美尋勇者(1)
ピー・・・ピー・・・ピー・・・ガシャン!
赤いランプが点滅し、鉄製の蓋が開く。
白い煙と共に中から制服を着た少女が出てきた。
「・・・え?」
どう考えてもおかしい。
ついさっきまで学校から家に帰っていたはずなのに、と少女は周囲を見渡す。
「えぇえ・・・?」
まず目に入ったのは、近くに落ちているバッドで殴られただろう机が無残に転がっていた。
それだけではない、イスは原型を留めておらず、壁には無数の穴が空いている。
「どこのDV現場に迷ってしまったんだろう・・・私は」
数分が経過し落ち着きを取り戻した少女は現状を知るために部屋のドアノブに手を出した。
その時だった。
少女は背中に人の気配を感じ、その何ともいえない恐怖感に尻餅をついた。
「だ、誰か・・・いるん、ですか?」
恐怖感、それと同時に生まれる好奇心により少女はゆっくりと後ろを振り向く。
そこには全身真っ白のワンピースを着た9歳ぐらいの女の子が立っていた。
女の子は少女に対してクスッと笑うと
「運命はあなたと共にあり・・・さぁ幼き少女よ・・・世界を」
「うるせええええええ!!」
もちろん、少女は何も言っていない。少女が開けようとしていたドアが勝手に開いて一人の男が乱入してきたのだ。
「な・・・私の邪魔をするというのですか、マスター!?」
女の子も驚きの様子。
「午後1時以降は[ニホン人摘出マシン]は起動するなと言っておいたろ!それに今日は定休日だぞ!」
「う・・・だって・・・」
そう言うと女の子は泣きながら少女に抱きついた。
「え、えーと・・・?どういうこと・・・?」
頼りの少女も完全にパニック状態。男は深いため息をつくと
「あー分かったって・・・代わりに今回は一緒に仕事してもらうぞ、シェラナ」
シェラナと呼ばれた女の子は頷くと、半ば無理やり少女を引っ張って奥の部屋に入っていった。
「・・・色々説明する前に自己紹介をしようか、俺はアディー。こっちはシェラナ」
アディーと名乗る男は、ポンとシェラナの頭に手を乗せ自己紹介をした。
「私は・・・美尋です」
展開についていけず放心状態の美尋にシェラナが説明を始める。
「ここは、あなた達で言う異世界です」
突然の言葉に、美尋は唖然とした。
「え・・・異世界・・・?てことはあれ?魔法的な?」
「もちろん使えますよ、えいっ!」
シェラナの指先から炎が噴出され、アディーの顔に直撃した。
「熱っ!!いきなり何すんだシェラナ!」
「えへへー、さっきのお返しですよマスター」
いや今完全に顔燃えてたよね・・・と美尋にはツッコミする余裕すら無かった。
「とにかく、別に美尋さんに世界を救って欲しい!・・・なんて訳ではないのです。ただ美尋さん自身の・・・」
「あー!!」
シェラナが説明している途中、アディーが突然叫びだした。
「どうしたんですかマスター!?昨日みたいに毒キノコでも食べて死にそうにでも!?」
「アレはお前が作ったから・・・って違う!お前、ニホン人摘出マシンの電源切ったか!?」
・・・・・・シェラナの顔が一瞬で青くなる。
「切って・・・ないです・・・」
ピー・・・ピー・・・ピー・・・ガシャン!
あの音が、再び聞こえた。
美尋と書くべきか、ミヒロと書くべきか、
まぁ出番は2話か3話で終わりますけどね(笑