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横取りされて、助けて貰った日

 へーミッシュ領近くに向けて再び馬車は進み出した。途中、魔獣に襲われたりしたけれど、王城のエリート騎士団によって、サクッと駆除された。素晴らしい見事な連携プレーだった。付いてきた冒険者もそれなりの腕はあるが、連携プレーの足手まといにならないよう側でじっとしていた。魔獣の解体も終わり、昼食にリアムの持たせてくれた弁当をみんなで食べ、8人の雰囲気も最初のぎこちなさは消え、気さくに会話できるようになった。弁当を用意してくれたリアムの心遣いに感謝だ。

 途中何度か休憩を挟み、夕刻の少し前にへーミッシュ領近くの群生地に着いた。

 「夕暮れまで時間があまりない。採取できるだけして、残りは明朝にしよう。騎士団はニックを除いて、周りの警護、冒険者の君は群生地の案内と採取、バーチ殿とハワード殿は採取でお願いします。」

騎士団のリーダーが各々役割を分担していく。


 「なるほどね~こりゃ採取にしくいわ。」

石が高麗ニンニック草の周りに沢山あってスコップを入れる所が難しい。しかも土が硬い。高麗ニンニック草は土の中で5センチくらいの球体で成長する。多分この位の大きさだろうなと目星を付けてスコップを土に入れなければならない。

 「ニックさん、俺に採取の仕方を教えてもらえないだろうか。何分初めて薬草を採取するので、不安なのだ。」

オリヴァーはそう言ってニックに声をかけ、コソッと

 「今のうちに極秘任務遂行せよ。」

と俺に呟いて、俺の居る所から少し離れた所で採取することにしたようだ。

 とりあえず一回ちゃんと採取するか~と石もあり、かなり離れた所でスコップを土に入れるとなんとギリギリの所だったらしく傷は付けなかったが、想像以上の大きさの高麗ニンニック草であった。

 通常の物が5センチくらいだとすると、ここの高麗ニンニック草は8センチ位あり、栄養も行き届いているのか艶々と丸々と一目で良い品と思わせる物だった。こんな石だらけの痩せた土地っぽいのにこんなに良い状態の高麗ニンニック草が育つのか?肥料満点の畑よりこういう土質の方が高麗ニンニック草にとっては育ちやすい環境なのか?などと考えていると、オリヴァーとニックのいた方から悲鳴が聞こえた。

 「あぁ~バーチ殿!もっと外側にスコップをお入れください!そんなに茎の根元にスコップを入れますと、高麗ニンニック草に傷が付いて・・・あぁ~!!!!」

 ニックが止めているのに、オリヴァーはすごい早さと圧倒的な力でざくざくとスコップを土に入れ、どんどん掘り起こしていた。繊細な作業とはほど遠い。そして、ニックが半狂乱になって

 「あぁ~!!!高麗ニンニック草が切れています。スコップの先で切ってしまっています!!バーチ殿!もっと外側に!!!あぁ。なんともったいない!!とりあえず痛む前にハワード殿何か薬を調合してもらえませんか!!!このままでは、大量に高麗ニンニック草が痛んで、破棄せねばなりません!!!」

 ・・・・あんなに練習した「あぁ。なんともったいない。・・」をあっさり横取りされている・・・ニックの半狂乱に騎士団の連中も「どうした?どうした?」と集まってきた。オリヴァーはがっつり落ち込んでいる。オリヴァーって不器用だったんだな。


 「すまない・・・まさか土の中にあんな玉があるとは思わなかった・・・」

オリヴァーがしょげちゃってる。

 「まぁ、しょうが無いじゃないですか。ここの高麗ニンニック草は通常の物より大きめですからオリヴァーさんなら15センチ外側にスコップの先を入れれば今度から大丈夫だと思います。俺が傷を付ける前で良かったです。被害が最小限に留まりましたし。」

 「一つで良かった傷を付ける高麗ニンニック草が5つも出来てしまった・・・・」

 「残りの4つで別の薬を調合します。今から調合しますので、ちょっと道具を取ってきます。」

そう言って場所の中にある荷物を取りに行こうと近くの木に近寄った時、俺の頭上から黒い影が落ちた。

 「危ない!!!」

オリヴァーの叫び声と同時に突き飛ばされた。

 え1?と思って振り向くとオリヴァーが魔獣豹に襲われ、左腕を噛まれていた。木の上で休んでいた魔獣豹が夕方近くになり行動を開始したようだった。

 腕から血がどんどん流れ出し、咥えた腕を離す気がなさそうな魔獣豹。オリヴァーが必死に離そうとするが、血は益々流れるだけ。騎士団が気づいて近寄ってきたが、暴れる豹に狙いを定められずにいた。

 どうする?どうして?

 人が魔獣豹に襲われているところを俺は初めて目の当たりにし、動揺していた。尻餅をつきながら、何も考えがまとまらない。オリヴァーは、血が流れすぎたのか、最初は抵抗していたのに、段々力が弱くなり意識が朦朧としているようだった。

 はぁはぁと息使いが荒くなり喉に何か詰まったように痛い、なんとかしなければと思うのに、何をどうして良いのかわからない。足が、手が何かに拘束されているように動かすことができない。このままではオリヴァーの腕がちぎれる。それだけはわかる。

 駆け寄ってきた冒険者が尻餅をついている俺につまずき、

 「なんとかしねーと、魔獣豹の弱点は喉だ!拘束バンド出来るやつはいねーのか!?」

 怒鳴るように言った。魔法の拘束バンドで首を絞めろと言っている。しかし、暴れ回る魔獣豹に誰も狙いを定められない。

 なんとかせねばと、とっさに震える指から高圧の水の弾を出し、魔獣豹に当てた。

 ビュン!と指から出された水の弾は威力が強く魔獣豹の横っ腹に当たり、腹にめり込んでいった。

 「キャン!」

魔獣豹が鳴き口を開けて、痛がっている。

 「今だ!」

騎士団に冒険者が叫ぶと、騎士団が剣で喉をズサッと切りつけた。

 オリヴァーに這いずり近づいて怪我の状態を確認する。

 「オリヴァーさん!オリヴァーさん!」

血がダラダラ流れて、このままでは出血多量で危ない。呼んでも返事をしないオリヴァーの顔色が段々色を失っていく。

 「誰か!光魔法の使える人は居ませんか!?」

必死で騎士団に問うが、静かに首を横に振られてしまう。

 「ニックさん!止血してください。騎士団の方は周りにもう魔獣豹が居ないか確認をお願いします!」

叫んで、馬車の中の荷物を取りに行こうとしたが、足が震えて歩けそうにない。

 「兄ちゃん、しっかりしろ!」

バシッと背中を冒険者に叩かれる。俺は両頬をバシッと叩いて気合いを入れ、必死に立って馬車まで駆け寄った。


 落ち着け、落ち着け、落ち着いて調合するんだ。光魔法も今は出来ない状況、せめて怪我の回復薬を作って飲ませるか、傷にぶっかけなければならない。幸い高麗ニンニック草が今手元にある。普通の回復薬より効果はあるはずだ。鞄の中から調合に必要な薬草、乳鉢、量りなどを出し、持って来ていた二つの飛行灯(空中に浮かせる魔導灯)と取り出し、騎士団に向かって声をかける。

 「誰か風魔法の得意な方は居ませんか!」

冒険者が

 「俺で良かったら風魔法は得意だ」

 と言うので、折りたたみのプロペラを組み立て

 「下からそっと風を当ててください。ある程度の高さになるまで上がったらしばらく様子を見て、そのうち勝手にこれが回転しますから・・・後は行きたい方向に風を当てて移動させてください。」

 そう言って、飛行灯を点灯させ、騎士団の魔獣を確認する所まで飛ばした。

 「おぉ~!」とか言っているが、今はそれどころではない。あたりは薄暗くなってきている。

 「ニックさん!止血はできましたか?得意でなくてもニックさんは、こちらの飛行灯に風を送ってください。オリヴァーさんの様子を見ながら!」

止血しているニックの元に走って行って飛行灯で辺りを照らした。

 オリヴァーは、気を失ったまま。顔色は非常に悪い。

 「ここで調合します!騎士団の方で持っている回復薬があればそれも使いましょう。」

 回復薬はあるなら使った方が良い。騎士団の回復薬は中程度のものであったが、これをまず傷にかけて、今から作る高麗ニンニック草を使った回復薬をオリヴァーに与えて、出来れば光魔法をかければ傷口は治ると思う。

 高麗ニンニック草をナイフで刻み乳鉢に入れ、持って来た他の薬草も入れてすり潰す。気持ちが高ぶっているができるだけ丁寧に、丁寧にと自分に言い聞かせて出来た薬品をオリヴァーの口元に乳鉢ごと持って行って飲ませる。一口でも飲めばいい。目をそらしたくなる傷口に残りをかけようとしたら、ニックに乳鉢を奪われ、そのまま傷口にかけてくれた。

 「慣れないと傷口を見るのは辛いですから・・・」


 

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