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厄介ごとがあるなら1日一つにして欲しいと思った日

「ねえノンタン、本当に学園に来てる?俺一度も見かけたことないんだけど・・・」

寮の部屋を訪れたパーシーが疑わしい目で俺を見ている。

 「ちゃんと行ってる。授業もサボったことない。」

言い切ると、

「え~俺教室も見に行ったし、食堂でも見ないし・・・あやしい。」

なおも詰め寄ってくるので、

「パーシー、ちゃんと見とけよ。俺はここに居るぞ。」

と言って取っておきアイテムのモブメガネをかける。

「え?なに?どう言うこと?めっちゃ地味な男が目の前に居るんですけど!」

「これはな、認識障害の魔方陣を組み込んだめっちゃ風景に溶け込める魔道具のメガネだ。それをかけて教室に居る。お前が見つけられなかったのも無理はない。」

「すげー!ノンタン天才!ちょっと俺にも貸してよ。着けてみたい・・・ん?なんかその顔兄さんに似てない?」

ぎくり!実はモブ顔の参考にしたのは魔導灯を盗んだ男メインなんだけど、ちょっとトーマス先生の要素も含まれている。さすが弟よく気づいたな。言わないけど。

「そんなことないぞ。さあ着けてみろよ。」

何食わぬ顔で差し出し、パーシーに着けさせる。

「鏡貸して~ん~何だろ、俺が着けてもあんまり変わりない?ちょっと地味目になっただけ?」

「そんなことないぞ、かわいいぞ。」

「適当なこと言わないでよ。でも毎日これ着けてるの?俺学園でノンタン見つけられねーじゃん。一緒にご飯とか食べたかったのに。」

「薬草畑の水やりの時は素顔さらしてる。会いたかったら薬草畑に来てくれ。」

そう言うと

「薬草畑ってめちゃくちゃ遠いじゃん。ん?薬草畑?・・・もしかして騎士科の連中が噂してる銀のエンジェル?」

なにそれ?銀のエンジェル?5枚集めるお菓子の缶が想像できるんですけど。

「あんまり姿を現さない銀のエンジェル。見かけたらラッキーだって。すぐ姿を消すって噂よ。」

 それ、本当に俺のことなのか?誰かに見られている自覚ないけど。


 王都にタウンハウスのない生徒は学生寮に入寮できる。ほとんどの貴族はタウンハウスがあるので自宅から馬車に乗って通学しているが、俺は家に帰りたくなかったのでお祖父様に頼んで入寮した。タウンハウスの部屋に比べると狭いが1人部屋なら十分の広さだ。簡易のキッチンとシャワールーム、トイレがついている。パーシーも入寮している。ミラー領もずいぶん潤ってきてタウンハウスの購入を考えているようだが、もう少し考えてからにするとトーマス先生が言っていた。

 トーマス先生は、俺が学園に編入するにあたり、王都とハワード領を行ったり来たりする生活になった。俺がオーナーのミラー領が出店したカフェが今王都で人気になっているのでそれの事務的な仕事と、ハワード領の事務処理、それから参考書の執筆で忙しい毎日を送っている。参考書の執筆というのは、テストには教師が生徒にどうしても理解して欲しい箇所があってそこの部分は絶対テストに出る。そういった問題を一冊の本にまとめて、これさえ勉強すれば平均点は取れますよ。という物を出版しようと思い立ちトーマス先生に担当してもらうことになった。

「そんな本出したら平均点が上がってしまうじゃないですか。」

と言っていたが、

「勉強したくない奴はこれだけやっておいたらと言われてもやらないもんだろ。」

って言ったら、しばらく上を見てなるほど・・・と呟いていたので、誰か身近にそういう奴がいたんだろうな。



 もう学園に編入して1ヶ月が経った。学園生活にも少しずつ慣れてきて気が抜けていたんだと思う。

ある朝、教室に入って授業の準備をしていたら、急に廊下の方が騒がしくなり教室のドアが開いたと思ったら兄上がやって来た。

「ノア?ここノア・ハワードの教室って聞いたんだけど、ノアいる?」

近くの生徒に聞いている。ジーザス。俺は親にも兄上にも学園に通うことを言ってなかったのでばれたと慌てた。

聞かれたのは平民の子だったようで

「あの、僕貴族の方の名前がわかりませんので申し訳ありません。」

と謝っていた。確かにクラスメートでも個人的な交流がない人の名前って話題に上ったりしないとわからないよね。ましてや、授業中もあてられることもないし、午後は皆個別に行動するしね。

無視してやりきろうと思ったのに、事もあろうに兄上は第一王子とおつきの人まで連れてやって来た。

 周りの生徒も、年上の第一王子がわざわざ3年のクラスまで来るなんて珍しいので、きゃあきゃあ騒いでいる。こんな所に出て行かなきゃなんないの?

 仕方が無いので、しれっと廊下に出て、メガネを取って

 「お久しぶりです、兄上。第一王子殿下もご健勝の様でお喜び申し上げます。」

と挨拶すると、

 えっ?だれ?あんな子居た?あれ銀のエンジェルじゃね?ハワードの次男なのか?

と、ザワつきだした。しかし俺は今、毅然とした態度で兄上と王子の相手をしなければならないのだ。兄上が!王子が!わざわざ訪ねてくるからーー!

「ノアーー!!!なんで学園にいるの?なんで家に帰ってこないの?なんで連絡くれないの?」

兄上がご乱心だ。大声で叫ぶの辞めて欲しい。

「まあ、まあおちついて。ヘンリー、そんなに立て続けに聞いたらノア君が答えられないでしょう。居るってわかったんだから、一旦落ち着いて場所を変えて話を聞いたらどうかな。ノア君、今日のランチ、サロンに来てもらえる?」

サロン・・・食堂の二階にある高位貴族しか入れない場所だろ。行きたくないなぁ~と顔に出てたんだろうな。苦笑いした第一王子が

 「嫌だと思うけど、これ、放っておくともっとうるさくなりそうだよ。今みんな注目しているからね。」

って言うから渋々

「はいわかりました。」

って返事するしかないじゃん。そうして兄上ご一行は颯爽と6年の教室の方へ向かっていった。

 はーやれやれ・・・と思ってさて、どうするか一旦トイレに行ってメガネかけ直すか~と思っていると

「おいお前、ノア・ハワードか?」

と、後ろから声をかけられたので振り返ると、金色の髪の偉そうな学生が取り巻きを引き連れて立っていた。

「そうですけど。」

(誰~?名前わかんない!名乗って!名乗って!)

「今兄上と話していたが知り合いか?」

「はい、以前お会いしたことがございまして・・・」

(兄上?第一王子の弟って事?あーそういえば第二王子同い年だったけど、こいつがそうなわけ?)

「ふ~ん・・・まあまあかわいい顔してるじゃないか。どうだ俺の側近にしてやっても良いぞ」

「デーヴィット様~私も良いと思いますわ~一緒にお茶でもお誘いしてくださいませ~」

(デーヴィット?第2王子か。)

ベタベタと寄り添う二人に

「大変光栄でございますが、我がハワードは、兄のヘンリーが第1王子殿下の側近候補となっております故、折角のお申し出お断りいたします。」

一家に一人側近でしょうが!若葉のお茶会の時学びましたよ。とばかりにお断りすると

「公の側近は無理だが、私設の側近ならなれるぞ。離宮でのんびり俺の相手をするだけで良いからな。」

ニヤニヤ笑ってゲスな事をほざきやがるl

えーーー!なに?私設の側近って!離宮でのんびりってそれ情婦の代わりって事じゃね?

「第2王子殿下の側近候補の方は皆様優秀であると伺っております。私では務まらないでしょう。どうぞご勘弁くださいませ。ではそろりと授業も開始されますので、失礼いたします。」

そう言って速攻後ろも見ずに立ち去った。目指すは誰も居ないところ!

 バッと空き教室に入りドアを閉め切って防音魔法をかけ

「はっ!?なーにが私設の側近だ!ならねーって言ってんだろうが!ばっかじゃねーの!のんびり俺の相手ってなんだよ。きっしょ!つーかなんだよ。あの女、ベタベタしやがって。貴族の女があんなに人前でベタベタするかよ。マナーも何もあったっもんじゃねーな!てか、今日サロンでランチだと?面倒の何もんでもないわ!誘うなよ。俺を!」

兄上の事や、先ほどの第二王子の事の苛ついた物全てを吐き出してたら、後ろからクスクス笑い声がする。

ハッと振り返ると、カーテンの間からプラチナブロンドの学生が顔を出した。

誰も居ないと思っていたので、めちゃくちゃ焦る。しかし顔には出さない。

 「先客がいるとは思いませんでした。お騒がせして申し訳ございません。それでは失礼いたします。」

何食わぬ顔で去ろうとしたら

「え?、無かったことにしようとしてる?君、ノア・ハワード君でしょう。」

ジーザス。名前もばれてる・・・

「はい、ノア・ハワードでございます。あなたはどちら様でしょう。社交に疎い故、申し訳ございません。」

「あ、私のこと知らない?リアム・ガルシア。ガルシア公爵家の次男だけど。知らない人が居ると思わなかったな。私もまだまだだね。」

「そうですね。がんばってください。」

もうテンパっちゃって何言ってんのかわからない。たしかリアム・ガルシアってさっきの第二王子の婚約者じゃなかったっけ?え?やばくない?俺さっきめっちゃ悪口言ってたと思う。第2王子の婚約者だったら不敬って言われたら俺・・・投獄まっしぐらじゃん・・・あわわわわ・・・

「第二王子殿下の婚約者様でございましたか。先ほどは誠に申し訳ございませんでした。」

といえず謝っておこうと頭を下げると、前に手を突き出し、

「謝らなくていいよ。きっと殿下が我が儘言ったんだね。側近になれって言われた?あの人見目の良い者にすぐ声をかけるからね」

第2王子ってなんかやけに偉そうだったし、印象悪いな。あんな奴の婚約者って大変そうだなって思ったら思わず

「ご婚約、お疲れ様でございます。」

って言っちゃったんだよね。一瞬目を丸くして笑い出したリアム・ガルシアは

「君、面白いね。おめでとうって言われることはあったけど、お疲れ様は、初めてだよ!くっくっくっくっく・・・以前一度君を見かけたことがあってずっと話してみたいと思ってたんだ。今日は会えてよかったよ。ゆっくり話したいけど、嫌われたくないから機会があればまた話し相手になってよ。今日は第1王子殿下とランチなんでしょ。がんばってね。」

そう言って空き教室から出て行った。

もう俺は疲れた。朝からあれやらこれやら・・・まだ1時間目の授業中なんだぜ。

 今日初めて授業さぼっちゃったよ。




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