プロローグ
笑っている。
今日もあの子は笑っている。
でも、それは『偽り』だということを私だけは知っている。
だから私は、嘲笑ってやった―――…
プロローグ ユメの中でご挨拶
気がついたら、私は独りだった。
いままで……いままで、必死に取り繕ってきたのに…
『それ』はあっさりと壊れてしまった。
―――ダメだ。考えるな
「こんにちは」
―――ッ!!?
「そんなに驚かないで…?」
―――だ、誰だ…ッ
「私は―――」
汗ばむ手のひらにさらに力を込める。
もしもの時にそなえて
「『世界を救う少女』よ」
それはなんて軽やかな笑顔だったのだろう。
一振り目 『世界を救う少女』と『少年=彼女』
「―――ッ!!…夢…?」
ベットから起き上がり、周りを確かめてみる。
机―――押入れ―――時計―――ん…8時32分…
「あーーーーッ!!」思わず叫び声をあげる「学校!!遅刻するッ」
結局、学校についたのは一時間目が始まってからだった…
「おはよー柚亜。今日も遅刻?」
そういってカラカラと笑うのは、私の親友、瀬名亜梨亞
名前も可愛いけど、顔も可愛い。
性格容姿共に二重丸の亜梨亞はクラスでも人気がある。
ショートカットの髪にはウエーブが掛かっていて、くりくりした目は子リスみたいだった。
…それに比べて、私という奴は…
一応女の子で、胸もそれなりにある。
でも、髪は中途半端に伸びていて、男とばかりつるんでいるせいか、口調は男勝りで負けず嫌い。
おまけに目は徹夜明けで熊ができているしまつ…
「はぁ…」思わずため息をつく。
私の顔を心配そうに覗き込む亜梨亞に、思わず頬を赤らめてしまう。
「どうかした…?悩みとかあるんだったら、きくよ?」
「えっと…?」
悩みは特に―――あっそういえば!!
「柚亜?」
いや…でも、信じてもらえるか…?
夢の中で、『世界を救う少女』と名乗る、
幼稚園児ぐらいの女の子とあって会話をした―――しかも、見たこともない子供と……
「それって、私のこと?」
「!!」
おかしい。
なんだ…これ…空気が…いや、時間が止まってる!?
さっきまで聞こえていた教室の喧騒は音一つなく止み、目の前の亜梨亞も心配そうな顔をしたままだった。
「……。ぉ、ぉ~ぃ……ありあさ~ん…?」
やっぱり…
私が独り納得してると、後ろから盛大な笑い声が聞こえてきた。
「あははははッ。…やっぱりニンゲンは、愚か」
振り向きざまに右足を振り上げるそしてそれは「おっと…ッ」
「なっ!」よけた…?!私の右蹴りを!?……
「ねぇ」それはまるで独り言のようにも聞こえる口調だった「罪を犯したの」
開いていた窓から一陣の風が吹き込んで、綿菓子のようなふわふわの髪がなびく。
…甘い…匂い…、リンゴ…?
―――そう思ったのもつかの間、次に目を開いた時には見知らぬ地にいたのだった……
「嫉妬と傲慢の罪を、ね」