油断したわけじゃ無い、俺の実力が無かっただけの日
本部に戻ると、人々が入り乱れバタバタしていた。
何かあったのか聞こうとした時、見学席のシールドにひびが入っているのに気づいた。
「リアム、やばいわ。シールドにひびが入ってる。中にいる人たちを避難させた方が良いかも!」
見学席に近づくと、中から兄上がおびえた顔で
「ノア!こっちに来ちゃ駄目だ!下がりなさい!近くに大型の魔獣が潜んでいる!」
大型の魔獣っていないんじゃ無かったの?首を傾げると
「誰かが魔獣寄せの香を焚いたらしい。いないはずの大型の魔獣がこの森に寄ってきている。この近くに大型の魔獣がいる。さっきシールドに体当たりしてきた。すぐ君たちは避難しろ!」
ベンジャミンが慌てて俺たちに今の状況を報告してくれた。
え、どうすんの?どこに避難したら良いんだ?呆然と立ち尽くした。中には第一王子も第二王子もいる。避難しなければならないが、近くに魔獣が居るためその場に留まるしかないようだ。
王城の騎士団は、仲間と連絡を取り合いすぐにシールドを張り直す準備をしている。
「シールドを張り直している間に魔獣が出れば皆無事では済みません。ここは、応援が来るまで我々が見張りをするべきでしょう。」
リアムが冷静に判断した。
「とりあえず、近くに魔獣がいるなら、どの当たりにどんな奴がいるか知りたい。俺がちょっと偵察に行ってくるわ。」
と言うと、パーシーが慌てて
「駄目だよ!ノアは行っちゃ駄目!俺と一緒にここにいてよ。」
腕を掴んで懇願してくる。
「でもなパーシー、誰かが見に行かないと、どこにどんな魔獣が居るかわからないだろう。心配するなよ。何にもしないから。見に行くだけだから。な。」
「でしたら、私も行きます。バーリーはパーシーの側にいてあげて下さい。それから、ここにいる人たちの警護もお願いします。ではノア、行きましょう。」
そう言うと、俺たちは一気に風魔法で前進し木々に飛び乗って上空に駆け上がった。
「絶対無理しないでよ!」
下の方でパーシーが必死に声を張り上げて俺たちに向かって言った。
ベンジャミンが言った通り、30メートルほど先に身を潜めている黒い物体を見つけた。相手にバレないように近くの木の枝に降り魔獣の様子をうかがう。
「やばいな、思ったより大きい。あれ何かわかる?」
「う~ん、身をかがめているのでよくわかりませんね。どこか怪我をしているのでしょうか・・・地面に血がついてますね。」
「シールドにぶつかった時に怪我でもしたんじゃ無い?俺たちに気づいたら興奮して暴れそうだな。」
二人でぼそぼそ会話をしていると、魔獣の10メートル先の辺りに魔獣を探しているオリヴァーのチームが歩いてきた。そのままオリヴァーたちがまっすぐ来ると魔獣にエンカウントしてしまう。10メートルの間には木々が生えていてお互いに気づいている様子はない。
「俺が魔獣をこっちに引きつけるから、リアムはすぐにオリヴァーさんたちの方に回り込んで後ろから魔獣を切ってくれ。」
「しかし!」
「時間が無いよ。大丈夫。オリヴァーさんならなんとかしてくれるから。じゃあ頼んだぞ!」
言ってすぐに双剣をかまえ、魔獣に突進していく。
「ノア!無理しないで!!」
リアムはオリヴァーたちの所へ風に乗って突き進む。
突然現れた俺に威嚇する魔獣。やばい、これコカトリスじゃん。真正面で鳴き叫ばれたら体が硬直する。鳴かれる前に首を切るのが鉄板の倒し方。あと、確か槍とかで攻撃すると、槍を伝って毒の攻撃もあるから毒にも気を付けなければならない。今は怪我をしているみたいだけど、飛ばれたら厄介だ。
口を開けて鳴く体制に入るコカトリス。鳴き声を浴びるわけにはいかない。後ろに回り込んで回避するか、その前に切りつけるか・・・
判断が遅いと命取りになる。俺は双剣で顔を切りつけすぐに横に移動した。
鳴く前でよかった。目の辺りを切りつけられたコカトリスは興奮して足をドタドタ踏みならし、暴れ出す。チラッとリアムを見るとオリヴァーたちと合流出来たようだ。再び鳴く体制を取ったので、後ろに回避しようとすると、コカトリスがくるりとオリヴァーたちの方を向いて鳴く体制になった。
「オリヴァーさん!そっち向いた!鳴く体制だ。」
声をかけるとオリヴァーも後ろに回り込む。しかし、チームメイトの一人が木の根に躓き転んでしまった。すかさず鳴くコカトリス。仲間が一人体を硬直させられ、動けないでいる。その間に俺が一撃首に切り込んだ。しかし、思いのほか首が硬かった。致命傷にならない。しかも剣を伝って毒の攻撃を受けてしまった。
暴れるコカトリス。硬直のチームメイト、毒の攻撃で体に毒が回ってきた俺。剣を持つ手がしびれてきた。
「俺が行く!」
オリヴァーが剣を構え、素早い動きで首の後ろ側に回り、首を切りつけた。
俺が切りつけた分と、オリヴァーが切りつけたのが致命傷になった様で、コカトリスを倒すことが出来た。安心もつかの間、狼煙の上がっていた方にまだ魔獣が居るようだ。魔獣の鳴き声がした。
「ノア!毒を受けたのですか?すぐに解毒剤飲まないと命を落とします。私に掴まって!」
リアムが急いで俺を抱き上げ風魔法で本部に帰る。
「俺たちもすぐに追いかける!」
硬直したチームメイトを2人係で抱え、オリヴァーが敵がいないか見渡しながら移動していた。
本部に戻るとパーシーが飛び出してきた。
「ノア!無理しないでって言ったじゃん!」
毒が全身に回ってきて、パーシーにごめんって言いたいのに、口が開かない。はぁはぁと息をするのもつらい。手も足も何も動かせそうに無い。目も見えなくなってきた。
あぁ、今世はここまでか・・・・




