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巻き込まれる日

 程なくして、王城治療室から薬師が来て男爵令嬢から発せられる匂いを鑑定した。

 「今薬品をお持ちですか?有れば提出願います。」

そう言われて、観念したのか制服のポケットから小さな小瓶を出した。

 「街で売られている精力増強剤です。少量の液体を体に拭きかけて使用します。しかしちょっと使用量が多いように思います。」

そう告げると、小瓶を宰相に提出し、男爵に鎮静剤の錠剤を飲ませてから部屋を退出していった。

 「換気してもよろしいでしょうか?」

俺は王の許可を取って風魔法で部屋を換気した。しかし、隣に座っているので相変わらず匂いはキツい。

 

 「知らなかったんです!街の薬屋で相手が私のフェロモンでメロメロになるって聞いて。精力増強剤だなんて、そんなの知らない・・・」

 泣きながら訴える男爵令嬢。第二王子と側近候補だけが同情の目で見ている。

 「フェロモンでメロメロですか。婚約者のいる相手にわざわざ近寄って誘惑する気があったって事ですね。それだけでも問題ですよ。」

 ガルシアが冷たく言い放つ。

 「そう言うところよ!デービィット様があなたのその冷たい態度が嫌で私に癒やしを求められたのよ!」

 「そうだ!俺はお前のその態度が気に入らない。いつもすました顔で、にこりともしない!口を開けば注意ばかりで、俺が努力している勉学も剣技も何でも無いようにこなし上から目線馬鹿にするような目で俺を見る。冷血漢だから俺がブルックリンと抱き合ってたって何でも無いように平気で声をかけるんだ。大体俺がなんで男と婚約しなければならない?なんで俺ばかり我慢しなければならないのだ!」


 静まりかえった部屋で、王が口を開いた。 

 「デービィット、お前にはすまないと思っている。しかし、王家の掟に背くわけにはいかん。どうしてもスカイラー男爵令嬢と結婚したいのであれば、リアム・ガルシア公爵令息との婚約を解消して婚約することは出来る。しかし、その場合お前は王族として籍を抜き、男爵家に婿入りというかたちになるが、それでいいのか?」

 「え!?それは・・・困ります。スカイラー男爵は長男が継ぐ予定になっております。殿下と婚姻となりますと、長男はどこかに入り婿させよということでしょうか・・・」

急に入り婿とか言われて、慌てる男爵。かわいそう。

 「わたしも困ります!私は殿下の側室にしてあげるって言われました。公務はガルシア公爵令息に任せて私は殿下を癒やすだけで良いって!」

 「俺も嫌だ。何で男爵なんだ!王族から男爵ってあり得ないだろう!」

 馬鹿なの?ねえ、馬鹿なんだね。第二王子は女性の側室持っちゃ駄目って、後継を作らない為に男性と婚約って若葉のお茶会ん時聞いたけど?しかもさ、その言い方だと面倒な公務をガルシアに押しつけて自分たちはイチャイチャして過ごす予定だったんでしょ?もうさ、みんなの顔見てみなよ、呆れちゃってるよ。王家の教育どうなってんのよ。

 ため息をついた王が、

 「すまない、私の教育が不行き届きだったみたいだ。デービィットと、側近候補の二人は夏期休暇に再教育をする。ガルシア公爵、申し訳ないがしばらく現状維持でいてもらえないだろうか。恥ずかしい話だが、私はこんな息子でもかわいいと思っている。今回の件はここにいる者だけの秘密と言うことで外部に漏らして欲しくない。ガルシア公爵令息には迷惑をかけていることは認識している。本当に申し訳なかった。しかし、デービィットには君の様なしっかりした人が必要だ。どうか今回の件はなかったことにしてもらえないだろうか」

ガルシアに謝ってこの報告会をしめようとしていた。

 「私は別に婚約解消でも構いませんよ。この先殿下に良いように使われる位なら解消して殿下は男爵令嬢と婚約成されたらどうです?」

 そりゃそうだよな。俺だってこんな男まっぴらごめんだわ。

 するとアンドリュー王が慌てて、

 「ガルシア公爵令息の気持ちはわかる。しかし、君たちの婚約は10歳の時に決まった、国民全員が知っている。そう簡単には解消できぬのだ。今後このような事が無いよう言い聞かせる。どうか許してくれないだろうか。」

 宰相もガルシアに「王自ら謝罪しておられる、納得してもらえないだろうか」と言って、お開きっぽくなった。

 結局何が決まったの?側近候補と第二王子が夏期休暇に再教育。ガルシアは今回の不貞に目をつむり婚約続行って事だけじゃん。

 「業務怠慢の給金返金と薬品使用はおとがめなしって事ですか?男爵令嬢との関係はどうするんですか?」

関係ない俺がはっきりと聞いてやる。お前よけな事言いやがって~って目で見られているが構うもんか。

 「それについては後日話し合う。」

と宰相が、もう今日の所は勘弁してって顔で言うから後日なんとかするんだろう。俺が口に出すことではなかった。

 「では、ここであったことを外部に漏らさないという契約書に皆サインをしてもらう」

と宰相が言い出した。

 「あ、僕はサインしたくありません。」

はっきりと言った。なんで俺がしないといけない?はあ!?とか何故!とか第二王子が言ってるけど、逆に聞きたいなんでサインすると思った?友達でもなのに。

 「大体なんで僕がサインしないといけないんですか?皆さんにはそれぞれメリットがありますよね。王家の皆様は第二王子殿下の不貞を隠せる、側近候補のお二方は側近候補を外されないし、男爵令嬢は殿下を誘惑したのは自業自得ですから、仕方ありません。公爵令息は・・・まぁ、ご自分で婚約を継続させると判断なさったので、メリットがかどうかわかりませんが、今後仕事を押しつけられる事は無くなったわけですし・・・では僕は?僕のメリットは何でしょう?」

 そう言ったら、周りの目が鋭くなった。

 「貴様!王家を脅すのか!?金銭か?金銭を要求しているのか!」

宰相が目をつり上げて怒鳴っている。

 「確かに一理あるな。君は証人としてよばれただけであったしな。そういえば第一王子殿下が君に見られたらもう逃げようがないとおっしゃっていたが、どういう意味なのか説明願えるかな。」

 公爵様が俺に言ったら、第一王子も

 「ここで、ノア君をちゃんと説得しないと、後々とんでもないことになりそうだね。ノア君、ごめんね、こんな事に巻き込んじゃって。これ、ヘンリーにばれたら私が怒られそうだよ。ノア君、君の欲しいものをあげるから今回はサインしてくれない?で、証拠もさ、提出して欲しいな。」

物でつろうとする。

 「金銭も物も要りません。僕が持っている証拠は今日の分しか有りません。しかし、ここで証明するのはちょっと・・・はばかれます。」

 「そんな事言って持ってないんだろう!あるみたいなこと言って兄様を騙してるんだろう!」

 「そうよ、持ってないくせに脅してるんでしょ!お金もホントは欲しいんでしょ!」

 「いや、あなたたちが恥を掻くから辞めといたら良いと言ってるんですけど・・・見ます?」

そういった瞬間、王殿下、宰相、第一王子がビクッとした。この3人は魔導塔主窃盗事件の時謁見の間のいたもんな。既視感あるわ~って顔で息を飲み込んでいる。

 「ディー!辞めといた方が良いよ。」

 「第二王子殿下!証拠はもう良いじゃないですか!」

 「デービィット!お前が恥を掻くと思うぞ、大人しくしておけ!」

三人が必死で止めるのに、ガルシア公爵令息が

 「私も興味があったんです。彼は証拠があったと確かに言っていました。見せられるのであれば見せて欲しい。」

 興味持っちゃった。


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