第五話 優音Side
雫ちゃん達と別れた僕と結羽ちゃんは家庭科調理室へと向かっていた。
「料理部、どんな感じだろうね。」
「それを見にこれから行くんでしょ。」
「あ、うん。そうだね…。」
な、なんか気まずい。いつもちょっとギクシャクしてしまうから仮入部を機会に少しても仲良くしたいんだけど…。思いふけっていると料理部に着いてしまった。そのまま結羽ちゃんは無言でガラッと開ける。僕は慌てて教室内の人に挨拶をした。
「あの、こんにちは!仮入部しに来ました。」
「あれ、いらっしゃい。」
ほんわかと笑う優しそうな女性の先輩がでてきた。胸元の赤色のリボンからすると3年生だ。黒髪にそんなに高くないポニーテールをしている。なんというか…超がつくほどの美形だと思う、うん。
「こんにちは。私は3年6組の桜 千恵里です。副部長なの。」
「私は1年4組の愛崎 結羽です。」
結羽ちゃんがちょっと仏頂面で言った。緊張しているのかもしれない。そんな緊張が移って僕までぎこちなくなってしまう。
「お、同じく1年4組の工藤 優音です。」
「そう。今日はよろしくね。これから部長が来ると思うんだけど…。」
困ったように桜先輩が言ったちょうどその時、ドアがガラッと開いた。まるで計ったようなタイミングだ。一斉にこの部屋にいる人達の視線がドアへ向いた。
「こんにちはー。」
そうして入って来たのは赤いネクタイをした男性の先輩だった。桜先輩と同じくまたまた超がつくほどの美形だ。その先輩が桜先輩と話し始めた。それにしても結羽ちゃんも超がつくほどの可愛い系女子って感じだし…。あれっ…僕は一般人…あれれ…。なんだか悲しくなってきた。1人で感傷に浸っていたら、その男の先輩がクルッとこっちを見た。桜先輩から仮入部のことを聞いたらしい。
「君達が仮入部の2人だね。僕は3年1組の梅宮 紅汰。料理部の部長なんだ。今日はホットケーキを作ろうと思うんだけどアレルギーとかは大丈夫?」
僕は特にないけど結羽ちゃんはあるかな?聞こうとしたらいつの間にか僕の横にいたのが真後ろにいた。うおっ、と変な声を出して驚いてしまう。いつの間に移動したんだ…。そういえば林檎ちゃんが結羽ちゃんは人見知りが激しいって言ってたっけ。とにかくアレルギーがあるか聞かないと。
「結羽ちゃんアレルギーはある?」
そう少し屈んで聞くと軽く首を横に振られた。ないってことか。それにしてもここまで大人しい結羽ちゃんは珍しいなぁ。いつも犬石くんと騒いでいたからちょっと意外だ。こうして見ないと信じられない。おっと、梅宮先輩に伝えないと。
「アレルギーはどちらもありません。」
「それなら大丈夫かな。じゃあ、今日はこのエプロンをと三角巾を貸すから今来てくれ。」
梅宮先輩に青色のエプロンと三角巾を渡された。2人で協力してエプロンを着るところを見届けた先輩はさて、と言った。
「それじゃあホットケーキを作ろうか!」
そういえば僕は料理をしたことがないんだけど大丈夫かなぁ…。
みんな美少女だ美少年だとか可愛いとか
言ってるけど、優音くん。
君もイケメンだということに
気づいているかい…?
多分優音くんは地味にモテるタイプです。
多分ね。
雫ちゃん一筋の彼からしたら
どうでもいいのかもしれないけど…。