第四話 雫Side
それからしばらくグダグダした後に、結局鬼
ごっこは終わってしまった。もう5時半だなんてちょっと驚きだ。
「それじゃあー、今日の部活は終わりにしまーす!お疲れ様でした!」
佐藤先輩が号令をかけるとみんな一斉にお疲れ様でした、と返事をした。それから各学年の更衣室にみんな向かっていく。私も陸と一緒に帰ろう。と思ったけど…。
「佐藤先輩…なんでしょう?」
「ふははー!」
私はまた佐藤先輩に肩を掴まれていた。おかげで全く身動きが取れない。隣にいた陸も鈴木先輩に肩を掴まれている。
「いやね、2人とも今日の鬼ごっこで全く捕まえられなかったからさー。」
佐藤先輩が真剣な顔で言った。真面目な顔立ちのためなんとなく緊張してしまう。鬼ごっこはそう簡単にに捕まるものではないから普通じゃないのかな?も、もしかして生意気だとか言われちゃうの!?ビクビクしていると鈴木先輩が佐藤先輩に続いて言った。
「これでも一応オレ達が部活内で一番速かったんだよ?賞も何度か取ったし。2人ともすごいじゃん。絶対に賞は取れるよ。」
「あ、ありがとうございます!オレ達もこの部に入りたいです!」
陸が嬉しそう言った。私はあまりの驚きに何も言えないので代わりにブンブンと首を縦に振る。先輩達に初日から褒められた!こんなに嬉しいことはない。
「やっぱり2人とも中学からやってたのか?」
そう佐藤先輩に尋ねられて私達は頷いた。
「はい。私達は昔から運動が得意で、走るのは特に好きだったので。」
「昔からサッカーとか野球とか…あとテニスとか水泳ですかね。いろいろやってました。」
そう言うと先輩達は目を見開く。あ、やっぱりそうですよね。私は自分の運動能力の異常さを理解してますよ。普通はこんなにやりませんもんね。
「あー…私達の家系は運動が得意な人が多くって…。」
「家系?」
あ、そうか。私と陸が再従姉弟だっていうのを知らないからか。それを伝えようと思った時に違和感を感じた。恐る恐る振り向くと後ろからズンズンと林檎ちゃんが近づいてきているのが見える。な、なんかドス黒いオーラまとってるよ!?どうしたんだろう…。すっごく怖い。ここまでイライラしているのはそう見ないんだけど…。
陸の真後ろから向かっているので陸は林檎ちゃんに気づいていない。私が急に黙ったのを不思議に思った鈴木先輩も私の視線の先を見てビクッとした。先輩さえ驚くそのオーラ…いろいろとまずい。そのまま林檎ちゃんは陸の後ろに近づき首根っこを乱暴に掴んで持ち上げた。まるで子猫を掴むかのように軽々と持ち上げる。後ろからいきなり掴まれた陸は誰かわからなくてジタバタと暴れる。しかし陸は上を向いて林檎ちゃんの表情を見た瞬間に大人しくなった。うん…あれは逆らっちゃダメだよね…。
「陸上部の先輩方、お疲れ様です。ちょっとコレ、借りますね。」
林檎ちゃん、笑顔なのにすっごく怖い。先輩もドン引きしていた。
「あ、はいどうぞ…。」
鈴木先輩が笑顔で言おうとしていたけど引きつっていた。佐藤先輩はちゃっかり鈴木先輩の後ろに隠れている。でも鈴木先輩とそんなに背丈が変わらないから意味がないと思うけど…。
「あ、あと雫ももらいますね。」
「え!?あ、先輩お疲れ様でした!」
いきなり林檎ちゃんに言われて私は慌てて先輩に挨拶をした。こんな時の林檎ちゃんには逆らわないべし!
「お疲れ様…。」
よく状況がわからないのか困惑した顔で鈴木先輩に言われた。先輩ごめんなさい。私もよくわからないんです。明日ちゃんと入部届け出すので本当にごめんなさい…。私は走って先に行ってしまった林檎ちゃんを追いかけた。そういえば犬石くんも同じ部活のはずだけど、どうしたんだろう…。
犬石くんがどうしたかわからないって?
大丈夫だ!
私もよくわからない!
あと、次からは優音くんSideです。
彼と結羽ちゃんが向かった料理部では
どうなるのでしょうか!