居たたまれない日
コの字型の長机が並んだ会議室のような部屋に通された。
議長席は、中央に宰相、左右にガルシア公爵と子息のリアム。上座には、アンドリュー・クリスエバート王、王妃、第一王子、第二王子、側近候補のマシュー・ターナーの父、マシュー。反対側の下座にメイソン・バーリーの父である王城騎士団長、メイソン、ブルックリン・スカイラーの父、ブルックリンそして、俺の順で着席している。
そう、俺も着席している。もう王城に連れて行かれたときは遠い目をしたよね。なんで俺まで?ってずっと頭の中文句だらけだった。しかし、ここは王城。大人しく言われたことだけ答えるのみ。不敬と捉えられないよう気を付けるぞ!だって仮にも俺貴族。と自分に言い聞かせて座ってます。しかし、隣の女の匂いがキツい~。ハンカチで鼻と口元をずっと押さえている。そうこうしているうちにやっと報告会が始まった。
最初にリアム・ガルシアが挨拶をしている。
「本日は急な招集にもかかわらず、皆様参加くださりありがとうございます。さて、今回緊急に招集いたしましたのは、第二王子殿下とブルックリン・スカイラー男爵令嬢の不貞現場を目撃しましたのと、側近候補でありますマシュー・ターナー伯爵令息及び、メイソン・バーリー子爵令息の業務怠慢についての報告です。まず、側近候補のお二人の件からご報告致します。先の第二王子殿下の城下視察計画書ですが、前回まで私が作成しておりました。今回の計画書はご本人が作成したと思いますが、お父上である騎士団長、この事について率直な感想をお願いします。」
「はい、誠に恥ずかしい話ですが、今まで息子が作成したと思っておりました。今回第一王子殿下よりガルシア公爵令息様が作成した計画書を提出されたときは驚きました。今まで同様、完璧な計画書で騎士団の警護の配置まで考えられている素晴らしいものでした。そして後日息子が提出しました計画書は、警護の事を一切考えていない視察というよりは遊びに行くといった感じのつたない計画書でした。今までの計画書とは雲泥の差である息子の計画書を見たときに、今までの計画書を作成していたのは息子ではないと確信致しました。」
耐えているが怒ってるんだろうなぁと思わせる声に場の空気が一気に緊張感で満たされる。
「バーリー子爵令息、ターナー伯爵令息は、側近候補であるにもかかわらず、最近は殿下のそばを離れることも多いですね。この事についてはどうですか?」
今度はターナー伯爵が答える。
「学園にいる間はどのようなことがあっても、側近候補は殿下のおそばに居なければなりません。それは、二人とも居なかったということでしょうか?」
「はい、二人一緒には居られましたが、そばに殿下の姿がなかった時は1度や2度ではありません。それから、ターナー伯爵令息は、公務の補佐を務めてらっしゃいますが、最近は私の方で殿下の公務をしておりました。補佐として私を手伝うこともなかったので、お二人は、業務怠慢ということで、2年分の給金の返金を求めます。」
そう言って鞄の中から書類を提出した。どうやら、第二王子殿下の公務の書類らしい。アンドリュー王も側近候補の父親らも額に手をあてため息をついている。
議長席の宰相が、
「それも問題ですが、大きな問題として、第二王子殿下とスカイラー男爵令嬢の件も話し合わねばなりません。デービィット様、本当にお二人は深い仲なのでしょうか?王族の婚姻は純潔を求められます。これが事実なら、大問題にございます。正直にお話ください。」
そうきりだした。スカイラー男爵はずっと顔色を悪くうつむいている。王家の皆さんも眉間にしわを寄せている。
「事実ではない。勝手にガルシアが騒いでいるだけだ。確かに側近候補の二人は仕事をさぼっていたのは事実だが、俺とブルックリンの不貞の件は誤解だ。何もない。」
・・・マジで言ってんの?じゃあ、俺なんでよばれたのよ。俺一応証人よ。ガルシア公爵令息の顔見てみなさいよ、『あほか、こいつ』って呆れてるじゃないの?仕事を今までテキパキ代わりにしていた人が仮に嘘ついてとして、サボっていた人の言うこと誰が信用するのよ。絶対真面目に仕事していた方信用するでしょうよ。しかも側近候補二人を庇うこともしないんだ・・・二人の顔見なさいよ、眉間にしわ寄せて怒りに耐えてるでしょうが。
「殿下往生際が悪いですよ。私は実際にあなたたちが抱き合っているところを見てます。不貞真っ最中の所に行って声をおかけしたでしょう。」
そうガルシアが言った途端、部屋中の人間が『マジで?お前セックス中マジで声かけたのか?』って目で見た居た。わかります。俺も「さあ、行きますよ」って言われたとき、そんな顔してたと思う。
「それに、証人としてノア・ハワード伯爵令息も来て頂きました。ハワード伯爵令息と私はお二人の不貞現場を目撃しました。」
一斉にみんなが俺を見る。そして、第一王子が俺の胸元を見て
「ノア君も見たの?あぁ、じゃあ、もう確定だね。ディー、もう観念した方が良いよ。リアム相手じゃ勝てないよ。素直に謝って今後どうするか決めた方がいいよ。あがいても時間の無駄だよ。」
と、第二王子に謝罪を促した。宰相は俺に目撃したのか確認し、うなずくと今後どうするかとという問題に変わっていった。
「はっ?待てよ!こいつらが嘘ついてるかもしれないだろう!ハワードに見られたからと言ってなんだというのです。やってもいないこと認めるわけ無いでしょう!」
「そうですわ!私たちはただおしゃべりしていただけですわ。友人同士がおしゃべりもしてはいけませんの?」
スカイラー男爵令嬢まで俺に向かって噛みつくように怒鳴ってきた。
「それにさっきからなんですの?口元にハンカチをあてて!人に見せられない何かありますの?」
もう男爵令嬢に背をむけてガン無視したら、
「何か問題でもあるのか?」
と、宰相に聞かれるから
「男爵令嬢が着けている精力増強剤の匂いがきつくて鼻が曲がりそうです。これを吸い込みますと、王家の皆様の御前で粗相をしてしまいますので、ご了承願います。出来ればここに薬品に詳しい人をよんでいただき、すぐに薬品の鑑定をお願いしたい。」
「何言うのよ!これは私のフェロモンだって言ってるじゃない!」
「あのね、俺、伯爵でお前男爵なのよ。もっと口の利き方に気を付けろよ」
ぼそりと呟くとビクッとおびえる男爵令嬢。
俺が、薬品鑑定を申し出たので急に慌ただしく宰相が廊下に出て、鑑定士を連れてくるように指示していた。そして、男爵令嬢の近くに来て
「確かに甘い匂いがするな。」
と言ったので、
「長く嗅いではいけません。そろそろスカイラー男爵もキツいのでは?できたら鎮静剤もご用意された方が良いと思います。」
そう言うと、男爵は無言で何度も首を縦に振っていた。




