思い通りにいかないと実感した日
俺は今まで自分の努力である程度のことは出来ると思っていた。しかし、今法律が変わらないとなんともしようが無いと言うことに直面してしまった。
魔導灯が領内に行き渡り、領内も活性化してきた昨今、俺は前々からお祖母様が悩んでいた肌に張りをもたらす美容液の作成に取り組んでいた。
この世界、気休め程度の潤いを与える化粧水はあっても高品質で高保湿の美容液がないのだ。だったら作ったら良いじゃない?とばかりに趣味で作って自分で試したら、あら~艶々ぷるぷるのもち肌になりました。
早速お祖母様にプレゼントしたらめちゃくちゃ喜んでくれて無くなったら作る。無くなったら作るを繰り返しているとお祖父様に
「薬草薬学管理資格を取ると製造販売が出来るぞ」
と言われ早速資格を取る為に勉強しはじめた。トーマス先生は薬草の類いに興味は無かったらしく学園時代は基礎的な事しか学ばなかったらしい。専門的なことは3年生になったら各専攻科目を決めて学ぶらしい。ちなみにトーマス先生は王城文官科だったらしい。
薬草薬学管理資格というのは、薬品となる薬草の知識、薬品の作成、効能、成分分析など薬品を扱う事に特化した資格であり、これを持っていると薬品を作る会社や、治療院で働くのに有利な資格となる。
そして、その上に薬品薬学管理資格上級と言う資格があり、これを持っていると薬品販売と作成する者の指導が行える。この販売というのが大きなポイントだ。普通の管理資格では販売は行えないのだ。つまりどこかの薬品会社や、街の薬草屋で就職し新しい薬品を作っても自分では売れないと言うことだ。上級は自分で販売出来るので、目指すなら上級と思ってまず普通の管理資格を取った。そこまでは良かったが、上級の受験資格が普通の薬草薬学管理資格保有者であり、王立学園卒業認定資格保有者となっている。
つまり学園の卒業程度の知識は持っていなければ受験出来ないと言うことなのだ。幸い俺は14歳の冬に卒業認定試験に合格したのでもう学園に通わなくっても学園卒業したと認めてもらってる。はぁ~勉強頑張ってきて良かった~と思い受験の申し込みをしたら、
「学園の出席日数が足りませんので、受験資格はありません」
と受付で言われてしまった。
はあ?何それ?書いてなかったじゃん!学園の出席日数?いってないんだから0だよ!
「だったらさぁ!学園に行かずに卒業認定試験合格した者は受験出来ないって事?家庭の事情で学園に通うことも出来無かった人間は上級受けられないの?薬品作る師匠のもとで修行した者も知識はあっても受験出来ないって事だよね?卒業認定受けて合格してる時点で学園で学ぶ知識はあっても受験出来ないってどう言うことなの?結局学園に通えるような金持ちが得するようになってるってことでしょ?」
と文句を言うと
「そう言われましても規定でそうなっておりますので」
の一点張り。
ずいぶん昔の規定らしい。昔は学園に入学せずに薬草薬学管理資格を取るような人間はいなかったらしい。基本的に貴族が薬品を扱う資格を保有していたようだ。卒業認定も成績が悪く合格しなくても賄賂を贈って合格させる者が今もいるらしいし、そんな人間を薬品を扱う仕事に就かせるわけにはいかないので受験条件を、学園での出席日数を3年以上と卒業認定試験合格者にしたらしい。だったら授業中サボって成績悪くて卒業認定も賄賂で合格でも受験できたんだ。なんと納得のいかない規定であろう。
じゃあ、美容液は別に売らなくてもいいっか~なんて諦めて趣味でお祖母様に作ってあげれば良いかなと思っていたら、お祖父様が
「お前が王に献上した美容液な、王妃様が大変お気に召したらしく売って欲しいと催促がきとる」
と言い出した。
「知りませんよ。だって僕出席日数が足りなくて受験出来ないんですから・・」
「じゃあ、今から学園に通えばよかろ?」
「はあ?なんで?もう卒業認定合格してるんですけど?それだけの為に学園通うんですか?嫌ですよ。」
「そうは言っても、王妃様がのぅ~・・・それに美容液販売できるようになったらますますハワード領の懐が暖まるのう。それとも何か?美容液のレシピを誰かに譲るか?」
「・・・いやですけど?誰かにレシピを譲るなんて。」
「じゃあ、学園に通って3年ほど学生生活を満喫してみてはどうじゃ?友達も出来るかもしれんじゃろ」
ぐぅ・・・地味にボッチなのを突いてくる。
まさか通う予定のなかった学園に3年生から編入することになろうとは・・・そして、王妃様に上級の薬草薬学管理資格が受験規定に引っかかったので、受験することが出来ず美容液の販売は無理です。もし王族の方とお会いすることがあれば、その時献上させて頂きます。という手紙を送って学園に編入手続きを終了した後、規定が王城の会議で変更され、卒業認定資格があれば受験可になった。
俺が受付で言った文句を薬品薬学管理部長なる偉い人が聞いていたのと王妃が議会に提案したのが変更されるきっかけであったそうだ。よほど美容液が欲しかったらしい。完全に私利私欲の為の改正だ。
でも今さら遅い。もうお祖父様に入学金も払ってもらったし、入寮の手続きも終えているのだ。
俺は入学金を無駄にしたくない。返してくださいと言えばもしかして返金されるかもとお祖父様に言ったら
「そんな恥ずかしい事ができるか!」
と怒られた。
物事には思い通りにならないこともあると実感した日であった。




