ミッションスタート
5の倍数の日に一回ペースでストックがある限り投稿します。
「…やっぱめんどいし、時間もないから今度でいい?」
「説明すんのはお前がやれよ」
わぉ、かあさん。言葉遣いが…
「分かっています。お母さん」
きりりと答えた悪夜の顔が鷲摑みにされた。
「ぎゃー!」
「あらら?私は三つ子なんて産んでないけど?」
「すみません、すみません」
…いと憐れなり。
「分かったらいいのよ、分かったら」
母さんは笑顔だけど、全然目が笑ってない。
「まあ、それは置いといて」
天月が置くふりをして話を進める。
「受けていただけませんか?」
目をウルウルさせて小首をかしげる。自分と同じ顔の奴がこんな仕草をしているのを僕は見たくない。
ただ気持ち悪いだけだ。
「わかった、わかったから。僕と同じ顔でそんな仕草をするなっ」
「受けていただけるんですか!?」
「ああ。受けてあげるから、涙を拭いて」
人差し指で涙を拭いてあげる。僕って優しい。
「ところでギャラはどうなっているんだ?」
『へ?』
二人揃って間抜けな反応だ。
「ギャラってなに?」
悪夜が馬鹿な事を聞いてくる。
「金だよ、お金。ただ働きはしない主義でね」
僕が言うと母さんも同意する。
「当たり前よ。まあ、一人頭80万といったところかしら」
「…あのぉ、もう少し安く…」
「ならないわよ」
「わかりました。とりあえず、魔界と天界で半々でいいか?」
天月はうなずく。よし、はじめるか。
「ちょっと準備するから、ターゲットの事話して」
悪夜たちに背を向け言う。暗殺に必要なトラップ準備だから丁寧にしなくては。
「標的はドイツの医者です」
天月は言う。
「SPがいつも15人程度付いているがいけるか?」
「ふっ。いったい誰にものを言ってるんだい?悪夜。このぼくに暗殺できない人間なんてこの世界に10人いるかどうか。まあ、任せろ」
「なんだその自信」
「今までの経験と実力」
「言い切りましたね」
「ナルシなのか?こいつ」
失礼なことを言うなぁ、悪夜。
「家に入ってきたときの事を忘れたのか?」
「ああ、あのワイヤーな。物騒なもん仕込んでいるなぁ」
感慨深く言う悪夜。よし、準備が終わった。
「行くよ、悪夜と天月。で?何時までにやればいの?」
「今のやるは確実に殺るって漢字でしたね」
天月の事は無視。悪夜は思い出すように言う。
「ええっと、確か今日の午前2時までだったかな?」
「はあ!?」
後20分だ。ドイツに行く時間もない。
「大丈夫だ。ワープという便利なこと、俺できるから」
余裕ぶちかましている悪夜の頭をたたく。
「そんなことはさっさと言っておけ。早くしないと2時になる」
「んじゃあ目ぇ瞑れ」
目を瞑ってから5秒後。妙な浮遊感があり目を開ける。
「着いたぞ。今日帰ってくる予定の家だから。トラップ仕掛けてくるか?」
悪夜の問いにうなずいて答える。
「そうするつもり。あ、後ろからついてこないでね。その時は…」
一拍開ける。
「死ぬから」
「怖っ」
それじゃあ、行ってきます。