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ノア・ハワード⑥

 「実は魔導灯、街灯の他にもハワード領の発展に貢献した物があります。それは菓子です。ミラー領のリンゴを使ったパイ、そしてタルト類をお茶請けにしたカフェを作りました。大変好評で領内外から多くのお客様に来店していただいております。ハワード領周辺の魔獣の駆除も順調ですし、道路も整備され広く揺れも少なく快適に馬車に乗れるようになっております。そういった点でハワード領を訪れる旅行者や行商人が多くなったのだと思われます。宿もきれいになり宿泊客からも大変好評です。前年度より納めた税金が多くなったのはこれでご納得していただけたでしょうか?」

 怪しい事業を興していたわけでなくずいぶんと観光に力を入れているようだ。

「うむ。よくわかった。ではもう一つ。浮かぶ魔導灯と言うのは何じゃ?」

「夜行性の魔獣の駆除用に作成した魔導灯の事ですね。松明を持つ必要がないよう作成致しました。騎士団に大変好評です。しかし、今のところハワード領のみの使用と思っておりますので、詳しくお伝えすることは控えさせて頂きたいです。」

「気になるが、そうか、それは残念。それはそうと、昨日魔導塔主がそちらの騎士団に捕まってしまって今魔導塔は、バタバタしておる。どうだ不正を行っていた塔主も不在の今魔導塔に就職する気はないか?私も君の作った魔導灯を王城で使いたいのだが・・・」

「僕は別に魔道具をつくる職人になりたいわけではございませんので、お断りします。塔主が変わっても今まで通りの体制でしたら過労死待ったなしですし、罪を償った塔主が復帰し改心してもあのような上司は勘弁してほしいです。昨日魔導塔の方たちは、塔主以外は全員顔色も悪く痩せこけていました。早急に職場改善をすべきですよ。そんな所に僕を誘わないでください。魔導灯が入り用でしたらハワード領に注文頂ければ祖父が窓口となって対応いたしますので、よろしくお願いします。」

 確かに、魔導塔の連中は塔主は丸々と太っていたが、他の連中は痩せていた。きっと部下に仕事をさせて自分だけは働きもせずに甘い汁を吸っていたんだろう。宰相が再び頭を抱えていた。

 「君は私たちが想像もしない物を作り出す実に興味深い人間だ。これから君がどんな物を作り出すのか楽しみでしかないよ。他に何か面白い物作ってないか?」

 「いくら殿下でもそう簡単にお教えできませんよ」

呆れた様子でノア・ハワードは王を見つめる。

 「有れば教えてほしいものよ。そうだな、もし教えてくれたら君の父親、エイダン・ハワードを黙らせて君に口も手も出させないように命令することも出来るよ。私は王様だからね。」

にやりと笑う王に、フッと笑い返すノア・ハワード。

「悪い大人ですね。でも僕には都合が良いので一つだけ教えます。大した物ではございませんが、こちら、女性の肌の張りをよくする美容液なるものでございます。寝る前にほんの数滴手のひらに垂らし、指先でよく混ぜてお顔に塗りひろげますと、翌朝には肌の調子がすこぶる良いようです。」

そう言って胸の内ポケットから小さな茶色の小瓶を取り出した。

「ほんの数滴垂らすとは、どこかで聞いた様な話だな。まさか爆発しないだろうな。」

「ふふふ・・・爆発するのは窃盗をしておいて嘘をつく場合だけです。そんな怖いことしませんよ。私も命はまだ惜しいです。」

二人が冗談を言い合いながら楽しそうに会話していると祖父のルイズ・ハワードが

「殿下よろしいでしょうか?私の妻がノアからもらったそちらの美容液なる物をもらいまして、毎晩使用しておりますが、本当に肌の調子が良いと申しておりました。無くなったらすぐに頼んで作ってもらっております。」

「まだ、薬草薬学管理資格もっておりませんので、あくまで僕の趣味で作っております。王家に献上するほどの物ではございませんが、気休めにご使用頂ければ幸いです。肌に優しい薬草しか入っておりませんが、もしご使用される際は王城の薬学に詳しい方に検査して頂いてください。」

そうして美容液なる物は王の手に渡った。


2日目の謁見が終わり王が去った部屋で残された私は、ノア・ハワードに声をかけた。

「初めまして、私は第一王子アレクサンダー・クリスエバートだ。君の話はヘンリーからよく聞いているよ。」

急に声をかけたので少し驚かせてしまったようだ。

「ご尊顔を拝し、恐悦至極に存じます。日頃は兄が大変お世話になっております。」

そう言った後、値踏みをするように私を見た。

「一つ気になったんだけど、さっきの証拠の絵姿だけど、大広場の絵姿と最後ちょっと視点が違うよね。大広場では塔の外壁から4番がノア君の手に収まる絵姿。さっきのはノア君視点で4番が飛んでくる絵姿になってるね。君の視点の絵姿は、どこに映し玉があるの?」

そう言うと、にっこり笑って

「そこに気づきましたか。第一王子殿下はなかなか見所のあるお人ですね。」

そう言って胸ポケットの万年筆を見せられた。

「これは僕が10歳の誕生日に兄からもらった大切な物です。蓋の所のクリップ部分に映し玉を仕込んでおります。毎日持ち歩く物に仕込んでおくといざという時便利ですよ。」

「こんな小さい物にも仕込めるのか!すごいな。私は王太子と言うこともあって敵がいつどこに居るか常に気を付けなければならない。どうか一つ私に映し玉を譲ってもらえないだろうか」

 王城内は味方だと思っていた人間がスパイであったりすることがある。食事に毒を入れられたことも何度もある。写し玉が有れば少しは役に立つのではないだろうかと考えノア・ハワードに頼んだ。

「確かに王城はどこに敵が居るかわかりませんよね。第一王子殿下が僕から映し玉をもらったと誰にも言わないと約束してくれるならお譲りしてもいいですよ。」

 そして後日2つの写し玉が贈られてきた。一つはクマのぬいぐるみの目に仕込まれており自室に置くようにと。そしてもう一つは自分の置きたいところに目立たないようにカモフラージュして設置しろと注意書きが添えてあった。そして手紙の最後に

 今後も兄をよろしくお願いします。

と書いてあった。

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