第十四話 雫Side
第一章の最終話です。
バタバタと後ろから騒がしい音がして、陸が追いついてきた。それからしばらくして息が切れた優音くんも来る。
「雫、歩くの速いなぁ。」
息も切らさずのんきに陸は答えた。おかしい…。私たちの教室は3階にあるはずなんだけど…。優音くんも混乱してるし。
「ちょ、ちょっと待って…。陸さ、僕より後に走ってきたよね?しかも本気で走った僕を追い抜くって、えっ?」
しかも先に出てきた優音くんを追い越して先に私のところに着いたらしい。陸の運動神経恐るべし…。
「しかも雫ちゃんが出て行ってからそんなに時間が経ってないはずなのに校門にいるって、えっ?」
「普通に歩いてきただけだけだよ…?」
べつに走ったりはしていないんだけどなぁ…。そう言うと優音くんは何か恐ろしいものを見たような顔をした。え、なになに!後ろに幽霊でもいるような顔やめてよ!
「なぁ、それよりも早く帰ろうぜ。オレ、腹ペコペコだよ。」
ぐうっと陸のお腹が鳴った。確かにもう13時だしそれはお腹が減るだろう。私だって成長期なんだからお腹ペコペコだよ。
「というか、そもそも2人が遅かったんでしょー?」
「ご、ごめん。」
優音くんが申し訳なさそうな顔をする。なんだかこっちが申し訳なくなってくる。ま、まぁ2人とも真剣な話をしてきたわけだし仕方ないよね!
「2人とも大事な話をしてたんだよね?それなら仕方ないよ。」
「えっ…なんでわかるの?まさか雫ちゃんこそ本当のテレパシー…。」
「そんなわけあるかっ!」
結羽ちゃんの真似をしてツッコミを入れると優音くんはちょっとほっとしたみたいだ。テレパシーなんてそんな簡単に使えたら困らないよね。いや、使えても困るけど…。
しばらく今日のことについて話していたら高校の最寄り駅である桜美駅に到着した。そういえば優音くんの家はどこらへんなのかな?
「今更だけど優音くんって電車?」
「うん。そうだよ。最寄りは撫子駅。」
「それだと私と同じだね!」
私はそう言いながら改札に定期をタッチして駅に入った。まさか優音くんと同じ最寄り駅だったとは。
「いつ越してきたんだ?お前の家、遠かったよな?」
「春休みぐらいかなぁ?1人暮らしをゴリ押しでさせてもらった。」
ご、ゴリ押しって…。そこまでしてここの高校に来たかったのかなぁ。陸もしかめっ面をしている。しかし1人暮らしだなんてかっこいいなぁ!
「1人暮らしなんてすごいね!1人で寂しくないの?」
「ううん!まさか。わざわざここに引っ越してきた目的も達成出来たしね。」
「目的?」
首を傾げると優音くんはニコッと微笑んだ。陸の方を見ると何かを察したかのような遠い目をしている。え、なになに。目的ってなんなの!?もう一度尋ねようとしたらホームに電車が来てタイミングを逃してしまった。
撫子駅に着くと優音くんはこっちだから、と言って私達とは逆の方向に歩き出した。私と陸も手を振ってから歩き出す。帰り道の商店街から抜けると、陸がはぁ、と息を吐き出した。
「今日はいろんなことがあったな。」
「うん。なんだかすっごく長い1日だった気がする。」
私達は頷いてからしばらく黙った。家族同然だからこそ沈黙できる空間だった。その間に今日のことを思い出してみる。本当にいろんなことがあった。優音くんとの出会いに犬石くんと結羽ちゃんのノリツッコミやさらに林檎ちゃんも加わった帰りの白熱の戦いとか…。毎日がこんなだったら大変だとは思うけどたまにはこんなのもいいかな、とは思う。
「今日はすっごく大変だったけどさ、その分楽しかったね。」
「そうだな。オレもそう思う。これからの毎日が楽しみになれるな。」
そう陸が言い終わると、いつの間にか2人の家の前に着いていた。
「じゃあ、また明日な。」
陸はそう言うと隣の家に入って行った。私もそれを見送ってから自分の家に入る。
「ただいまー。」
「おかえりなさい。ホットケーキ、作っておいたから早く着替えてくるといいよ。遅かったね?」
お母さんが不思議そうに尋ねてきた。時計を見ると、すでに14時になっている。通りでお腹がペコペコなはずだ。
「今日はね、いっーぱいいろんなことがあったの。」
「お母さんにも教えてくれる?」
ちょっとキラキラした目で尋ねてくるお母さんに、私は答えた。
「それはナイショ!」
入学式編、いかがでしたでしょうか?
次回から第二章に入ろうと思います。
もしかしたら
投稿ペースが遅くなるかもしれませんが、
ご理解お願いします。
これからも(*´∀`)ノ ヨロシクッ☆゛です
P.S.
キャラクター達がリア充過ぎてイキツラ…
リアル高校生にとっての敵ですね。
それと第一章全て表現の変更などをしました。ストーリーの変更はありません。