自分で蒔いた種を刈り取れなかった日
「今度お茶会に招待されまして、俺制服以外まともなよそ行きの服持って来てないんですよ。アルバートさん、子爵家の方ですよね?魔導灯いくつかプレゼントするんで服かしてもらえません?あと着付けと髪もセットして欲しいです。」
水をやりながらだるそうに外でくつろぐ治療室のフィン・アルバートに声をかける。
「あぁ?お茶会だぁ?そんなもん実家に帰って着替えてくりゃ良いだろ?」
「こちらにも事情ってもんがあるんですよ。まぁ、実家に寄ったところで服なんて無いんですけど。やっぱりお茶会制服で行こうかな。と言うことで魔導灯はなしで。」
さっと切り上げて、水やりももうおしまいと片付け始めると
「おいおいおい、そう言うなって。行くところによっては制服じゃ駄目だろってとこ有るじゃん。魔導灯なしとか言うなよ。俺のお古で良かったら貸すから。で、どこによばれたのよ?どこの貴族の女によばれたのよ~」
にやにやして冷やかしてくる。
「王城」
「は?」
「王妃」
「は?はぁ!駄目だろ制服なんて絶対!だめだろ!つーかなによ、お前王妃様とお茶する仲なわけ?」
「いや、違いますけど。何故かお茶会におよばれしたので、本当にはっきり言って何を着ていって良いのか困っています。このままブッチしようかと本気で考えています。」
「あほか!駄目に決まってるだろ!お前マジで怖いわ。あぁ~もう!俺がなんとかしてやるから今度家に来い!あと魔導灯頼んだぞ!」
そんなこんなで、お茶会当日アルバート子爵家に寄って服を借り、ついでに未成年なのでパートナー付けてよいらしいので、アルバートに着いてきてもらった。
「なんで俺が・・・」
と嘆いていたが、家の人に
「ノア君一人で行かせる気?もしかしたら王妃様に覚えてもらえるかもしれないじゃない頑張って来なさいよ!」
と、母親にどやされていた。アルバートは黙っていたらダウナー系のイケメンなので、本当に口を開かない方が良いと思う。そんなアルバートは、俺をからかう気満々で自分の学生時代に来ていたベージュに繊細な緑の刺繍が入ったスーツを渡した。アルバートの髪色はミルクティー色。瞳は緑。自分の色を俺にまとわせたと言うことだ。
「俺は全然平気ですが、困るのはアルバートさんですよ。今日だけフィンとおよびしましょうか?」
そういうアルバートはシルバーのスーツにタンザナイトのビジューのついたリボンタイをしていた。
そして悪ノリした俺たちは馬車に揺られて王城に向かった。
王城の素晴らしい庭園のガゼボで王妃様と第一王子殿下、俺たち二人、そして何故かリアム・ガルシア公爵令息の5人でのお茶会が始まった。
「ごめんなさいね。本当は第2王子のデーヴィットも誘うつもりだったのだけど、あの子今日は出かけているらしくて・・・こちら、デーヴィットの婚約者のリアム・ガルシア公爵令息よ。」
お互い頭を下げて初めまして感を出す。俺としてはもう初対面の事は忘れて欲しい。
「それで、こちらの方は?確かアルバート子爵の方よね?」
「フィン・アルバートと申します。本日はお招きまことにありがとうございます。ノア・ハワード様の付き添いで参りました。」
大人の色気ムンムンで挨拶するアルバート。本当にちゃんとしていればモテるだろうに・・・と考えていると二人を交互に見る視線を感じた。リアム・ガルシアだ。なんとも言えない顔で俺とアルバートの衣装を交互に見ている。第1王子がその視線に気づき、
「あの・・お二人はそういうご関係で?」
と恐る恐る聞いてくる。ほら~変に悪ノリするから要らぬ誤解が生じてるじゃんか。それでも俺は意味ありげに、にっこり微笑むだけ。アルバートさん、自分で蒔いた種を自分で刈り取るときです!
「あ、あの、私は治療院で働いておりまして、治療室の前の薬草畑で私たちは知り合いまして、仲良く交流させてもらっております。」
・・・誤解が解けてません。
「まあ!薬草畑でお知り合いに?素敵ね~」
どこが?草だらけの所で知り合って素敵なわけあるか!そう思っているとリアム・ガルシアがうつむいてクスクス笑っていた。俺、この人に笑われてばかりなんだけど。
「へえ、珍しいね。リアムが笑ってるなんて。」
第1王子がそう言うけど、俺は笑ったところしか見たことありませんけど。
「それよりノアさん!あの・・・薬草薬学管理資格受験いつ頃されますの?わたくし、頂いた美容液大変気に入りましてよ。購入してお友達にお配りしたいの」
「あぁ、そうなんですね。実は、学園に編入するときに支払った入学金の事でアルバート様に馬鹿にされて精神的にショックでしばらく受験を控えようかと・・・ううううう」
泣き真似をすると
「まあ!アルバート様!からかうなんて駄目よ。愛しい人には優しくしないと逃げられますわよ。」
王妃様に言われて
「すみませんでした。ごめんなさい。」
と謝るアルバート。
「本日はこちらをお持ちしましたので、どうぞお使いください。」
そう言って美容液の瓶を3本献上すると途端に笑顔になる王妃様。
「うれしいわ。これを使ってから本当に肌の調子がいいの。ノアさん、本当にありがとう。」
「無くなったらいつでもおっしゃってください。お手紙を頂けたらすぐにお送りいたします。」
そんなこんなで、和やかにお茶会は終わった。後日アルバートから
「お前、入学金の事あんな場所で言うことないだろう。」
と愚痴られたが、
「後で怒られたらいいってあのとき言いました。偉い人にチャンスがあればチクる気満々だったので、丁度良かったです。」
と言ったら、
「お前、マジで怖いわ。」
と言われた。




