璃は耳打ちで、
「女子のお相手してあげて?」
「!?」
僕が、ばっと碧璃から離れると、彼女は不敵な笑みを浮かべていた。そして、
「女の子には優しくね〜?」
「なっ…!?」
「じゃあね〜!!」
「ちょっ、まっ…」
碧璃は走って行ってしまった。
『一希くーん!!』
「!?」
「相手してよ〜!」
「逃げないでよ〜!」
「あっ、抜けがけ禁止!」
「そうだよ、皆のものでしょ、一希くんは!」
…好き放題言っている。
「…あのさぁ…。」
「?」
「僕は、お前らのものになった覚えないんだけど?誰のものでもない、僕は僕だ」
「……」
女子達はしばらく黙っていたが、
『キャー!!カッコイイ!!』
「!?」
僕は慌ててその場から走り出した。
『待ってよ〜!!』
「待たないよ!!」
僕はありったけの声で言った。
「結局こうなるのかよ!?」
僕はひたすら走り続けた。
(…碧璃…許すまじ…!)
次の日―――…
「本当にごめんって!」
僕は碧璃と話していた。
「でも、あの仕打ちはないでしょ、普通…」
「ご、ごめん!…だって私、あの場には…」
「わかってる。元はといえば、僕のせいだ」
僕は目を瞑って、ため息をついた。
「今度からは、僕も一緒にね。」
「え…あ…う、うん!そ、そうする…。」
碧璃の様子が少しおかしい。何かあったのかと聞こうとした時だった。
「ちょっと、何あれ!?」
女子の声が聞こえ、碧璃が走って駆け寄る。
「どうしたの?」
「いや、あそこ。校門のトコなんだけど…」
僕も急いで駆け寄り、外を見る。すると…
「…!?」
…信じられない…どうして…
「どうして…男子がいるの!?」
碧璃が驚きに目を見張る。
「しかも、七人…!?嘘だろ…!?」
目に入ったのは、男子だった。
「皆、行きましょ!!」
クラスのリーダー的女子の言葉で、全員外へ出た。廊下はたくさんの女子で埋め尽くされている。どうやら、他の学年も全員出てるらしい。中等部、高等部、大学部…勢ぞろいだった。そして、入口が女子で埋め尽くされると、一人の男子が声を出した。
「わーっ、すごいね!歓迎されてる?僕達」
そしてもう一人…
「そうですね。歓迎、されているようです。」
また一人と…
「…ふん…いらない歓迎だな。迷惑極まりない。」
…うわぁ…何なの、コレ。どういう関係?てかそもそも…
この人達、一体誰―――!?