美尋勇者(2)
アディーとシェラナに続いて美尋が最初の部屋に戻るとそこには
「・・・痛ってて、あれ?ここどこ?・・・って美尋!?」
「りっちゃん!?」
美尋の幼馴染であるりっちゃんがいた。
「えーっと、えーっと、さっきまでサッカー部の助っ人で試合にいたはずなんだけど・・・」
「・・・とりあえずあっちの部屋いこうか」
自己紹介も仕切りなおしである。
「アディーだ」
「シェラナです」
「あ、ども。李琴です」
ペコリと李琴が頭を下げる。この適応力は美尋も見習いたい所の一つである。
「もう説明が面倒になりました・・・マスター」
「・・・仕方ないな、俺の番だ」
シェラナが入れた茶(?)を李琴の前に出す。
「まずはこれを飲んでくれ」
「わかりました・・・・・・うっ!?あああああ・・・」
飲むと同時に李琴の様子がおかしくなった。
「え、ちょ!アディーさん!?何飲ませたんですか!?」
突然の事態に美尋は驚き、アディーに聞いた。
「君の願いは、誰かの力になりたい――だろ?理由は何であれ自分の無力さに堪らなくなってこっちの世界に来てしまった」
「一体何を・・・?」と美尋が聞く前にアディーの言葉が走った。
「この子、今すごい重い病にかかっている。ニホンの病気は詳しくないが、長くないぞ」
「え・・・!?」
アディーの口から告げられた言葉――
李琴が・・・長くない!?
「ど、どういうことなんですか!?」
「どういったも何も、この子はあと1週間といった所か・・・」
「そんなの信じられるわけ・・・っ!」
アディーは深くため息をつくと
「この子の顔見りゃ分かるでしょ?・・・でも助からないわけでもない」
「・・・助かるんですか!?私なんでもします!」
美尋がそう言うと、シェラナが戸棚の中からカラオケに置いてあるようなマイクを持ってきた。
「このマイクを通った歌はどんな病気をも治す力があるらしい。何か言ってみ」
あーあー・・・
「声が・・・まるで違う。すごいキレイ・・・」
アディーはニッと笑うとシェラナを連れて部屋から出て行った。
「頑張れよ、勇者」
そう言い残して。