私の子供たち
妻子ある男の恋人たちが「子供がほしい」と言い出した。
無視するわけにもいかないが、妻がいる以上簡単に子供を作るのも難しい。
その男の考えた答えは…… 恋人たちに受け入れられるのか?妻にはばれないのか?
男友達を巻き込んだ計画は上手くいくのか?
結果は???
1.Bar MIYASAKA
駅を出て人通りの多い飲食店街を少し行った先を右に曲がる。5階建てのビルの階段を下りる
一枚の分厚い木で出来たドアに「Bar MIYASAKA」と手書きの白い文字が浮かんでいる。
彼はその重たそうなドアを押して開ける。右側に6個程度のカウンターチェアがあり、通路を分けた左側には4人掛けのソファとテーブルがが3つほどあり、うまく配置した彩光色のダウンライトが各テーブルをほど良く照らしている。通路の先にはトランプカードのマークが入っているドアが4つさりげなく存在を示している。
ここは男性限定の会員制のバー。女性は2名のバーテンのみでその二人も女性の色香を最低限としてバーテンに徹している。腕はもちろん良い。
ちまたではジェンダーと叫ばれているこの時代にしては時代遅れであると言っても良いが、それが良いという一定の客層があり会員制という限られたメンバーのみが使えるステータスからそれなりに知られている。男性のみという事から中には同性愛者もいるようだがオーナーの“他人に迷惑をかけないならば別に良い”という考え方からそちらの関係者も会員になっている様である。もちろんここでの誘いはNGである。入会ルールは簡単でどんなに金持ちでも社長や議員でもオーナーの許可が無ければ会員にはなれない。所作が重要視されるとの事である。もちろん会費は最上級である。と言う事は所作が良ければ悪人でも会員にはなれると言う事でもある。まあ悪人の定義も人それぞれなのでそれ以上はわからないことにする。
桜井は幸運にもこのバーが出来た当初からのメンバーで一番古い人間のひとりである。
「どこ?」と目で聞く。
白シャツに黒いジレ、黒パンツ姿のバーデンが「いらっしゃいませ。今日はダイヤです」と彼にだけ聞こえる声で短く伝えて来た。特定のメンバーは仕切られた部屋を予約する事が出来る。他人の目や耳を気にせずにゆっくりしたい人達のために4つだけ設けてある。もちろんイカガワシイ行為は所作の定義に反するので即出禁である。
真ん中の通路を歩き淡いライトで照らされているブルーのダイヤマークのドアを開けると馴染みの顔がいた。「久しぶり」と互いに小さく声をかける。
ここで飲んで近況の無駄話をするメンバーが3名、既に飲み始めていた。
ウオッカを飲んでいる 峰岡 浩一郎
スコッチのグラスを持ち上げた 川北 勇
ジン トニックをなめている 山崎 幸喜
そして今 座り心地の良いソファに座ったのが 桜井 恵吾
裏から音もなくバーテンがブランデーを持って来た。みんな酒の好みが違うのになぜか話していて心地いい関係だ。
あらためて乾杯と川北がグラスをあげると、峰岡が何に対する乾杯かはわからんがと言い
山崎がそんなのはいつものことだと軽口をたたく。
「どうしてた」と川北と山崎がほぼ同時に言った。
「そこそこ忙しくしていたよ」といつもの返事。
「ところでこのメンバーに招集をかけたのは何かあったのか?」と峰岡が聞いてきた。
「大した話ではないんだけど、みんなの意見を聞きたい」と桜井が座りなおした。
桜井と子供
桜井 恵吾 32才 妻 静江32才 長女 一枝 1才
鴻池総合病院の心療内科医で全日医科大学の準教授もしている。
結婚は29才の時 、妻は鴻池総合病院の医院長 鴻池 純一の長女。
そんなことから鴻池総合病院に勤めている。
ちなみに副医院長が静江の兄の和樹。
桜井が「みんなも知っていると思うけど、今、俺は純子と光の二人と付き合っているだろ」と言うと「奥さん含めて3人も相手にしているとは精力絶倫だね」と峰岡がちゃちゃを入れてきた。「お前の様に5人とかじゃないけどな」と切り返す。
「こっちは、独身だから何人と付き合っていても問題ないぞ」とさらに切り返す。
「この前、誰かと誰がが鉢合わせたとか言っていたじゃない?」と川北が参戦。
「ああ、あれは運がわるかっただけでその後……まあ何とかなったから」と若干トーンが下がる峰岡。「まあまあ、桜井の話に戻そうぜ」と冷静に山崎が収めた。
「ありがとう。でその二人が二人とも俺の子供が欲しいと言い出して……」と話始める。
妻の静江が昨年子供を産んだ。現在絶賛育児中である。純子と光とは静江に子供が出来る前から付き合っていた。2人とも体の相性も良く妻と自分以外に女性がいるのかどうかなど気にしていない。それに妻は二人の事を知らないようなので平和に3人と付き合っている。妻の妊娠中も安定期後は愛し合ったし現在も良く体を重ねている。純子も光もそれぞれ時間を合わせて愛している。
がこの前二人がふと「赤ちゃんが欲しい」と言いだした。それもほぼ同じ時期に。
吉川 純子
「起きてるの?」と吉川 純子が横から頬を突っついてくる。
「ああ、そろそろ帰らないとな」と天井を見ながら返事をする。
「もう少しゆっくりしていけば良いのに」と言いながら体を寄せてきた。腕に柔らかい胸が当たる。「そうしたいところだが、帰らないとな」と言いつつも胸の感触を楽しむ。
「そんなこと言うなら、こうしちゃう」と私の息子を握りしめた。
さっきまで元気でひと暴れして今はおとなしくなっていた息子がまた元気になる。
もう一度気持ちの良い汗をかき再び彼女の横に仰向けになる。粗い呼吸で彼女の大きな胸が上下する。「あなたの子供がほしいな」ふっとささやいた。
「俺の子供がほしい?」と繰り返す。
「うん、何かほしくなっちゃった。あ、奥さんと別れてと言っているんじゃないのよ。
ただ、私があなたの子供を産みたいなと思っただけ」と何気なく話す。
「あなたとの関係も嫌いじゃないし、結婚自体……うーん 田舎の親はそろそろ結婚したら?みたいな事を言って来るけどあまり興味ないし。でも確かにこのままだとこれからどうしようかって考えちゃって」とこちらを向く。前髪がおでこにかかる。
桜井としてはこのままでも何も問題は無いし、どちらかと言うとこのままが良いと思っている。もし何か起きたらその時に考えれば良いとも思っている程度なのでこれからどうしようかと言われる事自体が想像の向こうにあった。「本当に子どもが欲しくなったら言ってね」と返すと「別に生活の面倒を見てもらう気は無いから安心して」と気を回してくれた様だ。
桜井は何かサポートは必要だろうと思ったが、彼にはそんな余裕はない。
現代は医者が金持ちであると言うのは一部の医者だけである。
親が医者でその後を継ぐ様な恵まれた子息は当然金持ちだろう。それに対して桜井の様に普通の家庭から医者になった様な者は今の収入は良いかもしれないが金持ちとは違う。彼は大学での研究もやりつつ医局へも務めており、女性との付き合いもあるから(最後のは自業自得だが)入ってくる分出ても行く。
妻の実家が病院とはいえ長男がしっかりと後継者としているので外様である彼が入る隙間は無いし彼自身そんな面倒な世界へ入ろうとも思っていない。桜井の妻も今の生活に不満は無い様子なので自分の好きにしたいと思っている。
宮岡 光
数日後、同じく宮岡 光が同じ事を言ってきた。
宮岡 光は現在大手製薬会社の研究職の正社員として働いている。卒業時に就職先が中々決まらなかった子で優秀だったがなぜかお祈りメールばかり貰っていた。最終的には伝手も使って大手製薬会社へ送り込む事に成功。優秀だったので送り込んだ先からもお礼を言われたぐらいのWinWinだった。どうも決まらなかった理由は彼女の希望が研究職だったためと、彼女の外見が大変女性的であったことから中身の優秀さよりも外面の女性の性的な視点で判断されて落とされていたのだろうと思われた。逆差別とも言えるかもしれない。その結果彼女はお祈りメールばかりを受け取って心が折れそうになった。そこで担当教授が私に依頼し診療と相談を始めたのがきっかけだった。こっちは、心療内科医なので症例の一つとして診ていたつもりだったがどうも向こうは違った様だ。そんなことから就職後に仲が深まった。
今、宮岡 光がうっすらと全身に汗をかいている。ベットに仰向けになり両手両足を力なく広げている。柔らかくしまったお腹が上下に動くとそれと同じ様に形の良い乳房が揺れる。
「一休みしよう」と光の横に寝る。光は上を向いたままである。
「子供」と光がふっと言う。
「なに」
「私、子供産みたくなっちゃった」としっかりした声で言った。
デジャブではないが、最近聞いたワードだと思った。意外と冷静に聞き取れるようだ。
「あれ、驚かないんだ」とこちらを向く。体ごとひねったので大きめの胸が下向きに色っぽく変形する。
「いや、驚いている」と見返す、「急にどうしたの」とさらに言うと
「特に理由はないんだけど……なんでかほしくなっちゃったんだよね。あ、結婚とかは考えてないから恵吾さんの家庭には影響しないと思う」と言ってきた。
影響はあるだろうと心で突っ込むが「そう、結婚はしないで子供だけほしいのか。シングルマザーという事?」と聞くと「シングルマザーっていうか何かその言い方もしっくりこないんだよね。それに誰の子供でも良いっていう事じゃなくて恵吾さんの子供がほしいっていうのかな?」と疑問文で聞いてきた。
聞かれてもこちらとしては答えようもなく、かつ純子と同じことを言ってくる光にちょっとだけ無言になった。
「ごめん悩ませる気はなかったし、今ふと思った事を言っただけだから取り合えず気にしないでいてね」と言って頬にキスしてきた。
取り合えず気にしないでと言う事は彼としては気にしておく必要があると言う事で
「また、子供が欲しいと思ったら言ってね」とどこか覚えている言葉をもう一度言った。
「わかった、その時はよろしくね」とまたキスをしてきた。
子供が欲しいわけではないが光の上に覆いかぶさり唇を重ねた。さっきまでと少しちがう味がした。
「へー、ふたりが同じ時期に子供が欲しいって言うなんて偶然かね?」と峰岡。
「偶然だと思うけど、勘ぐっちゃうよね」と桜井。
「まあ、奥さんに子供が生まれたから少し意識したのかな?」と山崎が考えながら言った。
「わかんないな、別に結婚はしなくて良いっていうから我が家がどうこうなると言う事は無いと思うけどね」とブランデーを口に入れる。喉が気持ちよく刺激される。
「いや、いや、シングルマザーが二人ともなると桜井の家にも影響するだろう」と峰岡
「その時は、ヘルプね」と冗談気味に言う。
「それは無理、自分のヘルプでいっぱいいっぱい」と即時に返答された。
「結婚はしなくて良いんだ。」と川北がぽつっとつぶやく。
「親からのプレッシャーはないのかな?」とさらにつぶやく。
「あるでしょ。それをかわしているんだと思うよ」と山崎。
「でも子供が生まれたら、相手は誰とかいってくるでしょうに」と川北。
「まあ、それもあるね、相手に奥さんがいる事が分ったら実家はひっくり返るかも」と冷静に山崎が言う。
「ほら、桜井の家に飛び火する」とふんぞり返って峰岡が言い、ウオッカを一気に飲む。
「それも加味して産むんでしょうね」と山崎。
「親のプレッシャーなんて半端じゃないからな」と川北。
「俺は山崎と会えて平穏に暮らしているけど、親には言っていないから彼女は出来たか?結婚はするのか?なんて会ったらいつも言われる。」
「会ったらって親の事務所で働いていたら毎日ってことか?」と桜井。
「ほぼ、そうだな」とあきらめ顔で言う。
「私も同じ状況だね」と山崎。
山崎と川北はパートナーである。峰岡と私と他に数名しか知らない。
彼らはここの会員になる前からの関係でここへは4人との憩いの場として来ている。
山崎 幸喜
「私なんて親が色々と見合い写真を持ってくるけど、この風体なので大体向こうが断るから私としては特に問題はないんだが、そろそろ親も探すのに疲れてきて自分で探しなさいとキレ始めたよ」と山崎が自嘲気味に言う。
山崎 幸喜;山崎会計事務所(父の事務所)の公認会計士。小学校から柔道を習い大学卒業まで続けた有段者である。185Cmの身長に90kg程度の筋肉質体系 見た目はごつく男くさいが神経は細かく冷静な判断をするので仕事ぶりは良く親の会計事務所に所属しているが自ら顧客も増やしている。 川北のバートナーである。
「ねえ、幸喜、本当に誰か好きな人居ないの?」と山崎の母 友恵がお茶を出しながらため息交じりで言う、ここは山崎会計事務所。幸喜の父である真一の会計事務所である。
父親がここで仕事を始めて母親はそれを手伝いながら幸喜と妹を育てた。その事については感謝している。妹は甘いマスクの父親似でいい男を見つけてさっさと結婚してしまった。
残るのは私だけで良いか悪いかはべつとして母親似のわりと切れ上がった目で見ようによってはそれなりの顔ではあるが何といっても体がごつい。小学校から柔道を始めて高校、大学ではそれなりの大会で優勝もした。その結果、今はやりの風体ではなくガッチリした体形で
遠くから見ても質量を感じる。「遠近感をなくす男」と言われたこともあった。
ただ、昔から父親の仕事を見てきていたので気がついたら同じ仕事についていた。
風体の割に細かい事を確認するのが得意で自分でもこの仕事が合っていると思っている。
「色々なところに頼んでお見合い相手を探していたのよ。大体写真で断わるのも失礼だと思うけど中々会うところまでいかないのよね」と言いながら私の前にまた一枚の見合い写真と思われるものを置いた。「この人は、一度会っても良いと言ってくれたからどう会ってみない?」と見せる。清楚な感じのいかにもという写真だった。「あなたより3つ下なの、大学出てから今は事務員をしているって、あなたの写真を見せたら会っても良いと言ってくれたの。だいたい、あなたの写真を見せると半分以上はそこまでで会ってくれる人はまれなんだから」と言うが、今まで会ってくれた人はいないが正解である。だから今回は会うというのだけでも奇特な人ではと思う。まあ、実際にあった時のにそこでおしまいになるのは想像できるし、こちらはもともと興味がないからそれで良いと思っている。親孝行のつもりで会う事にした。
鶴見 清美 さんに会ってみると今風の可愛い系の女性でこんな子ならば他にボーイフレンドもいるだろうと思えるほどの子であった。良くしゃべる子で会っていた間ほぼ彼女がしゃべっていた。こちらは相槌を打っていただけである。ただ、ちょっと気になったのが我が家の事をよく聞いてきた。まあ家族構成はしょうがないとしても、事務所はいずれ継ぐのかそれとも独立するのかなど。初めて会うならまず本人の事を聞くか話すのが一般的ではと感じた。まあ、どちらにしても相手に興味が無い事には変わりはない。ランチを食べて別れる時に申し訳ないけど今結婚する気はないとその場で伝えた。彼女は鳩が豆鉄砲を受けた様に目を丸くして固まってしまった。向こうから断られるとは思わなかったのだろう。深々とお辞儀をしてこの場は分かれた。まあこれで親の顔もたったであろう。もしかしたらつぶしたかもしれない。分かれて5分後に母親に断りの連絡をするように伝えた。次の日、母が事務所で「お相手にお断りの連絡を入れたら向こうは乗り気だったって言われちゃって困っちゃった。最後に結婚する気が無いなら最初からお見合いなんてしなければ良いじゃないとまで嫌味をいわれたわ」と少し睨みながら言う。父が「まだ結婚する気が無くても相手ぐらい探しておけば良いじゃないか、今は同棲するということから始めるのも多いというから」と以外と今風な事を言う。
「そうね、あなたが自分で探してきなさい。美咲なんて自分でさっさと見つけて結婚したんだからあなたもそうしなさいね。私もう疲れたから」とやっと諦めてくれた様だ。
これでしばらくは言われないだろう、きっと。と希望的な考えを一瞬だけ持ったが何か考えておく必要があるなぁと考えなおした。
川北 勇
「うちは、自分で言うのもなんだけどほらこの顔だから周りから色々と紹介してとか来るけど、うちの両親は大恋愛で結婚したのでほぼブロックしてくれて助かっているんだ。ただ、そろそろ誰かいないって遠まわしに聞かれているのも確か」と川北がスコッチを口に入れた。
川北 勇 29才 弁護士 剣道有段者、見た目は美青年だが、結構やんちゃ 山崎とパートナー身長180㎝ちょいでスタイルが良く顔も美男子の部類に入る。モデルも出来るほどのレベルで大学時代にファッションモデルを遊び半分でやっていた。と言ってもナヨナヨしているわけでは無く小学校時代から剣道を習っており有段者。小さいころは赤い胴を着けて近所からは赤胴鈴之助と言われるほどだった。高校、大学時代はその容貌と合わせて剣道大会に女性がつめかけるほどの人気者であったが美人にも振り向かず剣道一筋の「氷の剣士」と言われたほどだった。蓋を開ければ女性に興味がなかっただけなのだが……。父親と母親が設立した川北 弁護士事務所に所属する弁護士、主に企業問題全般を受け持っている。
「また、メールが来ている」と母がうめく。
「仕事が来るなら良い事じゃないか」と父。
「違うわよ、また勇を紹介してというメール」とふてくされ気味に言う。
「またか、増えて来たな」と父も迷惑気味に言う。
勇が事務所で本格的に仕事を始めたら顧客や顧客の関係者の娘たちが親や知り合いを使って勇に会いたいと言う依頼が増えた。学生時代にやっていたモデルはやめて、今は弁護士業務に集中している。しかし本人の思う所とは異なり周りは独身で弁護士でこれだけ良い男と言うのを見逃してはくれない。いくつかの会社は顧問弁護士契約を肴に勇を担当にしろと言ってくるところもあるが、そうゆう所は大体大した企業ではないし、近いうちにつぶれるか吸収合併となる。実際幾つかの会社は吸収され吸収する側の顧問弁護士として立ち会った事も有る。その時の相手方の愕然とした顔は中々のものだった。
「まあ、適当に答えておきましょう」と母が言うと
「そうだな、私たちが紹介しても長続きはしないだろう。結局自分で見つけてこないとダメな事は私たちが経験しているから」と父が元気に言う。
父と母は大恋愛で結婚したと聞いた。どちらも弁護士で何かの件でぶつかったらしい。とことんやりあったらしいが、結果は両方の依頼主が手を引き和解となった。その後残念会を二人でやったのが始まりらしい。こんな普通ではない経験を元に恋愛で結婚すべき=相手を自分で見つけるのが大切と刷り込まれている様である。よくよく考えると両親は恋愛というより仕事上の付き合いから始まったというべきではと思っているが、そんな事を言えば今落ち着いているこの話がどこから再燃するかわからないので触らずにいる。川北としては相手はすでにいるという事でもあるので山崎と同様対応に頭を悩ませている。
峰岡 浩一郎
「川北は見た目が良いからモテるだろう。たまたまこの前彼女と一緒の時に会ったんだけどその後その子がお前の事を色々と聞いてきたぞ。」と峰岡。
「山崎との関係は言ってないよね」と語気が上がる。
「言うわけないだろそんな事言ったら興ざめだ。でも何回も色々と言ってきたからベットで黙らせた」とまたウオッカを飲む。
皆、結婚には苦労しているようである。桜井は自分が割と簡単に結婚出来たのが奇跡ではと思った。今、峰岡は5人と付き合っている。もちろん全員とベットを共にしている。彼女達は他にも付き合っている女性がいると言う事をわかって付き合っている様で峰岡のどこがそれほど魅力的なのか聞いてみたことがあったが「そりゃ、ベットでの付き合いが魅力的で離れられないんだろう」と冗談か本音かわからない事を言っていた。前にたびたび妻と一緒に会うことがあったが「いつも違う彼女ね」と妻はあきれた様に言っていたのを覚えている。
仕事は株取引だが、それ以外にマンションを1棟持っているらしい。仕事はわりと自由なようだが為替が大きく動き株も大きく動いた時はしばらく顔を見せないこともあった。
後で聞いたら約一か月ほどずーっと画面を睨んでいたとの事。まあ、やはり稼ぐと言う事は大変な事である。ちなみに1ヶ月ほったらかした女性は1名を残してほぼ去って行ったらしい。
その後また新しい女性と付き合いはじめて今でも多少の入れ替えはあるようだがいつも5名ほどと(本人曰く4人プラス1と訳の分からない言い方であるが)楽しんでいるらしい。
「山崎、見合いで向こうがOKしたら結婚すれば良いじゃないか」と峰岡。
「バカ言うんじゃないよ。結婚したら次は子作りというステップがあることを忘れていないか?私には川北がいるんだから無理。ただでさえ女性に触るのが嫌なんだから」と山崎。
「同じく、でも僕は女性の裸を見てもきれいだと思えるので一緒にいるのは大丈夫だけど子作りは無理だね」と川北が続く「ああ、僕も見るだけなら特に問題なし、特にきれいな裸は芸術と同じ感覚で見れるし」と山崎がさらにかぶせる。
「仕事もしっかりあって、親の仕事を継ぐ事も出来て他人から見たら将来有望なのにそいつらが後継者を作らないって言うんだから大変だ」と峰岡が言う。
「後継者を作らないとは言っていないよ、養子制度もあるからそこはもう少し先になったら考えるよ。それより峰岡は儲けた財産を誰かにって考えないのか?」と山崎が問う。
「ああ、親はもう鬼籍に入ったし兄弟はいない。株もいつ破産するかわからない商売だから財産は無いものと思っている、持っている不動産は株を辞めても食っていける程度のセフティーネット的なもんだよ」と珍しく山崎以上に冷静な顔をして答えた。
「女性陣はどうする?」と川北
「うーん、その時考える。前は自然と離れて行ったのがほとんどだったからおんなじかもね」と過去を思い出すように言った。
「前は一人残ったって言っていたじゃないか」と川北
「そうだな、また残ったらあいつにくれてやるか」と顔を思い浮かべる表情でつぶやいた。
川北と山崎の出会いは、仕事関係が始まりである。
ある会社での横領事件で弁護士である川北が会計士の山崎の事務所に訪ねて行った時、事務所には担当であった山崎の父親が不在で幸喜が対応したのが初めての出会いであった。
お互い最初は「何だこいつ」という感じだったと後からわかった。
川北曰く、幸喜は見た目がごつく会計には体力はいらないと最初は思ったとのこと。
山崎は勇に対し何だこの色男は不倫とかの弁護が専門だろうとか考えていたらしい。
しかし、よくよく話すと幸喜は異常に繊細で細かいところまで意識を張り巡らして仕事をしている事がわかり、勇は姿に似合わず剛毅なところがありとことん追求するという意思を感じたそうだ。最初の印象が悪い分、後の良い評価が増幅されプライベートでも飲むようになった。
そして、飲んでいる内に互いに相手に好感を持つようになる。お互いに相手が女性より男性が好きであるとわかって今の様な関係に至った。
酒の追加と軽いおつまみが届いたのでお互い少し飲む。しばらく個々に何かを思い考えている静かな時間が過ぎる。この時間をお互いに許せる仲間だから集まって飲める。
沈黙が心地よくブランデーの香りとスコッチの香りが程よく室内を潤す。
桜井はブランデーグラスを回して香りを立ち上げながら、純子と光の言った事を考えていた。
二人とも子供がほしいと言っていた。でも結婚はしなくてもいいと言っている。もし、二人が子供を産んだら父親がいない事になる。彼女達はそれで納得できるかもしれないが、生まれた子供たちが大きくなったら父親がいない事をどう思うだろうか?もちろん、私が認知をしても良いのだが、後々我が家にも問題となる事は避けたい。都合の良い話だがやはりこの問題は上手く避けたい。とブランデーと同じく堂々巡りをする。桜井は父親を知らない。物心がついた時には母と彼だけだった。母は看護師をしていたのでそれなりの生活はしていたが、高校までは我が家に父親がいない事が不思議だった。大学入学時に戸籍を入手したが父親の名前は無かった。自分の中で何か物足りないものを感じてしまった事を今でも覚えている。本当の父親でも養子での父親でも良かった。父親の名前がそこに無い事が何か心にぽっかりと穴が開いている様だった。母は「あなたは私の子、神様との子供よ」と言っていて、小学校までは信じていたが流石に中学になればどうやって子供が生まれるかぐらいはわかる。そんな学生時代をすごしたが、心療内科を専攻したおかげでこのような環境が心にどう影響するのかを客観的に理解出来た気がしている。あくまでも気がしているだけで本当の答えはわからないのだが……。
2.妙案
「子供には父親も必要だよなぁ」とぼそりと独り言のように言う。
「確かに、母親だけでなくて父親も必要だと思う」と峰岡が小さく同意した。
「峰岡、もしお前の彼女が妊娠したらどうする?おろさせる、産ませる」
「そうだな、まずは彼女にどうしたいか聞く。そしてその希望を出来るだけかなえてやる」と割とすぐに答えた。
「へー、ちょっと意外。おまえならば、おろせって言いそうだけど」と桜井。
「あまり、俺を見くびるなよ。少しは考えているんだからな」と言い返す。
「少しは考えているんだ」と桜井
「ああ、すこしわな」と返す。
「じゃあ、二人、いや三人が妊娠したらどうする?」とさらに聞く。
「難しいなぁ。でもやっぱり彼女達の考えを聞いてからだな。もし生みたいなら結婚は出来ないけれど認知はするだろうな」と天井を向いて答えた。
「難しいよなぁ、でも独身だったら認知してもそんなに面倒な事にはならないかもな」と桜井。
「うん、俺もそう思う。で、結婚している桜井の場合だと将来的にも色々と問題が起きそうだな」と心配そうに言った。
「やっぱり、そうなるよな」とやはり答えが無いと思いながらソファーに沈んだ。
「父親がいればいいんだよなぁ」とぼそりと峰岡が言う。
「父親がいれば良い……か……うん……そうか父親がいれば良いんだ」と桜井がひらめいた様に言う。「別に本当の父親でなくても良いんだよな」と続ける。
「川北、山崎 お前ら結婚しないか?」と桜井が体を起こして二人を見て言う。
「何言っている、俺たちが結婚できるのは多分海外に行くか、日本だったら数十年か数百年後だぞ」と二人そろって言ってきた。
「違う違う、お前らが結婚するんじゃない」と少しゆっくりと返事をする。
「今、お前ら結婚しないか?って言ったばかりだろう」と少し川北の語気が上がる。
「悪い悪い、説明がぬけた。お前ら二人にそれぞれ結婚してもらうのはと言う事で」と一息ついて「相手は俺の彼女の純子と光」とゆっくりとしゃべった。
「え、何それ」と二人と峰岡までも一緒に声を出した。
「お前たち 女性には触りたくないけど跡取りが必要で養子でも良いと言ってたよな」
「うん」合わせた様に川北と山崎が頷く。
「たまたまかもしれないけど私の彼女達が私の子供が欲しいと言っている、だけど私との結婚は考えていないとも言っている」と桜井。
「そう言っていたとお前から聞いた」と川北。
「そこでだ、純子と光が納得すればの話だが川北と山崎がそれぞれと結婚すればお前らの親も安心するし、跡取りも出来るはずというわけ」と話を締めた。
「まあ、俺と純子や光の子供だけど戸籍的にもお前らの子供になるし、実際に養子でも良いと言っていたんだから戸籍上も問題ないからもっと良いだろう」
「法的にはどうなんだろう専門外だからよくわからんが」と川北。
「でも全員が納得出来て黙っていればいいのかも。浮気して出来た子供を夫に隠して自分達の子として戸籍に入れる奴もいるしな」と危ない事まで言う川北。
「面白いって言って良いのかわからないが一応筋は通るかもな」と山崎が頷く。
「面白そうだな」と峰岡がソファから腰を前にずらした。
「面白がるのは良いけどこのメンバー以外絶対に言うなよ。特にお前の彼女達に寝物語的に喋るんじゃないぞ」と桜井が言うと
「わかってるって、そんなに真剣な顔を見るのは久しぶりだな」と言って再度ソファに深く腰を下ろした。
「でもこの話は俺にも随時教えてくれよ。第三者的な見方をしてやるから当事者だけだと色々と見落としが出る可能性もあるし」と今度は割と真剣な顔で言ってきた。こんな時のあいつは信用できる。
「それじゃ今度どこかで会ってもらうよ」というと
「別々にな」と峰岡が言ってきた。
「二人一緒だとどちらがどちらを選ぶかなんて話も出かねないから、その辺は桜井が相手を決めろ、川北も山崎も手を触れないならどちらでも良いだろう。」
「でも同じ家に住むとなればある程度の相性が合っていないとだめだろう」と山崎が返す。
「それも込みで桜井にまかせるのが良いだろうよ、会った時に大体わかるだろし」と他人事なので気軽な感じである。
「それに結婚するなら親からマンション購入ぐらいの援助は期待できるだろう。二人で近くか同じマンションを買えば行き来も楽だし良いんじゃねい」となかなかいい所をついてくる。
「私も行くから家から近い所が良いな」と桜井が言うと
「近いとダメだろ、奥さんに目撃される可能性があがるぞ」と真っ当な指摘。
「確かに」と納得する。
「マンションでの寝室を別々にしとけばお前も泊まりに行けるから都合がいいだろう。実際今お前の家は別々の部屋に寝てるんだろ」とたたみかける。
「ああ、俺の勤務が変則で遅く帰ったり早く出たりするんで分けたし、今は一枝もいるから」と何故か言い訳するように答える。
「愛し合う時はどうするんだ」と峰岸が嬉しそうな目で聞く。
「大体は一枝が寝てから私の部屋だな」とさらっと答えるが少し恥ずかしい。
「子供が出来ると夫婦は少し遠くなると聞くがな」と残念そうに言う。
「まあ、うちはまだ大丈夫だよ」と少し優越感に浸る。
「ほかに二人も愛しているから大変だよな」と峰岸とニヤリとする。
「お前よりは大変じゃないよ」とやり返す。
「話を戻そうぜ」とまた山崎が軌道修正する。
「桜井が勇か私のどちらかとお前の彼女のどちらかを会わせる。そして4人いや5人が了解出来ればこの話は成立すると言う事かな」と山崎がまとめた。
「そう言う事だな、予定を立てるから少し時間をくれ連絡する」と私が言いブランデーのお替りをオーダーした。
「なにか面白い話になって来たかな」と峰岸
「かもな」と後の3人が追いかける様に言った。
桜井 恵吾と静江
玄関ドアを開けるとリビングが明るかった。
「ただいま、遅くなりました」
「おかえりなさい、意外と早かったわね」と静江が娘の一枝に母乳をあげながら言った。
「ああ、今日はいつものメンバーで飲んで来ただけだから、もう寝たのかとおもったよ」と冷蔵庫からペリエを出しコップへ移しいっきに半分ぐらい飲む。喉に炭酸がきつい。
「かずえが目を覚ましたのちょうどお腹が空いたみたい。今日実家へ行ってたからちょっと時間が狂っちゃったかな」と大きな乳房を露わにしている。
娘が一生懸命に飲んでいる。「シャワーあびるわ」と浴室へ向かう。
「かずえが飲み終わったら、行っても良い」と後ろから声がかかる。
「ゆっくりね」と柔らかく返事をする。
しっかりとからだを洗って部屋へ行くと既に静江が待っていた。
「一枝は?」とベットの横に並んで座る。
「げっぷしたら、満足そうにすやすやと寝たわ」と静江が寄る。
先ほどとは違い、シルクの半透明のキャミソールだけを着けている。肩から脱がしそのままベットに倒す。一枝を生んで1年ちょっとになるが努力の成果が出ているようで体の線が崩れていない。胸は母乳のせいか最初のころよりも二回りは大きくなっている。
昼は母親らしい姿が多くなったが私との間はまだまだ可愛い女である。
お互い満足してベットで仰向けになる。
「気持ちよかった」と静江。
「わたしもだ」と恵吾。
「もう一度する」と恵吾。
何も言わずに私に覆いかぶさってくる静江。今度は静江が上になってそのまま達した。
「それじゃあ、お休みなさい」と彼女はベットから出て浴室に向かう。今日も満足した様だ。シャワーの音が消えて向かいのドアの締まる音がした。一枝と寝ている部屋だ。
「夫婦別の部屋で寝るか……」と頭のなかで言って今日の会話を思い出していた。
向かいの部屋が静まったころ私がシャワーを軽くまた浴びる。「部屋ごとにシャワーもつけるのもいいかもしれない」と体を拭きながら思った。事が進んだら話してみるかと眠りについた。
峰岸と京子
Bar MIYASAKAを出て少し歩いてから携帯の京子の文字を押す。コール2回で出た。
「コウちゃん、昨日ぶりね」とはきはきした声が返って来た。
「コウちゃんはよしてくれ。ところで今から行って良いか?」と聞く。
「あら、じゃあ峰岸さんかな。今運転中で後10分ぐらいで到着する予定だけど、どこかでピックアップする?」と変わらないトーンが聞こえる。
「いや、ゆっくり行くから家で迎えてくれないか」と言うと
「じゃあ、家で待ってるからゆっくり来てね」と言って切れた。
切れた画面を見た後に携帯をしまい。まだ人通りの多い界隈をゆっくりと抜けていく。
繁華街と住宅街のはざまにある15階建てのマンションが目に入る。
エントランスに入り部屋番号を押す。
返事も無く磨かれたガラスの自動扉が開く。エレベータに乗って部屋の前に着いた。
チャイムを鳴らす。安アパートのイライラする音ではなく、何とも優雅でかつ耳ざわりが良い考えられたメロディーが部屋から漏れてくる。ガチャリとした音とともにドアが開き見慣れた美人が顔を出し迎い入れた。玄関で靴を脱いでいると「いらっしゃいが良い、お帰りなさいが良い」と茶目っ気たっぷりに言う。
「そうだな、お帰りなさい、いらっしゃいというのが良い」とこちらが返事をすると
「じゃあ、お帰りなさい、いらっしゃい ちゅ」とほほにキスをしてきた。
リビングに入り上着を脱ぐ。もう見慣れた2LDKのマンションだ。2LDKと言ってもリビングとダイニングが大きく作られていて余裕がある。
「私も帰って来たばっかりだから、まだ着替えていないのちょっと待っててくれる」とリビングを出て行こうとする腕を捕まえて
「着替えなくてもいい」と引き寄せてキスをする。玄関でのキスとは違い長くそして舌を絡ませ合う。唇が離れると「どうしたの今日は」と京子が尋ねる。
「ちょっと、友達と飲んでたら京子が欲しくなった」と言って彼女をくるっと回す、その拍子に彼女の両手は壁に着き尻を男に突き出す格好になった。
そのままスカートがめくられ、紺の小さい下着が露わになった。ストッキングはニーハイタイプでガーターベルトは無い。小さい下着はすぐに足元に落ちた。
「もう、いきなりなんだから」とシャワーを浴びて着替えた京子が浩一郎にふてくされた様に甘えて言う。同じくシャワーを浴びて部屋着に着替えた浩一郎がバーボンを二つもってリビングに座り一つを京子に渡す。「京子の仕事着を見たらなんか後ろからしたくなった」と照れずに言う。「服が皴になっちゃうから着替えてからと思ったのに、でもスーツ姿も良いでしょ」と少し自慢げに言う。「ああ、いつもと違ってよかった」と一口飲む。
「まあ、私も良かったからゆるしてあげましょ」と同じく一口飲む。
「それはありがとうございました」と軽く頭を下げてまた飲む。
「ところで急に来るなんて珍しいわね」と話を変えた。
「特に何かという感じはないんだけど、今日いつものメンバーで飲んでて出たらふと会いたくなったという感じかな」
「ああ、良く聞いている女性禁止のバーのメンバーの事ね。男だけで飲んで面白いの?」
「そうだな、女性には言えない話が出来るのが良いのかも」と思い出した様に言う。
「フーン、でもその後に思い出してくれた女性が私というのは少しうれしいかも」とニコッとする頬が赤く見えるのは持っているバーボンの色が反射しているだけではないだろう。
「今日は誰とも約束してなかったんだ?」と目を濡らす。
「そういう日もあるのさ」とバーボングラスを見る。
「フーン」
「あした早いの」と峰岡
「早くは無いけど仕事はあるわ」と京子
「これ飲んだらベット行こうか」と峰岡
「うん」とだけの短い返事。
リビングの照明が少し赤みを帯びた気がする。
山崎と川北
川北と山崎が並んで歩いている。もう少しで家に着く。
「今日は桜井が面白い事を言ったな」と川北
「うん、具体的にどうなるかはこれからだけどな」と山崎
「でも今日の話が全部上手く行けば、家から言われている事が無くなってけっこう上手く行くことになるな」と川北
「上手く行くかはわからないけど何とかなるかな」と山崎
「山崎、お前少しネガティブすぎないか」
「そういうお前こそ楽天的すぎるだろ」
いつもの二人の会話である。川北は根っからの楽天家で何とかなるが口癖、対して山崎は慎重派で一つ一つ確認するような性格である。
そんな二人だから上手く行っているのかもしれない。
「どっちにしても、桜井の連絡待ちだな」と二人で頷く。
マンションについた、エレベーターで4階に上がる。
「明日は朝から打ち合わせがあるから今日はここで」と川北
「わかった、また連絡するし連絡して」と山崎
「それじゃしいのでいつでも行き来できる隣にいる。
結婚してマンションを買うならやっぱり隣同士が良いかなと二人とも思った。」と二人とも玄関の鍵を開けて入る。賃貸マンションを隣同士で借りている。
一緒に住むにはまだ世間の目(親の目)が厳
3.彼女達と
宮岡 光
宮岡 光が小さく手を振って来た。
私は約束した時間より10分前に着いたのだが、彼女はすでに席に座っていた。
「待たせた?」
「いいえ、私の方が早く来すぎた様です」と肩をちょっとすぼめる。「今日は大学だったんですよね」と何か探りを入れる様な目つき。
「そう、授業とレポート受け取り」と事務的に答える。
今日は大学の講座終了後、4年生のレポートを見ていた。
「思い出すなぁ」と光が上を見上げる。
「上はライトがあるだけだよ」と意地悪する。
「べつに上を見ていたんじゃなくて、昔の事を思い出しただけです」とテーブルをコンコンと軽くたたいて口をつぼめる。ウエイターがやってきてワインと食事をオーダーする。
コンコンとドアをたたく音がした。
「どうぞ」と返事をすると「失礼します」とドアを開けて一人の学生が入って来た。
准教授として私に提供された部屋は8畳ほどの広さで、中央部分に簡単な会議用の机と椅子、その奥に窓を背に仕事用の机が置いてある。壁はレポートや蔵書が入っている棚となっていてそれなりのらしい部屋だ。
椅子を巧みによけながら机の前に立ち「この前のレポート提出します」と両手で差し出す。
が、私は受け取らない。「提出期限はいつだったっけ?」と私。
「先週末です」間髪入れずに回答する学生。
「と言う事は、提出遅れと言う事ですので受け取らないのが基本ですよ」と冷たく返事をかえす。「そこを何とか」とさらに深くお辞儀しつつ手をのばす。
「遅れた理由は?」
「色々ありまして」
「色々ね」
「はい、色々です」と腕は延ばしたまま顔をこちらに上げにこりとする。上半身がほぼ水平になっておりブラウスの間から大きな谷間と赤いブラがのぞいている。
「ならしょうがないな」と片手で受け取る。
「よろしくお願いします」と嬉しそうに体を元に戻すと勢いで大きな胸が上下に揺れた。
「だらしないぞ」と言うと
「すみません。また大きくなった様で」と胸を両手で覆う。
「そこじゃない、期日を守りなさいと言っているの」とまた言い返す。
「あ、でも視線はここだったでしょ」
「返すぞ」とにらむ。
「あ、はい、すみません」とニコッとする。
「結果は掲示板サイトを見てくれ」と言うと「わかりました、失礼します。」とはきはきと言いながらもう一度頭を下げてくるっときれいに回ってもと来た椅子の間を抜けていく。
そのきれいに動くお尻から目が離せなかった。ドアを開ける時に振り向いて「お尻みてたでしょ」とお尻を触りながら声を出さずに言い返事を待たずにすぐに出て行った。
彼女が出て行くとすぐまたドアをたたく音がした。
「どうぞ」と私が返事をする。
「どうぞ」と彼女がグラスにワインを注いでくれた。
「あ、申し訳ない」と今度は私が彼女のグラスに注ぐ。
気軽なレストランなので自分たちで注ぎ合う。でも食事がおいしいと評判の店だ。
「何か考え事ですか?」と光がのぞき込む。瞳がきらきらしている。
「いや、光の学生時代のレポートの事を思い出していたよ。その時も今みたいにのぞき込むような視線で見てたよね。」
「レポート提出の時ですか。あ、あの時は提出がおくれたので色仕掛けで臨もうとしたんです」
「色仕掛け?」と小声で驚く。
「はい、ブラウスのボタンをいつもうより一つ外して、ブラも緩めにしてました。渡すときに前かがみになると思ったので」と舌を出す。
「まんまと術中にはまったわけだ」と私。
「あ、ほんとに見てたんだ」と光。
「見てないよ、ちらっと見えただけ」と言い訳する。
「そう、でもお尻は見てたよね」とたたみかける。
「そりゃ、後ろ姿を見てれば見えるでしょ」とさらに言い訳する。
「まあ、それもあって単位が取れたならいいかな」とあっさり言う。
「他の女子学生からも単位をねだられたんじゃないの」とさらに突っ込んで来た。
「単位がもらえたのは内容がちゃんとしていたからで、光が可愛かったり色っぽかったからじゃない。それに君より美人な学生はそういないから」と割と真面目な口調で返す。
「フーン、やっぱり美人とかかわいい子とか良いんだ」と聞いてきた。
「そりゃいいさ、人の好みは色々だけど 光の容姿は多分80~90%の男性がいいと思う」と断定的に言うと「容姿や顔を褒められてもあまりうれしくないんだよね、昔から」と思わぬことを言う。「だいたいこの容姿で得したこと無いもん、大学ぐらいまでは男子からはしょっちゅう告白されるしストーカー的なのもいたし女子からは嫌味や意地悪されるから良い事ない」と少しむくれ顔。
「確かに色っぽいし、男とトラブルを起こしそうな雰囲気はあるよね」と何気なく言うと
「それ、会社だったらほぼセクハラですよ」
「セクハラ以上のことしてるからいいじゃない」と居直る。
「そうだけど」と変に納得るする。
「まあその容姿のせいで中々就職も決まらなかったと思うし、でも結局良い所に決まって私もほっとしたし。その後こんな付き合いが出来るなんて思いもしなかったよ。でもあの時はひどかったよね」と半分正直に話した。
「そんなにひどかった?」と真面目な顔で
「うん、美人が台無しになってた」と冗談で言う。
「そう」と真面目に受ける。
「ごめんごめん、そんなことない、やつれた感じも色っぽかった」とさらに冗談ぽく言う。
「うん、この話はこの辺にして今日は何?何か話があるんでしょ?」と布のナプキンで口元を拭きワインを口にする。「その前に、デザート」と言ってウエイターを呼ぶ。
「ゆっくりと選んで良いよ」と言って私も残りのワインを飲み干した。
「最初に今日の話は他の誰にも話さないと約束してほしい。いい」と真剣に言う。
「はい」と光が真剣に答えた。今までの付き合いでこういう返事の仕方は信用できる。
「この前、私の子供を産みたいって言ってたよね?それまだ思っている?」
「気にしないでって言ったと思ったけどやっぱり気になるのかな」と申し訳なさそうに返した。
「気になるというか、私も色々と考えたけど私の勝手な都合で申し訳ないが今の家庭に影響を与えたくない」
「もともと、桜井さんの家庭に迷惑かけるつもりはなかったし迷惑かけるなら産まないつもり」とハッキリと言う。
「それも聞いた。それで一つ提案がある」と桜井。
「なに」と大きくて綺麗な目を向けてきた。
ウエイターがデザートを持って来た。彼女はダンブランシュ、アイスクリームに溶けたチョコレートをかけて食べるベルギー由来のもの。私はレモンリキュールソルベ(レモンシャーベットにレモンリキュールたっぷりとかけたもの)が目の前に置かれる。
「まずは食べよう」
「話も気になるけどこれも気になるから先に食べましょうね」とニコニコ顔。しっかりと食べた後コーヒーが置かれる。
「提案というのは結婚してほしい」
「え、私が恵吾さんと!うれしいけどそれは重婚でそれこそ問題になるんじゃない?それとも離婚するの?」
「ちがうちがう、離婚しないし重婚にもならない。光が私の知り合いと結婚してほしいと考えているの」
「え、それいやだ。だってその人どんな人かわからないし私は恵吾さんの子供を産みたいといったの分かっている!」と半分怒った顔で言う。
「まって、話を最後まで聞いてね。私の友達はゲイでパートナーがいる。ただ、周りから結婚しろ跡取りはと言われて困っているんだ。そこで、光がそいつと婚姻届けを出す。
書類上は夫婦だ。住む場所も一緒かもしれないが彼は女性に興味はないし、触りたくも無いと言っている、あ、近くに居たり見るのは大丈夫だそうだ。だから彼と結婚するけど、わたしとの関係はそのままでいずれ子供を作る。もちろん、書類上は彼の子だけど光の中では君と私の子だ」一気にしゃべったが、改めて何を言っているのかと思えるほど突拍子もない提案だと思った。
光はテーブルのコーヒーいやその先のローソクを見つめている。何か考えているのだろう。
瞳にロウソクの炎がゆらゆらしている。炎を見ていた目がこちらを見て「ふーん、そう言う事」と言う、少し怒っているようにも見える。「とりあえず話は聞きました……。少し考えさせてね。確認するけど私との関係は今まで通りで良いと言う事ね」と確認するように聞いてきた。
「今まで通り」と簡潔に言う
「結婚したら恵吾さんの子供を産んでも良いということね」とさらにたたみかける。
「光がそうしたいならいいよ」と答える。
「わかった、じゃあ今日は帰る。どっちにしても今日はお客様も来ていて食事だけのつもりだったから」と言って立ち上がった。「あ、今日はここで良いからまた連絡して、いや次は私から連絡するからそれまで待ってて」とさっさとレストランを出て行った。
周りが見ると彼女に振られた男に見えただろう。ウェイターを呼んでイエーガーマイスターを頼んだ。いつもよりぐっと冷えていた。
吉川 純子
吉川 純子とは中々話が出来なかった。
お互い同じ鴻池総合病院に勤めていてかつ診療科も同じ心療内科である。逆にそれだけ近いので病院内ではお互い気を付けている。週に何度かは彼女が補佐としてつくがそこではほぼ仕事の話以外はしない。私が大学へ行っているときは他の診療科へも行っている。もともと優秀なのでどこの科でも引っ張りだこである。光とは違う何ともほっとさせる美人である。どこがどう綺麗なのかとハッキリ言えないが醸し出す雰囲気が何とも言えず魅力的である。そうゆう事からも病院の入院患者、通院患者及び出入りの関係者からも人気がある。白衣を着ていると出る所は出て締まる所は締まっているラインもさらに男どもの心をくすぐる。人当りも良いからかこれだけ男性陣から人気があっても女性からも嫌われない。まあ、その身体及び中身をよく知るのは私だけではあるが……ラインで彼女の都合を聞く。明後日ならば夜勤明けなので次の日まで大丈夫という連絡が来た。私の大学のスケジュールも把握済みである。外で食事にするかと聞いたら家に来てとの事。了解と言って携帯を切る。ふと見ると5mほど先に純子が携帯をしまっているのが見えた。
暖かい部屋に入るとダイニングに夕食が準備されていた。
ホッケの塩焼きの横に大根おろし、大根の酢の物、みそ汁、五穀米。
「簡単なもので悪いけど食べて」と純子の声がキッチンから聞こえる
彼女がダイニングに着くと向かい合って「いただきます」と食べ始めた。
塩味が程よくおいしい。「おいしい」と言いながら食べ続ける。
嬉しそうに「久しぶりに作ったの」と嬉しそうに言う。
「誰かと一緒に食べるのはやっぱりたのしいわ」とニコリ。
普段着の純子を見るのは久しぶりである。上半身は体にぴったりとした胸元が大きく開いている7分袖の黒T-シャツ、開いた胸元から豊な谷間が見える。下は足首ぐらいまでのフレアのベージュのロングスカート。髪も下ろしている。彼女本来の柔らかい可愛らしさが強調される。病院での割とタイトな(タイトになった)白衣に髪をあげた姿も美しいがどちらかと言うとキリっとした美しさである。ここではそれに加えて柔らかさをもっているのが素晴らしい。
「何見てるの」とお茶碗を持ちながら言うので
「久しぶりに普段着の純子を見た気がする」と言ったら
「ほんとに久しぶりよね」と以外な返答が返って来た。
「なかなか声がかからないから忘れられたのかと思ったし、静江さんや光さんと忙しくしているのかなとも考えちゃったわ」とすねた感じで言ってきた。
「忙しいのは君もそうだし、色々な所からお誘いがかかっているって聞いているよ」と言い返す。
「どこでそんな噂を聞いたの」と見つめてくる。
「いや、今は心療内科で私についてくれているだろ、それで他の科がそれを外してくれと上に言ってきてるんだ。週に2日か3日しかいないなら別に外れてもいいだろうとか言ってさ」とすこし誇張気味に伝えると「当然、反対しているわよね」と上から言ってきた。
「当然」心ではびっくりしたが平然と返す。
「ならいいわ」と五穀米をパクリ。
「ただでさえ会う機会が少ないのに病院でも一緒に仕事が出来ないのはいやだからね。もし担当を外されたら辞めてやる」と鼻息も荒く続けた。
「辞められると私も病院も困るからそれは無しね」となだめる。
「病院はどうでも良いけど、恵吾さんがこまるなら考える」若干ツンデレ気味。
ゆっくりとした夕食が終わり一緒に片付ける。
その後、リビングに移ったところでブランデーが出て来た。二人で並んで座る。
久しぶりに純子とゆっくりと家飲みをする。これもまた良い。
「話があるんじゃない?」と純子から切り出してきた。
「ああ、相談がある」
「なに」と少し腰を寄せて来た。タイトなTシャツが揺れる。
「前に子供が欲しいと言っていたよね」話を切り出した。
「正確にはあなたの子供が欲しい……よ。他の人の子はいらない」意外と冷静。
「それは今でも思っている」
「ずーっと」
「あのさ、俺の友人でゲイなんだけど結婚相手を探しているんだ。そいつは女性には興味がないし触りたくもないと言っている。あ、近くにいるのは問題ないそうだけどね」
「話がまどろっこしいんだけど」と突っ込まれた。
「それで君と結婚したら良いかなと思ったわけ…ちょっとまって最後まで聞いて」と半身をこちらに正対してきた純子の両肩を持つ。
「書類上彼と結婚して、私との関係はそのままで私との子が出来たら書類上は彼との子だけど実際は私と君の子供と言う事でどうだろう」
すこし、考えている様子
「つまり、私がその人と結婚はするけど関係は持たなくてあなたとの子供を作ると言う事ね」と私の説明をなぞる。
「そう言う事」
「細かい話はどうなっているの?」
「まだ、詳細はこれから詰める所でまずは君がどう思うかというのが大事」と追加説明する。
「ふーん、結婚する彼はゲイなんでしょ彼の相手はどうするの?」と鋭い指摘。
答える前に「あー、光さんか」さらに鋭い。
静江は純子も光も知らないが純子と光はお互いに関係を知っている。まあ細かい所は省くがドタバタする前にお互いの事を説明している。二人とも大人の対応をしてくれたので現在の様な桜井の都合の良い状況が続いている。
「光さんはどう言ってるの」
「説明はしたけど、考えるって」
「そう、考えるかってもしかして彼女も子供が欲しいって言ってるの?いつから?」と三回目の鋭い指摘。
「純子から聞いたすぐ後にまさか二人で相談しているなんてことはないよね」と地雷を踏む。
「光さんの連絡先は知っているし電話で話たことはあるけど。出来るだけコンタクトしない様にしてるわよ」とおかんむり。「ごめん、そうだよね。あまりにもタイミングが良かったので勘ぐっちゃった」と素直な気持ちを述べる。
「まあ、そうかもね。静江さんに赤ちゃんが生まれて1年経つものね。考える事は同じかも」と大人の様な発言。
「ちょっとズルいけど私も考える事にする」と残ったブランデーを飲み干した。
「今日はその話だけ?」
「そう」
「今日も帰るわよね」
「そのつもり」
「じゃあ、はやくベットにいきましょう」
グラスを置いて桜井の首に両手を回す。胸が私の胸に当たりつぶれる。そのまま抱き上げてベットへ行く。寝室のドアがしまりリビングには静けさとブランデーの香りだけが残った。
純子と光
「宮岡 光と言います。ご連絡いただきましたが、どこかでお会いしたことはありますか?」
「吉川 純子です。たぶん病院で会っていると思いますよ」
「え」と光が一瞬固まった様になる。
「桜井先生の心療内科にいらっしゃったことがあるでしょう」
「あ、看護師さんかなんかですか?」
「はい、その看護師です」
桜井と純子が一緒に過ごした数日後の夕方のホテルの喫茶ルーム。
純子が光に連絡し二人だけで会っている。
「直接会っておしゃべりするのは今日が初めてですけどね」と純子がぎこちなくほほ笑む
光も同じ様にぎこちなくほほ笑む。
「あの、今日はどんな話でしょうか?」と光が少し怯えた様に聞いてくる。
「あの、立場は同じなのでそんなに怖がらなくても良いですよ」と申し訳なさそうに答える。
「桜井さんから聞いたと思いますけど“あの提案”どう考えます?」と続ける。
「あ、あの事ですね……そうですね」と光が首をかしげて思案顔になる。
「聞かれて、聞き返すのは失礼なんですが吉川さんも同じ提案をされたということですか?」と光が質問する。
「そうですね。だって、向こうもパートナーがいるわけですから両方に相手がいないとそれこそ片手落ちですよね。だから、桜井さんに聞いたら宮岡さんの名前が出て来たというわけでして、それなら会って話そうと思ったんです。本来なら出来るだけ知らない方が良い方だと思っていたんですけどこんな話が出てきたら話をしたいと思って、宮岡さんも子供が欲しいのですか?」と解説者の様に光に説明した。
「あ、吉川さんも欲しいって言ったんですか?」と驚く光
「はい、ほとんど同じタイミングで宮岡さんも言ったと聞いたのでびっくりしました」
「あ、そうなんですね私も今聞いてびっくりしました。すごいタイミングですね」とうなずくように言う光。
「本当にそうですよねどうしてかしら? ところで宮岡さんはどうするか決めましたか?」と純子。
「はい、決めました」と一瞬間をおいて姿勢を正して言った。
「そうですか、私も決めました」と背筋を伸ばす。
違う雰囲気の美人が二人でホテルの喫茶ルームで正対している図は絵になる。ウエイターが飲み物を聞きに来た。二人ともミントティーをオーダーした。
「一緒に言いましょうか」と光。
「良いですね」と純子。
「では、せいので」と光。
「せいの 受けます」と両者同じ答え。
「やっぱり!」と光。「そうなりますよね」と純子。
「あーよかった、受けないとなったら私だけというわけにもいかないしと思っていました」純子。「そうですよね、よくよく考えると相手にも相手がいる事を忘れていました。確かに二人必要ですよね、吉川さんすごい」と光。
「いやいや、そんな事ないですよ。でも相手の方がまだどんな方か紹介してもらっていないんですよね。私たちが良くても相手方がダメと言えば話はそこまでですから」と純子
「それは無いんじゃないですか。桜井さんの話だと向こうはOKしているようですよ」
「なら、いいんですけど」と半分納得の純子。
本来ならば会う事もない二人だが時間も忘れて仲良く話す二人は昔からの友達の様に見えた。
その約2時間後の事
光から連絡があり、桜井は指定のホテルの喫茶ルームへ出向く。
到着して見まわすと光が小さく手を振って来た。光の対面に何となく見たことがある女性の背中がある。あ、と気づいた時その女性が振り返り静かにほほ笑んでいた。
左右に二人がいる形に座りコーヒーを頼む。二人の前にはミントティーが置かれている。
「なんだ、二人で会っていたんだ。」が私が発した最初の言葉だった。
「二人の意見を合わせてお伝えした方が良いと思って」と純子。光は頷いただけだ。
「……はい。それで結果はどうなりました。」半分居直った態度で言うと
純子と光が「提案をお受けます」とユニゾンで言ってきた。
天使の合唱に聞こえた。
少し間をおいて「どうもありがとう」と頭を下げる。
「お礼を言われる事でもないんじゃない」と光、「そう、私たちにもメリットはありますしね」と純子。
そう言ってもらえるとありがたい。
「でも条件があります。」と光。
ドキッとする。
「相手のお二人を私たち二人と同時に合わせてください。もちろんどう組み合わせるかは桜井さんが4人を一番知っているのでお任せしますが、最終的には私たち二人の考えも聞いてほしいです。」と純子が説明し光が頷く。
元々の予定はそれぞれを会わせてというつもりだったのだが……、一瞬どうすべきかと考えたが山崎と川北に話しておけば問題もなさそうだし一緒に会うのも良いかと思い「分かったじゃあ、また4人会う日を設定して連絡するね。」と桜井。
忘れていたコーヒーを半分ぐらいぐっと飲む。フーっとソファにもたれかかった。
「じゃあ、今日はこれでと」純子と光が席を立つ。
「え」と私。
「だって、このままどちらかと一緒じゃ、置いて行かれた方がかわいそうでしょ」と光が言ってウインクする。純子は黙って微笑みながら軽くお辞儀をして二人とも喫茶ルームを出て行く。
確かに置いて行かれた桜井はかわいそうだった。
4.合コンの様な
クローバーの部屋でブランデーの香りを楽しんでいたところに川北と山崎が静かに入って来た。
峰岡は遅れると連絡があった。
いつものスコッチとジンが届いたところで川北が「今日呼んだということは、話が進んだということかな?」と少し期待している様に見える。
「まあ、そんなとこだ」とじらす。
「峰岡も来てないから、あせるなよ」と山崎、そう言ってはいるが同じく早く聞きたい様子である。
「峰岸はちょっと遅れるって連絡があったから、話をはじめるわ」と口火を開く。
「彼女達には話をした。多少条件があったが基本OKとの事だ」
「そうか」と川北。
「第一段階突破かな、で条件って」と山崎。
流石に慎重派の山崎。条件という所に引っ掛かったようだ。
その時ドアが開き峰岡が入って来た。一旦話が止まり、ウオッカ待ちとなる。
ウオッカ片手に「話はどこまで行った?」
「まだ最初だよ、彼女達は基本OKとの事だ」
「基本OKと言う事は何かあるのか?」こちらも鋭い。
「ああ、一つ」一旦切って
「条件は、4人一緒に会う事だそうだ。それぞれの相手は私が決めても良いが最終的には彼女達の判断も入る。最後に交代になるかもな」と最後は軽く流す。
「チェンジありか」と峰岡。
「何かとまちがえるなよ」と桜井。
「悪い悪い」と峰岡。
「俺がどちらが良いかを考えてそれぞれを紹介する。まずはその場で考えてみてほしいな」
「会う時は、俺も参加させろよ」と峰岡が横から言ってきた。
「おい、お前関係ないだろう」と後の三人。
「いやいや、状況設定としては男の飲み友達に女二人が会うっていう設定での方が自然じゃないか?」と無理矢理な提案。
「そうかな?」と首をかしげる桜井。
「正直こんな面白い場面に同席出来ないなんて不幸だ。ぜひ参加したい。させろ」とさらに強引に言って「客観的に見てやるから」と取ってつけた様に言う。
「川北と山崎はどう思う」と矛先を振った。
「俺は別に構わないが」と川北。「口を出さないならばOK」と山崎。
「決まりだな」と勝手に決める峰岡。
「しょうがないな、でも絶対に余計な事は言うなよ」と桜井。
「余計な事は言わない」と峰岡。
「お前にはもったいないとか、言うなよ」とさらに言う桜井。
「あ、先に言われちゃった」と笑いながら峰岡が答えた。
「お前も来るならどこかいい店紹介しろよ。6人がゆっくり出来て他人に見られない様な所」と峰岡に言うと「そうだな、ここがいいとは思うが女性は入れないしな」と峰岡。
「当然、分かっている事いうなよ」と山崎。
「わかった、日にちが決まったら早めに言ってくれ」と峰岡。
「あれ、そんなに安請け合いして良いのか?」と川北。
「大丈夫」とニヤニヤと峰岡がウオッカを飲む。
女性との付き合いも多い峰岡のことだから色々と知ってはいるのだろう。
そんな事を思いながら、いつにしようかとボヤっと考えてブランデーのグラスを回した。
香りがふわっと鼻をくすぐった。
6人で
ちょうど午後7時を回ったところだ。
峰岡が指定した店に向かう。住宅街の一角に昔ながらの家を改装した小料理屋だった。
一時屋という表札がかかっている。一日一客のみの限定で知る人ぞ知る店で予約は中々取れないらしい。純子と光を連れて入る。引き戸になっている玄関を開けると女将らしい方が静かに迎えてくれた。峰岡、川北、山崎はすでに到着している様だ。
縁側を歩くと小さいながらも良く手の入った庭が見える。部屋に案内されると峰岡、川北、山崎が立ち上がり迎えてくれた。畳の部屋に年代物のダイニングテーブルとイス。天井からはルイスポールセンのPH5のペンダントライトがかかっていて良く合っている。古い家屋を今風にアレンジしている。
「少し遅くなったかな?」と桜井。
「いや、時間ちょうどだ」と峰岡。
純子と光が軽く会釈すると川北と山崎も応するように頭を下げる。
川北の前に純子、光の前に山崎 を座らせる。その横に峰岡と私が向かい合って座る。
よくよく考えた結果、川北に純子、山崎に光という組み合わせにした。
会う前に各自に相手の写真は渡しておいたが実物と会うのは今日が初めてだ。
「みんなを紹介するね」と私。考えて見ると全員を知っているのは私だけだと気づいた。
一通り紹介したあとに各自から自己紹介。
「峰岸 浩一郎です。ここは、一日一客しか取らない小料理屋で食事は全てお任せになっています。事前にアレルギーは無いと聞いていたので今日は料理人に全てを任せています」とオーナーでもないのに峰岡が自慢そうに口火を切った。
「川北 勇です。一応弁護士をしています」
「吉川 純子です。看護師をしています。」
「山崎 幸喜と言います。公認会計士です。」
「宮岡 光です。製薬会社の研究部に勤めてます」(まるで合コンの様である)
「今回は、私の提案で集まってもらってありがとうございます。男の4人はバーでの飲み仲間という事で、今回は峰岡さんの伝手でこんないい場所を借りれてびっくりです。こちらの女性二人は私の懇意にしている二人ですのでよろしくお願いいします」と他人事のように話すのは
今、おいしそうな料理が次から次へと運ばれて来たためでもある。
スタッフが皆下がってから「まあ、ここでの話は誰も聞いていないのでリラックスして話そうか」と峰岡が言うと「私もそれでいい、どうも堅苦しいのは苦手なの」と光が言ったところから全体の空気がやわらんだ。食事をしながら各自の話をそれぞれとし楽しい時間を過ごした。
最後のおいしいコーヒーが出て来たところで「ではこの組み合わせで良いかな?」と4人に確認する。川北が最初に「良いと思う」山崎が「問題ないんじゃない」と続ける。
純子と光は大きくうなずく。
「じゃあ、この組み合わせでお願いします。両方の親に挨拶、婚約、結婚式及び婚姻届けというあたりはしっかりとやってね。」とお願いする。
「一度ぐらいはデートしたら?見合いでも何回か会うというのもあるし」と峰岡が言う。
「俺は女性とのデートは想像出来ん」と川北が一言。
「デートぐらいはできるかもしれないけど光さんが面白くないかも」と山崎。
「なら、この6人で何度か遊ぶと言う事にするか」と峰岡が大胆な提案をする。
「それならば、みんなで楽しめそうだし」と続けるが「峰岡、お前だけ相手いないぞ」と山崎。
「俺は良い、みんなの事を見て楽しむし。桜井だって相手がいない事になるし」とにやり
「峰岡さんちょっと性格曲がってません?」と光がつっこむと「そのくらいじゃないと株取引は出来ません」と受け流す。
ということで何度かこのメンバーで集まってから親に紹介するという段取りになった。
そんな事から、何度か学生気分でグループ交際(見たいな)事をやった。
そんな集まりもなかなか楽しいものだった。
5.疑惑
久しぶりに光と二人で出かけた。6人で遊ぶのも学生の様でなかなか楽しいが、やはり二人で会うのは別な意味で楽しい。大学の正門で待ち合わせて街にでる。さて今日はと歩いていると向こうから見慣れた二人連れというかベビーカーと静江と兄の和樹が歩いてきた。こちらが気づいた直後に静江も気がづいた様だ。一瞬で光と恵吾の間に見えない壁を作る。
「あら、どうしたの?」と静江がびっくりした様子で聞いた。
「ああ、こちらは卒業生の宮岡さん。ちょっと相談ごとを聞いていた帰りだよ」といつもより冷静さに気を付けてしゃべる。「あら、そうなの」と微妙な回答。「あ、初めまして宮岡 光と申します。桜井先生にはいろいろとお世話になっています」と頭を下げて挨拶をする。
「就職で苦労してさ、ちょっと悩んじゃって私も教授からも相談にのってって頼まれてさ、診察もしたんだ。その後うまく良い所に就職出来たんだよ」と必要ない説明をしたような気になった。「そうだったの、それは良かったわね」と恵吾を見ずに光を見て答えた。「はい、助かりました。あ、この子が桜井さんのお嬢さんですか」と話を一枝に振る光。「ええ、散歩がてら外に買い物に来たの、でこっちが荷物持ちの兄の鴻池 和樹」と兄を紹介する。「どうも」と短く挨拶をする。「こんにちわ」と光が返す。「遠くから見てたら似合いのご夫婦に見えました」といきなりの爆弾発言。静江も和樹も一瞬固まったのがわかった。「まあ、兄妹ですから似たところもあるかもね」と静江が和樹を見る。そのしぐさが恵吾にはさらに夫婦の様に見えたがそれは言わなかった。光もそれ以上は言わずに「お嬢さんのお名前はなんて言うのですか」と恵吾に聞く「一枝です」と返す。「可愛いですね。奥さん似ですね」と続ける。「ありがとう」と恵吾が思っていた以上の笑顔で静江が返した。「それで相談ごとは終わったの?」とさらなる追求を始めた。「大体は終わったかな。彼女今度結婚するんで結婚式の相談、相手は僕の友達の川崎だよ」と説明する。「あの、飲み友達?」と納得顔。これで疑いは晴れた……かもしれないと思い。「それじゃ、僕は病院に行くので兄さん後もよろしく」と恵吾が言い「私も帰ります。失礼します」と光も続く。
そして、二人して駅へ向かった。その後ろ姿を見る静江と和樹。和樹が「お似合いの夫婦か」と一言。「あなたの奥さんは昭子さんでしょ」と横から言われた「ああ、そうだな」とまた一言。「本当にしっかりしてよ」とあきれた様に静江が言った。一枝はスヤスヤと寝ている。
駅のホームで恵吾が「残念だけど今日は病院に行くことにする」と本当に残念そうに言った。「まあ、しょうがないわよね。あそこで病院に行くって言ったから」と少し責める様な言い方をする光。「しょうがないじゃないか、あそこでこの後時間があるなんていったら兄貴の代わりに付き合う事になったと思うよ」と言い訳がましく言う。「荷物持ちに兄を連れてくるってすごいね」と一言。「静江の家は兄妹二人昔から仲が良いんだよ」と恵吾が当然の様に言う。
「そうなの……ま、いいか」と言って「残念だけど今日はバイバイね」と手を振ってくるっと後ろを向いて行ってしまった。後ろ姿を見て少し残念な気持ちもあったが光が言った「ま、いいか」が何故か頭に残った。
病院に付いたらバッタリと純子に会った。「あら、今日は来る日でしたか?」と聞かれたので先ほどの事を説明した。「あら、光さんとデートだったのに残念でしたね」と少し意地悪そうに答え「じゃあ、今日はうちに来てください」と小さな声で言ってきた。「ああ、わかった」と業務的な答えを大きな声で言う。去っていく後ろ姿の白衣がなまめかしく見えた。
数日後、病院の待合室に静江と一枝がいた。定期健診だった。
たまたま、ロビーで純子と話していたところに静江が声をかけてきた。「どうしたの」と恵吾が聞き返すと「一枝と私の定期健診よ」と少しむくれ顔。「あ、そうか、ごめんごめん」と謝る桜井。「こんなことも忘れるなんて本当にダメね」とふざける。「病院ではどうなの」と純子に振ってきた。「大変真面目に診療されています」と答えると「そうね診療は真面目なのよね」と訳が分からない事を言った。「この前、街で可愛い娘と歩いていたのを見つけて声をかけたら彼って慌てていたのよ。大学の卒業生だって、それで診療もしてたんだって」とこの前の事を純子に言いつけた。「ああ、そんな方いましたよ。たしか……なんていう方かは忘れましたけど何回か診察を受けていました」とフォローする。(ナイスフォローと心で叫ぶ恵吾だった)
「あら、本当の話だったのね。てっきり卒業生に鼻の下を伸ばしていたのかと思ったわ」と安全サイドに話が進む。「あなたも大変ね。こんな人の補助をしているんだから」と静江が言うと「診察、診療は皆さん真剣ですので大丈夫です」と純子が返す。「兄の和樹もそう?」と聞くと「そうですね」とためらいもなく答えた。納得した様な顔をして「じゃ、私は帰るから」と言って静江が出口へ向かうのを二人で見ていた。「私の事は心配ないんですかね」と純子が言う。「木を隠すならば森の中とも言うだろう」と恵吾。「私は木ですか」と出口を見ながら言う。「そうかも、しっとりした気持ちの良い木だ」と気持ち的にはここで手がお尻に行くがここは病院のロビーである、想像の世界だけにとどめた。
そして静江に対してもう少し気を遣わなければと思った桜井だった。
6.結婚
4人の交際、そして桜井と二人の関係は順調に進んだ。
そして結婚の話も具体的になってきた。
山崎が光を親に紹介したところ、こんな可愛くてきれいな子をどこで見つけたと特に母親が驚いたそうだ。光も山崎を親に紹介したら何か実直そうな人と言う事で好感を得たと聞いた。
また、純子の親はこんな美男子が何でお前とくっついたのと聞かれ「病気している時は気弱になるからね」とごまかしたそうだ。川北は親からやっと自分で見つけてくれたかと手放しで喜んだとの事。4人とも知り合ったきっかけなどは口裏を合わせていたので親は何も疑わなかったようである。それよりも結婚相手を連れて来たことがうれしすぎてそれ以外の事はどうでもよかったのかもしれない。
とんとん拍子に話は進んで、山崎と光の結婚式の2週間後に川北と純子の結婚式となった。
ほぼ続けての状況ではあるがここは勢いで行くしかない。
また、住居も同じマンションの同じ階に買ったそうだ。
ちなみに大学の近くだったので大学へ通うためという理由で桜井も同じマンションの買った。
山崎と光の結婚式に出席した。正確には披露宴に参加した。
当日の午前中に教会で式を挙げ、午後から披露宴だった。披露宴では大学の恩師の一人として出席したが、ウェディングドレスを着ている光は清楚な感じの中、女らしい色香を放っていた。周りからは美女と野獣などという声が聞こえてくるが単なるうらやましさからだろう。桜井は昨夜の光の白い透き通った下着と比べて下半身を熱くしている自分が少し恥ずかしかった。今日はうちに帰ろうと思った。
2週間後、今度は川北と純子の結婚式に出席した。こちらは仕事仲間として結婚式も出席する事となった。こちらは神前結婚式だったので誓いのキスも無かった。そう言えば山崎と光の時はどうしたのだろうか?山崎が光にキスをするとは思えないし……とどうでもいい事を考えながら遠くから二人を見ていた。披露宴は川北の親が全面的に協力して盛大に行われ多くの来賓が集まる中、中央の一段高くなった席に二人が座っている。まるでひな祭りのお内裏とお姫様の様で少し笑いそうになった。衣装替えでドレスとタキシード姿の二人が出てきた時には場内が少しざわついた。純子の女性らしい姿はもちろんだが、川北の色男さが一段と光って二人並んでいると結婚雑誌の表紙のようだった。桜井は「良い男なんだけどなぁ、これで女性が好きならどれほどの……」と思ったが、そうだったらこの結婚もなかったなと思い直した。
純子の結婚式が終わって1週間後に光の部屋へ行った。
チャイムを押すと光がドアを開けてくれた。
「幸喜さんはまだ帰ってきていないわよ」と他人から見たら新婚に見えるセリフを聞いた。
ドアを締めながら「ほー、幸喜さんか」とちょっと嫉妬。
「普段からそう呼ばないとおかしいでしょ。山崎さんもおかしいし、夫もやだし」と言い訳する。その少しとがった唇にキスをする。ドアが閉まっているとはいえ玄関先でのキスである。
舌を入れると光も返してきた。しばらく玄関にで唇を味わう。
中に入ると真ん中に廊下があり奥がリビングダイニングの様だ。両側のドアが個室になっている。「こっちが私の部屋」とドアを開けて引っ張り込まれた。
割と広い部屋でダブルベットがある。その奥にシャワーとトイレ、洗面台があった。
「外国のマンション風に各部屋にシャワーとトイレと洗面台を付けてもらったの」と嬉しそうに言う。光を抱いているときに山崎が帰ってくるのはちょっとと思っていたら光が「幸喜さん、今日ご両親と食事してからゆっくり帰るって」嬉しそうに振り向いて言った光の目はすでに潤んでいた。「久しぶりね」と両手を首に巻き付けまたキスをしてきた。
背中のファスナーを下ろすとワンピースがするっと落ちた、下着は付けていなかった。
「あー気持ち良かった」と一言。「新婚初夜はいかがでしたか?」と桜井が聞くと「うーん新婚初夜か……。ちょっと背徳感がある感じかな」と訳の分からない事を言う。「なにそれ」と聞くと「新婚は新婚なんだけどする相手はいつもと同じで……、うーんもうなんかわからないけど気持ちいいからそれでいいし、子供が出来ても良いから何かいい感じ」とさらにわからない事を言ったが、それ以上は聞かなかった。
二人でシャワーを浴びたあとリビングに案内されてコーヒーを飲んだ。キッチンで動き回る光が世間的には他人の妻になったと言う事から何かさらに可愛く見えた。
3日後に純子の部屋へ行く。
結婚して仕事の量は減らしたがまだ私の担当だけは続けていた。本人のたっての希望だと伝えられており、周りからは何で桜井の所だけと思われた様だが将来的には辞める予定が高いので他の医局は確実な看護師を押さえる方に流れた。
部屋の様子は多少違うが光の所と同じレイアウトで各寝室にシャワー、トイレ、洗面台があるは同じだった。光の所と同じ作りだねと言うと二人で相談したそうで山崎も川北もそれぞれの部屋にあるのは良いと快諾したそうだ。
「来るのが遅い」と抱き着きながらへそを曲げた様に甘えた声で言ってきた。
光の結婚式の前は純子の所に言ってただろうと言い訳したが、「あの時はゆっくりできなかったじゃない、結婚の準備って大変なんだから」と服を脱ぎながら話す。
今日、川北は会食で夜遅くなるとの事。ゆっくりと純子を味わう。他の男に抱かれたわけでは無いが人妻となった純子に燃える自分がいた。
純子がシャワーから出て普段着でキッチンにいる。「軽く何か食べてく?」と聞かれ「うん」と答える。ダイニングに五穀米とみそ汁、野菜炒めが並ぶ。「いつもこんな感じなの」と聞くと「仕事の時はもう少し簡単だけど、大体こんな感じかな、ごはんはいつも五穀米」と桜井の前に座る。「前も五穀米だったね」と言うと「そうね、彼も好きだって言うから変えていない」と答えた。「彼か……」と一言。「あれなんか気になる?」と言われ「いや、新鮮だなぁと思って」と答えると「新鮮かぁ」と純子が繰り返す。一瞬間があって二人で笑い出した。
しばらくたってBar MIYASAKAで集まることにした。
桜井がハートのドアを開けると川北と山崎がすでに飲んでいた。
ご苦労様と声をかける。「ご苦労様」と返事が返って来た。ブランデーが届く。
「その後どう」と聞くと
「特に変わったことはないね」と川北。
「うちもだけど、遠回しに子供は的なことを言い始めた」と山崎。
「たとえば」とさらに聞くと
「先月隣の鈴木さんのところで生まれたとか、林さんのところは二人目だとか」と山崎。
「ありそうだね」と桜井。
「想定内です」と川北。
「と言う事で桜井さん頑張ってね」と川北と山崎。
「なにを?」と言うと
「なにをじゃなく、この話、彼女二人が子供が欲しいから始まっているの忘れた」と珍しく山崎の声が少し大きくなる。
「ああ、そう言う事ね。二人ともまだ欲しいって言ってるから頑張る」とニヤケル
「頑張ってください私たちのためにも」と山崎。
「二人ともその内出来ると思うよ」と軽く返す。
実際に彼女たちとは結婚する前より回数が増えている。会う回数だけでなく一晩に何回もしているのですぐにでも出来るだろうと思っている。
でも、妊娠中は出来ないし光と純子には上手くずらして妊娠してもらうかな。でもそんなに都合よく行くものでもないしなどとブランデーをぐるぐる回しながら意味のない考えを回した。
「ところで峰岡は?」と桜井。
「聞いてないな、久しぶりに何かまずい事が起こったとか言っていたと思うけど、世の中は政権交代でバタバタしてるけどあいつならば何ともないと思うんだけどね。」と川北が言う。
その日、峰岡はとうとう最後まで来なかった。
一人になる
峰岡はディスプレイを睨みつけていた。睨んでいてもどうにかなるものではないが睨んでいた。
始まりは、付き合っていた斉藤優子が持って来た投資話からである。
斉藤 優子は、斎藤商事という小さいが年商が大きいワンマン社長 斎藤 善一郎の娘である。この会社は株投資の利益が高く裏ではインサイダーでもやっているのではとまで言われていた。元々は自動車部品の輸入商社であったが投資での利益が大きくなって来たので元の業務を売りファンド会社に変貌した歴史がある。投資や吸収合併などで活躍していた。
大学を卒業してから親の会社へ入社、秘書課で仕事をしていると言う事だった。峰岡は今まで自分で調べたものしか信じないでやって来た。だから前の新型コロナの時は自分で何とかした。(新型コロナ自体は自分のせいではなかったが)
今回は、彼女が持って来た情報を(寝物語として聞いたのを真に受けてしまい)基にして株を買ったら直後に大安値になった。損切する時間もほとんどなくて一部だけしか出来なかった。だまされたのか?いや、優子は株の専門家ではないから彼女も騙されたのかもしれない。とにかく自分が裏を取らなかったのが最大の原因である。
少しづつでもリカバリーしないと本当に全部なくなる状況になっていた。
斉藤 優子とは連絡が取れない。斉藤商事がどうなったのかも知らないが破産した様だ。
前の時と同じ、いやそれ以上に画面から目を離さず少しづつ戻す事を注力した。
その結果なんとか元の状況に戻す事が出来た。気が遠くなるような時間が過ぎていた感じがしたが実際には1ヶ月と20日が過ぎていた。これを長いと言うか短いというかは峰岡は判断できなかったし、しなかった。結果として何とかイーブンまで持ってこれたことも結果として冷静に受け取ることにした。川北と山崎の結婚話で浮かれていたせいなのかもしれない。
優子や付き合っていた女性陣とは富岡京子以外は連絡がつかなくなっていた。
相変わらず京子のスタンスは変わらない様だ。
久しぶりに峰岡が連絡すると出てくれた。
「2か月振りじゃない」と軽口をたたく
「正確には1ヶ月と20日間」とだけ返事をする。
「連絡くれたって事は地獄から生還できたってことね」
「とりあえず現世まではなんとかな」
「まずはおめでとう」
「取りあえずありがとう」と本心で返した。
「そうね、どうせろくな食事していないんでしょ何かおごってあげるわよ。明日はどう」
「明日ね、いいぜ」
「じゃあ、また場所が決まったら連絡する」
「ああ、待ってる」
「夜も開けておいてね」
「今は京子以外電話がつながらないよ」
「あら、また前みたいにみんな消えちゃったの」
「消えたかどうかは知らないけどな」
「じゃあ、ゆっくりできるわね」
食事場所は、一時屋だった。玄関で前に6人で会ったことを思い出した。京子が振り返り「どうしたの、入るわよ」と玄関を開ける。
前の時と同じ様に女将らしき人が出てきて「ようこそ、いらっしゃいました」と挨拶すると
京子が「また急にお願いしてゴメンね」と軽く挨拶した。「いやいや、良いですよ京子さんのお願いなら何とかしないとね、それに今日は元々予定が入っていなかったから大丈夫」と言ってきた。前回の6人の時も京子に頼んで予約してもらったのだが女将と京子の間に何かあるのだろう。でもそこについては気にすることも無い。いや気にしなくて良いと思って女将、京子の後ろをだまってついて行く峰岡だった。
「さあ、ロクな物を食べていないだろうから、胃にやさしいおいしいものをたべましょ」と京子。京子も料理は上手いから手料理でも十分だったが今日は俺のために特別な感じにしたかったんだろうと峰岡はありがたく思った。
「まずはおいしいお酒から」と京子が言い、庭先の穏やかな明かりで照らされた京子の顔を見つめて安ど感をかみしめた。「乾杯」と浩一郎が盃を持ち上げると「乾杯、お帰りなさい」と京子が盃を両手で持ちほほ笑んだ。
7. 私の子
さらに半年ほどが過ぎた
桜井が「どこ?」と目で聞く。
男装美人のバーデンが「いらっしゃいませ。今日はスペードです」と彼にだけ聞こえる声で短く伝えて来た。真ん中の通路を歩き淡いライトで照らされている黒のスペードマークのドアを開けるといつもの顔がいた。「久しぶり」と互いに小さく声をかける。
ウオッカを飲んでいる。峰岡 浩一郎
スコッチのグラスを持ち上げた 川北 勇
ジン トニックをなめている 山崎 幸喜
そして今 ソファに座ったのが私 桜井 恵吾
いつもの様に裏から音もなくバーテンがブランデーを持って来た。
あらためて、乾杯と川北がグラスをあげると、峰岡が何に対する乾杯かはわからんがと言う。
「まずは峰岡が復活したことかな」と山崎。「おいおい、すでに復活して前より好調だぞ」と言い返すと「本当の所はどうなのか」と川北がふざける。「まあ、そこそこ忙しいよ」と軽口でまた返す峰岡。「あとは……」と桜井が川北と山崎を見る。
「ああ、俺らね」と山崎。
「光ちゃんが妊娠しました。3か月だそうです」と山崎。
「同じく純子さんも出来たそうです。同じく3か月」と川北。
峰岡が「なんで同じ時期なんだよ」と桜井に突っ込む。
「しらないよ、頑張ってたら同じころになっただけだよ」と何に言い訳しているのかわからないが桜井が返す。「まあ、順調に育ってくれることを祈るだけだ」と付け加えた。
「実家には伝えたのか?」と峰岡。
山崎が「いや、まだ。もう少し落ち着いたらと思っている」と言うと川北が「うちはばれちゃった。話の流れて言っちゃったよ」と少し赤くなった。
「どちらにしてもいずれわかる事だからいいんじゃないか」と桜井。
「ご苦労様」と川北と山崎が桜井に向かってグラスを掲げる。
「どういたしまして」と桜井も掲げ「これで後継者も出来て両家とも安心かな」と冗談半分で言う。桜井はひょっとしたことから私の子どもがこんなに増えるとはと思うと何とも言えない感じになった。「もう一人か二人、よろしくね」と川北と山崎が冗談とも言えない感じで言ってきたので「まだ一人目も生まれていないのによく言うよ」とだけ返した。
ふっと「俺も子供を作るかな」と峰岡が言うとほかの3人がどうしたという顔で峰岡を見る。
「いやぁ、この前のアクシデントの時」と話を始めた(あれを簡単にアクシデントと言うんだと3人が感心する)「残った女性が京子だけだったんだ」と続ける「それで何かいいなと思って今も京子だけなんだよな」とウオッカを飲む。「前の時も残ったのは京子さんだったんだろ。今回も同じか」と桜井が感心した様に言う。「そうだな。彼女はしっかりと仕事をしているから俺が一緒にいる必要はないという感じなんだが俺が京子を必要になっている様な気がしてきてな。なんか、あいつとの間に子供がいても良いかもなぁと思ったりしているんだ」といつもとは違うトーンでまとめてきた。「惚気ているな」と川北。「うん、惚気だ」と山崎。「結婚したらどうなんだ」と桜井が言うと。「うーん、結婚と言うよりは子供がほしいって感じかな」と返してきた。「京子さんはどうなのよ」と桜井がさらに聞くと「わからん」とだけ。「その内にわかるかもしれないけど」と続けた。「そうかもね」と後の三人がそれぞれ言ってグラスを開けた。
久しぶりに静江を抱く。
通常の診療と大学の授業(その他、光と純子の所へ行ったりしていて)で忙しい日々を送っていたが久しぶりに自宅でゆっくりと過ごす。
忙しかった様ねと甘えた声。ほしい時の声だ。
「君はどうだった?」と聞く。
「かずえは良い子だし、家は落ち着いているわ。結構実家にも行ってたけれどそれは構わないわよね?」と言う。軽くうなずく恵吾。「でそろそろもう一人ほしいんだけど」
「かずえの世話で大変なんじゃない?」
「でももう一人。出来れば男の子、でも性別までは欲張らない」
「どうしたの?」
「あなたも知っていると思うけど、兄のところが女の子二人でしょ。お父さんが跡継ぎは男の子だと言いだしてゴタゴタし始めたのよ。」
「え、だって次は和樹さんだろ。」
「そこは良いんだけどその後の事。兄の所は女の子二人で次の跡継ぎがその二人の婿は嫌なんだってそれでうちの二人目が男の子だったらって話も出てるの」
「それは話が早すぎるんじゃないか?まだ和樹さんとこも三人目を頑張ることもあるだろうし」「それならそれで良いんだけど、昭子さんは二人で充分だって言うしこないだなんてお父さんが外でも良いから男の子作れなんで暴言はいちゃって大変だったのよ。で、私の所にも飛び火してもう一人男の子を生んで和樹の養子にしろなんで滅茶苦茶言ってるのみんなで落ち着かせたけどお兄さんのあとを誰を継がせるかを真剣に考えないとという感じなの」と少し困った様な嬉しそうな顔つきで説明してくれた。
「そうか、私は直接の家族じゃないから強く言えないし言う気も無いけど静江はどうしたい?」と静江に聞く。
「そうね、何となくは考えているけどうちに男の子が出来れば選択肢も増えるかなって」
「さっきの出来れば男の子ってこと?」
「そう」
「まあ、どちらが出来るかはわからないけど一生懸命作ろうか?」
「うれしい」
部屋着のまま、ソファに押し倒し上にかぶさる。一枝はベビーベットですやすやと寝ている。恵吾はこんなにうまくいっていいのだろうかと思いながら、またこれでいいとも思い静江を抱きしめた。
「ただいま」と一枝を抱きながら鴻池家の実家の玄関を入る。
しょっちゅう来ているので勝手知ったる実家である。玄関を上がり奥のリビングに向かう。
兄の鴻池和樹がソファに座っていた。「あれ、お兄ちゃん、お父さんは?」
「病院に行っている、何か昔の知り合いが入院したっていうんで挨拶と診療だって」と答えた。
「フーン、昭子さんは?」「友達とお茶だそうだ夕飯までには帰ってくると言っていたな」子供たちは幼稚園に行っている。母親はいつもの様にお茶のみ友達とどこかのランチに行っているとの事。「と言う事は和にぃだけね」と声のトーンが変わった。
隣の畳部屋に一枝を寝かせると「ね、しよっ」と言って和樹の膝の上にまたがった。
和樹も当然の様にスカートの中に手をいれて、キスをする。
和樹が大学2年、静江が高校3年の時に初めて体を重ねた。和樹はすでに経験済みだったが静江は初めてだった。和樹の部屋だった。幼いころから二人は仲が良くいつも遊んでいた。静江は周りが見ても可愛く上品な綺麗さがあったので読者モデルとかにもスカウトされていた。
中学生の静江と高校の和樹のとき和樹の同級性が静江に告白したが難なく撃沈した。同じ様に静江が高校の時に和樹の友達が静江に告白したがこれもダメだった。和樹もそんな静江が可愛くてしょうが無かったが、友達が紹介しろと何度も言うので「ふられても責任もたんからな」と言って紹介していたが、毎回見事に撃沈されていた。何機撃沈されたのだろうか。撃沈王の名前を授けてもいいと思えるほどだった。彼女が高校の時に部屋に呼んで「どうしてみんな断るんだ」と聞いた時、「だって、和にぃが好きなんだもん」と言っていきなり抱きついてキスをしてきた。その時静江は妹から一人の女へ変わった。
その後、和樹が結婚するまでは親に隠れて体を重ねていた。静江も大学生となり和樹との関係は変わらずさらにいい女の匂いをかもしていた。大学でも色々と声をかけられ、軽いデートまではするが恋人は作らなかった。その後和樹が昭子と結婚したが、家を実家の横に建てたことにより静江との関係も変わらなかった。特に昭子が妊娠している時は静江がその代わりとなっていた。ただ、静江もいつまでもこの関係でいると昭子や実家も気が付くだろうと思い始めたところに桜井が現れた。診療と大学準教授という忙しいという事も良い条件だった。
さらに付き合い始めてから体を重ねたが相性も良かった。兄とは違う良さがあり静江としては楽しむ事も出来た。結婚しても桜井は仕事と称してよく外泊していたのも都合が良かった。
和にぃとの関係も続けていて恵吾とした後か前には和にぃとも必ずしていた。恵吾との結婚前まで静江は和にぃとの子供がほしいと思っていたが今はどちらの子でも良いかなと思いはじめている。どちらも静江の子であるということには変わりない。
「なあ、一枝はどっちの子だ」と和樹が唐突に聞いた。
「さあ、どっちかな?」とあいまいな事を言う静江だった。まだ和樹の上にのったままである。
「どっちか知りたいの?」と聞くと「いや、知らなくても良いかな」と一瞬間が合って和樹が答えた。
「そうね、どちらにしても私の子供であることは確かよ」と微笑む。
「次の子も同じ、私の子供」と言って和樹にキスをした。
隣の部屋で一枝がすやすやと寝息を立てていた。




