ただの学生には荷が重いと言いたい日
賑わっている食堂に入り、注文口に並ぶ列の中にパーシーを見つける。すぐに近くまで行き声をかける。
「パーシーちょっといいか?」
「えっ!ノンタンじゃん。どうしたの?学園で会うの初めてだよ。」
「兄上に学園に居ることがばれた。サロンに呼ばれてるから今から行ってくる。で、今日食べようと思っていたサンドウィッチなんだけど、良かったら食べてくれ。」
そう言って紙袋を手渡す。
「えー!良いの?もしかしてノンタンが作ったの?ノンタンの作るもん何でも美味しいもんね~」
紙袋を除いて喜んでいる。
パーシーの周りでは友達らしいい生徒が
「お前、この人と知り合いなのかよ!」
「え?あんな人居た?なんていう人?」
「薬草畑のエンジェルじゃね?」
などと騒がしかったが、無視して会話を続ける。
「でも、サロンなんてノンタン、腐っても伯爵だったんだね~」
「呼ばれたのは第一王子殿下にだ。これから根掘り葉掘り色んな事聞かれるかと思うと気が重い。」
「俺からしたら、よく今までばれなかったなって感じだよ。君のお兄さんも第一王子殿下も生徒会の役員でしょ?入学生の名簿とか見たら一発じゃん。」
「え、そうなの?兄上が生徒会役員って知らなかった。」
とりあえずがんばって~とパーシーに見送られて2階に上がっていった。
重厚なドアをノックして中に入ると、第一王子、横に兄上、後ろに筋肉質の生徒と神経質そうなメガネの生徒が並んで立っていた。
「本日はお招き頂きまして恐悦至極に存じます。」
丁寧に挨拶して初対面の二人に自己紹介をと思ったら
「楽にしていいよ~堅苦しいのなしなし。ヘンリーの弟のノア君だよ。こっちはベンジャミン・コールマン、こっちはオリヴァー・バーチ二人とも側近候補だよ。」
神経質そうなメガネがベンジャミン、筋肉質がオリヴァーと紹介された。たしか侯爵と子爵だったな。
今朝の失態があるので今日はもう不敬な事にならないよう大人しくしていたい。
そしてランチ会食が始まる。その間も兄上はチラチラ俺の方を見て
「ノア、美味しい?」
と何度も聞いてくるので鬱陶しい。当たり障りのない会話が続き、食事後のお茶を頂く頃にやっと
「ノアは学園に入学しないって言ってたのにどうして来ることになったの?あ、責めてるんじゃなくて僕は嬉しいんだけど、あんなに父上に反抗してたのにどうしてかなって思って。」
勇み足で編入届を出して入学金も支払ってしまったからもったいないから学園に通ってますなんて言ったらアルバートみたいにまた笑われてしまうかもしれない。うつむいて、良い言い訳を考えていると
「え?ノア泣いてるの?ごめんね・・・ノアは自分の意見言うの苦手だもんね。」
と、兄上が焦りだした。え、泣いてないですけど。
「泣いておりません。お祖父様に学園に行ってみてはどうだと勧められたので・・・」
「あぁ、そうなんだね。ノアはお祖父様大好きだもんね。でもどうして寮に入ってるの?家に帰って来たらいいじゃない?」
やばい、これの良い言い訳が思いつかない。父上も母上も嫌いだからですよ。なんて言えない。
黙って考えていると
「今日はえらく大人しいな。前にあったときはもっとズバズバ答えていたのになぁ~」
と、第一王子が言い出し、兄上が
「ノアは元々大人しい子なんだよ。あまり追い詰めると泣いちゃうような子だったんだよ。」
「そんな印象私にはないな。結構やられたらやりかえす感じの、大人しさとは真逆の印象だ。」
そんなわけ無いと二人でやいやい言い出したので、
「あの、寮に入ってみたかったんです。何でも自分でやってみたいなと思いました。あの、兄上・・・黙っていてごめんなさい。」
しおらしく、庇護欲をかき立てるように消え入りそうな声で話す。これでだまされて欲しい。
「あーノア!ごめんね。追い詰めちゃったかな?寮では不自由はない?帰って来たくなったらいつでも帰ってくるんだよ。」
チョロすぎて兄上が心配になってきた。第一王子は、お前誰だよ!って顔をしている。
「入学して1ヶ月過ぎたから今度新入生の歓迎会が催されるんだが、今年の編入生は君だけなんだ。新入生と一緒に歓迎会に参加できるけど、どう?」
「あ、大丈夫です。参加しません。」
秒で断ると、え?と言う顔で唖然とする兄上。しまった。すぐに仮面が剥がれてしまった。
「くっくっくっく・・・やはり私の思っていたノア・ハワードじゃないか。それより母上からノア君、君にお茶会の招待状を預かってきた。面倒だと思うけど、母上に付き合って欲しい。」
そう言って繊細な模様が封蝋された上品な招待状を渡してきた。何故?母上って王妃様でしょ。俺無理ですよ。




