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「あぁ。なんともったいない。」マジで練習した日

 馬車の中で俺は前々から気になってることをオリヴァーに聞くことにした。

 「兄上は側近候補の業務をちゃんとこなせているのでしょうか?」

毎度毎度俺をベッタベタに甘やかしているので、ベンジャミンやオリヴァーの手を患わせているに違いないと思っている。

 「ヘンリーがおかしくなるのは、君の前でだけだ。普段は冷静沈着でテキパキ仕事をしている。逆に俺が聞きたい、君は俺が見る限りいつも毅然とした態度であるのに、ヘンリーの前ではずいぶん甘えているがそれはどう言うことなのだ。」

 「あー、俺が10歳の時家出したって話し聞いてます?親からないがしろにされて、ある日ぶち切れて家出したんです。兄上だけは僕をかわいがってくれたのに、ひと言も何も言わずに家出したので、未だに後ろめたさがありますね。だから、兄上の前では以前と同じ態度でいようと思ってます。兄上も喜んでくれてると思ってるのですが、そろそろやめた方がいいでしょうか。」

 「なるほどな。良いんじゃないか?ヘンリーも君に甘えられて生き生きしているからな。」

 

 なんて話しながらも馬車は進む。

 途中馬の休憩があった。塩を与えたり、水をやったりして馬を休める。

 俺は木陰で、その辺に生えている草をそっとちいさなスコップで採取する練習をしていた。

 俺は薬草採取の経験が無かったのだ。畑で育てた薬草の収穫とは違い、原っぱなどにある薬草は根がしっかりしていることもあり、畑のふっかふかの土から引き抜くのとはわけが違うらしい。俺はアルバートに指導して貰い採取のコツをつかんでいった。今回は高麗ニンニック草という非常に高価な薬草なので、植物園の畑に移植出来るよう気を付けて採取しなければならない。

 「緊張してますか?」

急に声をかけられ、ビクッと頭を上げると王城の騎士団の一人が話しかけてきた。

 「今回は大変な任務ですね。土質も石の混じった非常に固い物だと聞いています。しかし、ご安心ください。私の実家では母が薬師をしていまして、子供の頃から私は母の手伝いで森の薬草など採取していました。高麗ニンニック草を採取したことはありませんが、よく似た薬草を採取した事があります。貴重な高麗ニンニック草ですから、一つとして傷を付けずに採取しましょう。お任せください。共に頑張りましょう!」

 「あぁ。なんともったいない・・・」

って言えそうにない雰囲気。えー!やばいよ。わざと傷つけて調合なんて無理じゃない?

 「アァ、ソレハタノモシイデスネ。ヨロシクオネガイシマス。」

片言で答えてすぐにオリヴァーを探す。


 「オリヴァーさん!オリヴァーさん!ちょっと困ったことになりました。先ほど、騎士団の方に話しかけられて、薬草の採取経験があるから任せておけ、傷一つ付けずに採取しましょう。って言われたんですけど、こんなんで、傷わざと付けて調合って無理っぽいです。」

どうして良いのかわからず、オリヴァーを頼る。

 「なに?採取経験者がいるのか!多分、騎士団で気を利かせて採取出来る者を寄越したんだろう。有り難いが、困ったことになったな。どの人が話しかけてきたのか教えてくれ。」

 あたりをさがして、みつけたのでこっそり教えると、ニックさんという人だそうだ。気さくで真面目。面倒見が良い人らしい。わざわざ俺に声をかけてきたんだから面倒見が良いというのは納得である。

 「ニックさんか・・・俺の方で採取の時気を引いてみる。その隙に傷を付けてくれないか。後はわかっているな。『あぁ。なんともったいない。』だぞ。ちゃんと言えるか?今練習してみるか?」

なんで?何の練習?そんなのそれっぽい事を言えば良いんじゃないの?

 えーとか言って渋っているのに、練習しようと言ってくる。こんな練習より採取の練習の方がよっぽど意味がある。 

 「あぁ。なんともったいない。痛む前に何か調合してみます。」

 「違う!『あぁ。なんともったいない!とりあえず痛む前に何か薬を調合します!!!』だ。なんともったいないまでしかあってないぞ。しっかり!もう一度!」

 「・・・あぁ。なんともったいない。とりあえず痛む前に何か薬を調合します」

 「破棄がない!もっと元気よく、傷を付けてやばい!でもこれを無駄にしては駄目だという気持ちを前面に出して!ほら『あぁ。なんともったいない!とりあえず痛む前に何か薬を調合します!!!』続いて!」

 「あぁ。なんともったいない!とりあえず痛む前に何か薬を調合します!!!」

 「よし、いいぞ。もう一度!」

 「あぁ。なんともったいない!とりあえず痛む前に何か薬を調合します!!!」

 「いいぞ。もう一度!」

 「あぁ。オリヴァーさん!騎士団の皆さんがこっちを見ています!!!どうしますか?ばれてませんか?これ?」

 たしかベンジャミンが、オリヴァーは真面目で融通が利かないところがあるから、気を付けてくれと言っていた。

 「どうされたのですか?何が痛むのですか?調合とは?」

騎士団のリーダーが聞きに来た。しっかり聞かれたこの台詞を高麗ニンニック草を傷つけてから言ったなら絶対わざとだってばれてしまう。

 「なんでもない。極秘任務の打ち合わせだ。気にしないでくれ。」

馬鹿なの?ねぇ、リーダーが困惑してるよ。そうでしたかって空気を読んで向こうに行ってくれたけど、もうこの台詞言わない方が極秘任務遂行出来そうだけど、どうする?

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