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ハワード領に帰省した日

 オリヴァーの傷口はふさがった。しかし、まだ完治とはいかない。

どこかちゃんとした治療師に光魔法で治療して貰わなければならない。

  

 別の魔獣が近くにいたらしく、王城の騎士団が駆除していると、馬に乗った数名の騎士団が俺たちの方にやって来た。彼らの頭上には飛行灯。

 「ノア坊じゃねーか!何やってるんだこんな所で。この辺は魔獣豹がうろついてる危険な場所だぞ。その兄ちゃん、怪我したのか?」

 ハワード領騎士団だった。団長が俺に気づき声をかける。

 「団長!王命で高麗ニンニック草の採取に来たんです。彼は魔獣豹に噛みつかれたので、回復薬で治療しましたが、光魔法の使い手が居なくて困ってます。」

 王城の騎士団に、彼らはハワード領騎士団で危険人物ではないと告げた。

 「なるべく早く光魔法の治療を受けた方がいいな。ノア坊、どの宿に泊まるか決まってんのか?」

 「まだです。これから決めるところでした。」

 「そんならよぅ、一旦ハワード領に帰って来たらどうだ。光魔法の治療師もいるし、家の方がゆっくりできんだろ。ついでに今から一緒にこの辺の魔獣駆除するわ。先にハワード領に向かいな。」

 そう言って、俺とオリヴァーを馬車に乗せ、ニックさんが御者を務め隣に冒険者が飛行灯の操作、一人のハワード領騎士が単独騎乗してハワード領に向かった。

 「なんであんな所に居たのよ。」

窓からハワード領の騎士に聞くと

 「ハワード領付近の魔獣駆除で逃げてきた魔獣がこの辺りに住み着きへーミッシュ領主様から魔獣駆除の依頼がきてまして、最近は依頼金も入りますので、騎士団の方で駆除しております。ノア様お久しぶりでございます。学園は楽しいですか?」

のんきに話してくるけど、学園の話出来る雰囲気じゃないのよ。オリヴァーの一命は取り留めたけど。

 「突然帰ってお祖父様たち驚くだろうな。王城騎士団と冒険者の泊まる準備出来るかな・・・」

 心配になってきた。


 ハワード領に近づくと、

 「先に行って知らせて参ります。」

と、騎士が屋敷の方に先に行ってくれた。俺は窓から道案内をして、久しぶりにハワード領の屋敷に帰ってきた。屋敷の前にはお祖父様とお祖母様、そして、護衛たちが出迎えてくれた。

 「ノア!大変だったな。すぐにけが人を部屋に運べ。治療師が待っている。」

お祖父様がそう言って、数名の騎士にオリヴァーを部屋に運ぶように指示をしていた。

 部屋に入り、魔獣豹に襲われた時の状況、中程度の回復薬と、高麗ニンニック草を使った回復薬を投与したと説明する。

 「高麗ニンニック草を使った回復薬が良い仕事をしています。私程度の光魔法でも十分完治します。しかし、失われた血は回復しませんので、しばらく安静にされるとよいでしょう。目覚められましたら、消化の良い物を食べさせてください。それから、水分も忘れずに。」

 そう言って光魔法をかけて治療は終わった。

 オリヴァーが寝ているベットの側の椅子に腰を下ろし、ひとまず安堵した。

 お祖母様が部屋に来て、

 「ノアちゃん、おなか減ったんじゃない?バーチ様がお目覚めになるまでしばらく掛かりそうだから、その間にご飯食べちゃえば?さっき王城の騎士団の皆さんも到着されたわ。治療の事を報告に行ったらどうかしら。心配なら私が見ておくけど?」

 と言うので食欲はないけど、騎士団との今後の話し合いもあるから部屋を出て行った。

 騎士団の方の食堂に行くと団長と王城の騎士団、冒険者が食事を取っていた。

 「バーチ殿の様子はどうですか?本日はハワード領主様のお宅に泊めて頂くことになりました。ありがとうございます。」

 「さっき光魔法で治療して頂きました。傷は完治しましたが、血を流し過ぎたので、しばらく安静だそうです。」

 そう言うと、一同安心したようで「良かった」と声が漏れていた。

 「ハワード殿、高麗ニンニック草の採取をもう少ししなければなりません。明朝バーチ殿抜きで先ほどの場所に再び向かいますが、ハワード殿はどうされますか?ずいぶんお疲れのようですし、明日は我々だけで行きましょうか?」

 「いえ、僕も行きます。朝からでしたら、魔獣が居たとしても見つけやすいでしょうし・・・」

 「だったら、俺たちも行って手伝おう。大勢居たら、魔獣も来ねーだろ。ノア坊、今日は早く寝ろよ。明日の朝はえーからな!」

 団長は、良くも悪くもいつも通りだ。それが今は有り難い。


 食事の後、オリヴァーの部屋に顔を出すと、目を覚ましたらしくお祖母様に水を飲ませて貰っていた。

 「気持ち悪いとか無いですか?何か食べます?」

 「今は要らないよ。もう少し寝ようかな。迷惑かけたな。助かった。」

 「いえ、俺の方こそ助けて頂きました。ありがとうございました。」

意識が戻って会話も出来ていることに安心したのか、涙がこぼれた。張り詰めていた気持ちが緩んだんだと思う。もしオリヴァーに何かあったら、第一王子にもベンジャミンにも兄上にも、そしてオリヴァーの両親にも顔向けが出来なかった。

 困ったなって苦笑いしたオリヴァーは、俺の頭をぐりぐりなでて

 「言っただろ、守ってやるって」

って言うから余計泣けてきた。

 「さぁさ、もう少しバーチ様はお休みになられた方が良いわね。ノアちゃん、あなたも疲れたでしょ。続きはまた明日ね。」

 お祖母様に促され、部屋を出て近くの使用人にオリヴァーが意識を戻したと王城の騎士団に伝えて貰い俺は、家の調合室にこもった。


 傷ついた残り4つの高麗ニンニック草。一つはしょーもない第二王子の回復薬。こんなのに高価な高麗ニンニック草を使うのも馬鹿馬鹿しい。王命なので、作るけど。のこり3つの内1つは今回作った怪我に効く回復薬を作っておこう。そして、一つは試作で美容クリームを作った。最後の一つは薄くスライスして、温風で乾燥させた。傷が付いても痛む前に乾燥させて、薬品を作るときに水で戻して使えないか調べようと思ったのだ。これが大丈夫なら今後高麗ニンニック草の採取も楽になるし、手軽に調合も出来るようになる。

 薬草の事を考えながら、俺はもっと剣技を頑張ろうと思った。人が襲われているのを見て、どうしたら落ち着いて行動出来るのだろうかとずっと考えていた。





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