ミッション・コンプリート
天月の魔法で暗殺対象の家にまたしても瞬間移動した。
前回と違った事は、隣に彩樹がいる事。そして、魂探査という魔法で本人を間違える事がないという事。
「それじゃあ確認するぞ」
悪夜がブツブツと何かを唱えるとふわりと屋敷の中で青く光る物体が一つ。
「何あれ?」
不思議に思って口にすると、天月が説明する。
「あれは対象の魂を刈り取る者だけが見えるように魔法を工夫したものです。すごいですね、悪夜君は魔法が得意なのでしょう」
口元に笑みを張り付けて言っているけど、刈り取るって…
「これで対象がきちんと家にいることが確認できたから、行っていいよね?」
彩樹は中華服のような格好をして、両手に針を構えている。
いつも思うのだが、どこにその針を隠しているのだ。無くなったところを見た事がない。
「企業秘密です」
唇に指を当てて笑う彩樹が気に食わなくて、細身のナイフを投げた。
それをひょいっと避けて彩樹は笑顔で屋敷の真正面に走って行った。
こんこん
ガチャッ
ドアをノックして出てきた人物の首に容赦なく針を突き刺す彩樹。暗いというのに、きちんと延髄に針はたっている。
「ひ~とり目♪」
何故かご機嫌でメロディーに乗せて歌うように針を投げていく。
「ふ~たり、さんに~ん、よ~ん、ご~のろく!」
パスパスッ
彩樹の周りに立っている人がいなくなって僕は立ち上がる。
「じゃあ、本命と行きますか」
そのまま静かになった長い廊下を迷うことなく歩いて行く。
目印の青い光が動いた。
さすがに周りの人の気配が消えたら驚いて動くだろう。
そのまま動く光を追って、僕たちは小走りになる。
すると青い光はある地点でピタリと止まった。
僕たちはそのまま足音を押さえて走り出す。
そして、追いついた。
そいつは写真よりも肥っていて、醜かった。
彩樹は顔を歪めて目を閉じた。
「こんな不細工を視界に入れたくない」
確かに。許されるのならば、僕も目を閉じたい。
「あなたが、わたすを、コロシニ、くる、ものです、カ?」
片言というか、たどたどしい声で、そのデブはしゃべる。
「?なんだ、知っていたの?」
「わたすが、ケシタ、しにがみ、イッテタ」
そう。じゃあ話は早いね。
ていうか、わたす、ってもしかして、私の事か?
「わたす、あなたの、殺される、イイ。天国、スキナヒト、イル」
「は?」
思わず声が出てしまった言うように彩樹が目を開ける。
「今まで善良な死神たちを葬ってきたくせに、何言ってんの」
彩樹は目の前のデブに心の底から嘲った笑いを浮かべた。
「お前に、お迎えなんて来ないよ。勝手に悪霊にでもとりこまれればいい」
「ヒッ」
「さようなら」
彩樹はデブに針を三本投げた。
それを僕はすべてワイヤーでたたき落とす。
「…なんで邪魔するの、月夜」
とても不服そうな顔をしている。
対象に、希望を見る目で僕を見ているデブがいた。
それを見て、僕は笑った。
「なんでって…そんなの決まっているじゃん」
僕は腕を持ち上げて、クイッと引いた。
デブの顔面が縦にずれる。
「この暗殺は、僕が受けた依頼だからだよ」
これで、一つ目。
そうして他に二つも、特に問題なく暗殺が終了した。
ミッションコンプリートだ。
次回で終わりです。