5
もう随分近くまできている盗賊(仮)をよーく観察してみる。
実は発見した時からずっと気になっていたのだが、なんだこいつの頭。
見たこともない髪色をしている。
太陽の光を反射しきらきらして、ちょっとかっこいい。
身なりはなんか全体的にぼろい。
ずいぶん草臥れた感じの大きな布をマントみたいに羽織っている。
首から上は小奇麗な感じなんだが……うーん。
見た目的には、盗賊かどうかグレーゾーンって感じ。
が、しかし。
男が木陰に入った瞬間に、おれはとんでもないものを見つけてしまった。
男は背中にでっかいまな板みたいなのを背負ってて、そのまな板からはいかにも握り易い感じの柄がニュッと突き出ていた。
うん、あれだ。
――剣じゃん!
思わず叫びそうなのをぎゅっと堪えて目を見張る。
おいおいおいおいマジかマジか。
実物を見たのはこれが人生で二度目。
一度目はジジイが酔った勢いで自慢してきた時だ。
そのときに見た剣はすでに錆びついてナマクラとなっていたが、それでも『武器』という圧倒的存在感を放っていて、おれはそれに魅せられた。
じじいに寄越せとせびったものの、もちろん叶わなかったが。
そして、この男が背負っているそれはじじいのナマクラより遥かにでかかった。
さっきまな板に喩えたが、マジで長くてちょっとかっこいいまな板みたいなのだ。
いや、まな板って表現使ってる限りかっこよさとは無縁か。
とにかく、これじゃ切れ味が良かろうが悪かろうが、こいつでしばかれた時点でお陀仏だ。
盗賊の背負う大剣に戦慄する樹上のおれであるが、まだ希望は残っている。
それはイクスの樹の二つ目の特徴。
なんとこの植物はテント内にいる生物の『気配を絶つ』。
それゆえ、天敵の多い小動物なんかの最高の隠れ家として大人気なんだが、まあ今はその話は置いとけ。
つまりは、現状有利なのはおれなんだ。
まだ焦ることはないと自分に言い聞かせる。